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邪武器の娘  作者: ツインシザー
人間領
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叙勲


 3つ目のダンジョンは2つ目ほどの苦労もなく、順調に調査を終えた。

 これで町が3個増えることになる。人の移動はまだ始まったばかりだが、約5万人の流民を住まわせられるとなって、国としても一安心だろう。

 そんなこともあり、シアはまっすぐ学園に帰るのではなく、王城へと叙勲のために連れてこられていた。

 首都グラッテリアなので学園までほんのちょっとの距離なのだが、まだ顔を出せていない。完全に授業に置いて行かれてるな・・・。


 二日待たされた。

 なんでも他にも叙勲する人がいるらしく、一日でまとめてやってしまおうということらしい。

 その間にある程度の褒賞の希望を教えてほしいと言われたので再び称号をお願いしておいた。

「温泉・・・」

 もういっそ温泉は自分たちで作ってしまうか。穴も掘れるしダンジョンを枯渇させる方法もわかったし、なんなら大工に知り合いもいる。

 ダンジョンを改造して温泉を作るなら、よさげなダンジョンの選定はパッチルに聞いてみればいいしな。

 そんなこんなでようやく城の兵士から登城するように声がかけられた。


 グラスマイヤーの屋敷から馬車に乗って城の門を入ると、入り口に見知った調査隊の面々がいた。

「シア君、疲れはとれたかの?、若いからと言って休みをおろそかにしてはいかんぞ」

 パッチルはそんな老い患うことを言いながら腰をさすっている。

 暇を持て余していたこちらとは違い、先生は体力の回復に努めていたらしい。

「シアちゃん、褒賞は何にするか決めた?。私お金って言っちゃったわ」

 メルビレアはいつもの冒険者服ではなく、フォーマルな衣装を着ている。こうして着飾っているといつもより3割増しできれいにみえる。

「・・・・・・」

 だが一番かわいいのはシアだ。今日は緑のグラデーションがきれいなドレスを身に着け髪に濃緑の髪飾りを付けている。

 うむ。かわいい

「・・・ん。」


 みんなでワイワイ話していると後ろからまた馬車がやってきた。少人数乗りの馬車で、どうやらこれが今回いっしょに叙勲する方々らしい。

 馬車の扉が開き、人がおりてくる。

「シシシ、道行き感謝でござる。これであとは報酬さえ良ければ文句なしでござるが」

「報酬は本当にはずんでほしいねぇ・・・」

「何をもらっても労力に見合わんと思うがな」

 シシシ?ちょっとまて、見覚えがあるぞ・・・

「ん?この集団がいっしょに叙勲する方々でござるな・・・、おや、その目・・・おうふ」

 シシシの人がシアを見て空を仰いだ。


「・・・・・・属性鑑定の時の、冒険者」

 ・・・そうだな。あの時雇った冒険者3人組だな。

 魔族領でシアとオレの得意な属性を鑑定しに行く時に、ダンジョンの奥まで護衛してもらった人たちだ。

 それが何でこんなところに。

「なんで君がこんなところにいるでござるか・・・。そ、そうか、自分たちと同じく人間側のスパイだったでござるな!」

 違うが。

「スパイ・・・ふぅん」

「しまったでござるっ、違ったでござるっ」

 勝手に墓穴を掘って青くなったり白くなったりしている。何なんだこの人。しかしスパイか・・・そりゃいるんだろうとは思ってたが、こんなに濃いスパイでいいのかよ・・・

 この冒険者は流石にうかつだが、この場所を考えると責めることができない。人間領域の、しかも選ばれた者しか入ることが許されない場所に今、オレたちはいる。


「・・・マルコ、だまってなよ。それ以上はボクが怒るよ」

 少し甲高い、女の子みたいな声がした。

 馬車から一つの小さい影が下りてくる。4人目、女の子みたいな声だが、男の子だ。

「やぁ、シアさん。お久しぶり。・・・マルコのことはあちらの人たちには内緒にしてくださいね」

 ・・・・・・どういうことだ。どうしてこいつが、スパイといっしょにいるんだ

 シアと同じくらいの年齢の少年は、見覚えがあった。魔族領で、そして魔族領の学校で、一度だけ、話をしたことも覚えている。

 けれどこいつは・・・

「・・・・・・ふぅん。」


 こいつは、ブヒ蔵の配下だった少年だ




 叙勲式のために王城の間へ行ったシアは、しばらくの後、もどってきた。

 終わったか。シア、称号はどうなった?

