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邪武器の娘  作者: ツインシザー
人間領
91/222

学園は二学期


 学園に復帰した。

 学園に変わりはない。

 魔族の血が入った自分を、クラスメイトは忌避しているのではないかと思ったが、国の調査隊に参加し、国王からねぎらいの言葉をもらったことでその心配もなくなっていた。

 むしろ過ごしやすくなっていた。

 シエスからの嫌がらせが減ったこともあるが、やはり国王から直接言葉をたまわったというのが大きかったようだ。

 まだ少年少女でしかない彼らは国王と言葉を交わすどころか、謁見することさえそうそうできない。

 しかしシアは魔族の血を体に持ちながら、それをしてきたのだ。


 ”王に認められた存在”。


 一目おかれることはあっても、恐れられたり嫌悪されることはない。

 クラスでも会話を交わす生徒が増えていた。

 シアは、もう孤独ではない。

 まぁ、もともと孤独という感覚とはあまり縁がなさそうだったけども。


 学園で学び、屋敷でアンナと暮らし、たまに義父の仕事を手伝い、イオ君とダンジョンに潜ったり戦闘訓練をしたりして過ごした。

 そんな秋のある日、シアとイオは風紀委員会の呼び出しで委員会室に訪れた。

 総勢15人の風紀委員が教室にあつまり、思い思いにすごしている。

 しかたないね、椅子の数がたりないからね。全員集まったのは初めてのことだ。

「集まっているな。呼び出してしまってすまない」

 入り口の扉を開けて委員長が紙の束を抱えながら現れた。

 配ってくれ、という頼みで紙束がみんなに配られる。

 ん?、危険人物調査書?

 なんだこれ・・・犯罪者?、これは国家反逆者、こっちは他国の工作員?

 ・・・・・・おいおい


「・・・委員長、これが、何か?、話が我々の管理できる範囲を超えているように思えますが・・・」

「最近、闇取引で”魔道具”が大量に流れていると言う話を聞いたことはあるか?」

 いったいどこから流れてきたのかわからないが、そんな話があるらしい。魔道具自体は規制されるようなものではない。しかしそれが大量に取引される、という事態は人を警戒させるだけの問題になりえる。

 その取引相手が――この書類に書かれた、国に悪意を持つ連中に流れている、ということだろうか。

「そうだ。流れている。これは騎士隊によって確認されたことだ。下級兵士の一部が国庫の魔道具を盗み、大量に市に流したことで発覚した。そのほとんどをとある組織の人間が買い取って行ったらしい」

 本来ならばれないように少しづつ購入するところを、商人ではない一人の人間が大量に購入する。

「組織の名はレメゲウス。純粋種族思想を表出する連中だ。やつらは近いうちに行動を起こすだろう。そしてそれはこの学園も無関係ではない」

 この学園には貴族の御子息,御息女しか通っていない。国に対して自分たちの要望を通すなら、格好の人質になる。

 ・・・それを、風紀委員会で阻止しろと?

「学園に配備される兵士の数は増えるだろう。だが、せいぜいが今の倍程度だ。守らなければならない場所が多すぎる。騎士隊も場所や襲撃の日時を探っているようだがあまりはかどっていないようだからな。なので、あとはこちらで対処していくしかない。そのための書類だ。この似顔絵に描かれている連中が襲撃をする可能性の高い者たちだ。覚えて見つけ次第、連絡するように」

 これ、全部覚えるのか?・・・つらい

「書類はこの場でのみ読んでいいが持ち出しは禁止だ。最低限目だけは通しておけ」

 ・・・なおつらい



『純粋種族思想』

 混血を排除する思想かと思えば違うらしい。

 人間種族のみで世界を支配したい連中の集まりなのだ。

 確かに今は人族の数が多い。少しずつ、少しずつ人の支配領域は広がってきていた。思想の成就が現実味を帯びてくると賛同する人間も増える。特に上流階級に増えてきているらしい。

 ”自分は選ばれた存在である”

 選民思想の最たるものだ。

 だが今回、隣国の崩壊で流民が多く流れてくる結果となった。流民の多くも人族ではあるが、彼らにとっては少しでも人族以外の存在が増えるのが気に入らないらしい。

 流民の受け入れ反対!ということで行動を起こすっぽい。

 迷惑このうえない。


 そして風紀委員の仕事は朝の持ち物検査兼、人物チェックから始まる。

 馬車が校門横の沿道に留まり、生徒が下りてくる。護衛は一人だ。

 シアはそこまでトテトテと走り寄って挨拶をかけつつ、御者と護衛の人相を確認していく。

「ん。」

 リストの人物ではないらしい。

 トテトテ戻ってきて再び馬車が来るのを待つ。

 大仰なことを言っていたがやっていることは今までとあまりかわりはない。


「シア、異常はないですか?」

 同じく沿道を見ていたイオ君が声をかけてくる。

「ない」

「そうですか。これは長くかかるかもしれませんね・・・」

 辺りを巡回している警備兵の数も増えているし、相手も警戒されているのがわかっていると行動を起こさないかもしれない。

 長期化しそうだ。

「そういえば、さっき見ていましたが、大人だけではなく生徒も確認してください」

 生徒か。思想の賛同者がいるかもしれないよな。

「あのリストに何人か、僕らくらいの年齢の子供も載っていました」

 いたっけ?

「ん。いた」

「三色の魔女と呼ばれるハイネ・コルキウスや赤毛の破壊者と呼ばれる盗人が載っていましたね」

 んーんんー・・・

 ちょっとまって。

 くわしく。くわしくお願い。

「赤毛?」

「え?、ええ、数年前のことですし、シアは知らなかったかもしれませんが、この王都で貴族の家宝ばかり狙う赤毛の少年が話題になったんですよ。最近は噂を聞かなくなりましたが、その盗むときの手口がかなりの力技で、壁を破壊して侵入することから”破壊王”とも呼ばれていますね」

 はーん。

 あぁ、そういや書類はモノクロだったから髪の色まではわからなかったのか。

 しかし、赤毛ねぇ・・・少年ねぇ・・・それがヒュリアリアと同一人物であれば、変装している理由がわかった気がするぞ。

 指名手配されてるんじゃねーか

 家宝探しということは聖剣を探してたのか?。

 使命をこなしてるのは偉いと思うが、こちらにも飛び火するようなことは無いようにしてほしい。

 ”目玉の付いた武器で壁を壊していた”なんて目撃情報が出たら最悪だ。

「なので・・・見慣れない生徒がいれば、変装を疑って対応していきましょう」

「・・・わかった。ありがとう」

 イオ君はまた持ち場にもどる。


 しかし、破壊王か・・・かっこいいな

 これも称号になるのかなぁ。オレもこういうのが欲しい

「パパは”無職の王”にしよう」

 そうだな。無色の・・・まって

 もしかして職業の無職?

 ちがうよね

「・・・・・・さぁ?」

 ちょっとシアさんんんっっ


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