「もらった。パパ、見に行くよ」

 見に行く?、何がだ

「・・・・・・勇者の、ヒナの誕生を」

 シアはオレを掴み、廊下へと飛び出してゆく。


 向かったのは馬車が止まっていた広場だった。

 人がどんどん集まって来るが、その中央には3人の人間しかいなかった。

 純白の鎧に身を包んだ騎士。金と黄のマントに身を包み、頭上に王冠をかぶった王。

 そしてあの少年。

 王の手には神々しい剣が握られていた。相手を殺す武器というよりも、儀式に使われるような不思議な形状をした剣だ。

「・・・あれが聖剣・ペントレイア」

 シアは王の持つ武器を見ながらつぶやいた。


 騎士と少年は二人とも、同じ兵士用の剣を持ち、かまえる。

「この戦いの勝者にこの聖剣『ペントレイア』の所持を認める。双方、悔いの無いように」

 王の宣言のあと、間を置いてから開始の合図が出される。


 始めに動いたのは少年だった。騎士の周りをまわりながら、少しづつ距離を近づけてゆく。

 騎士は動かなかった。少年が背中側を通るときも、少し不用意気味に近寄ってみせたときも。

 騎士が動いたのは少年が動きを止め、頭上に剣を掲げたときだった。

 まるでそれをやめさせるために飛び出したような、そんな速さで。

 騎士は駆け出した速度をそのまま剣にのせ、振り切る。少年はそれを一歩下がることで除け、振りかぶっていた剣を振り下ろした。

「《重剛剣グラディエート》」

 振り下ろされた剣は騎士のとっさに戻した剣の腹で止められた。しかしそのスキルは振り下ろした剣の周囲に重力の力場を形成した。

 騎士は前のめりになっていた体制のまま、地面に引き倒された。

 騎士に剣が付きつけられる。

 勝負あったか。


 あの騎士、なぜ少年が振りかぶった時に飛び出したんだ?、あそこで前に出なければ違う結果になっていた気がするが

「あのこ、騎士の後ろに王を置いたから。もしものために、出るしかなかった」

 なるほどな。王と騎士を一直線になるようにして、大振りの衝撃波かなんかを出すようなそぶりをして見せたわけか。

 もし衝撃波が飛んでくるようなことがあれば、王が傷ついてしまうかもしれない。騎士としては決して許すことはできないだろう。

 あの少年、いい性格してそうだな・・・。

 王の前にひざをつく少年。王の賛辞のあと、聖剣は少年に手渡された。




 結局、何があったんだ?

 オレはシアに聞いた。あれだけではちょっと何があったかわからなかったからだ。

「んー・・・あのこが魔族領の魔将が隠していた聖剣を取ってきてた」

 魔将・・・そういや夏の初めに魔将のところから秘蔵の宝が盗まれたとかって話を聞いたな。確かブヒ蔵の叙勲式の時だっけ?その時にブヒ蔵が大ケガを負ったとかなんとか。

 そうか、あの少年はずっとブヒ蔵の配下として活動しながら、ブヒ蔵に武勲を上げさせて魔将に近づける日を虎視眈々と狙ってたわけか。

 そんであの3人の冒険者もそのパーティーメンバーだった、と。

 なるほど・・・後衛ばかりで前衛のいないパーティーだと思っていたが、その前衛はブヒ蔵の下で作戦行動中だったというわけだ。

「ん。あのこ、本当は聖剣を献上する気なんてなかった。でも、あの騎士にほとんど無理強いみたいな形で取られたから、献上する褒賞として聖剣をもらいたいって」

 ・・・・・・まー・・・わからんでもない。大事な聖剣が子供の手にあるなんて不安でしかたないんだろう。


 そしてさっきの決闘か。騎士より強いことを示せれば聖剣を持っていてもとやかく言われないだろうしな。

 王としても自分の信頼する騎士が子供に敗れるとも思わないだろうし、納得させるために決闘を許可したんじゃないか。

「ん。」

 けれど少年は勝ってしまった。

 あれは・・・かなり練度を積んでるように見えたな。

 スキルはおそらく剣風を発生させる風突や風刃の別バージョン。その発展スキルだろう。熟練度も高そうだった。

 騎士との間合いのとり方や剣を避けたときの動きから、対人戦闘にも馴れているように見える。そうだな、タウロン家のジョージほどではないが、近い実力を感じた。

 シアだと負けるかな

「そんなことない」

 まだまだ対人経験は足りていないだろ。イオ君のおかげで盾を持った相手でも苦手意識を持たずに戦えるようにはなったけどさ。

「・・・・・・」

 まぁ、実際やってみないとわからないけども。

 シアがあの騎士や少年といい勝負ができるんじゃないか、というだけで十分すごいことだけどな。

 いや、あの少年がおかしいのか。

 多少のからめ手くらいで王を守る騎士を倒すことなんて普通はできやしない。

 いったいどうやってあそこまで強くなったのか・・・。

 すごいな。

「・・・・・・」


 そういや称号はどうなったん?

「・・・<財宝獲得者トレジャーハンター>」

 おー。また熟練度上限が上がったのかな。さらに強くなれるな

「ん。・・・ねぇパパ」

 どうした?

「パパは、聖剣は、どうでもいいんだよね?」

 あぁ。魔王を守る必要はないと思ってる。

 むしろ人と戦争を起こさないでくれたほうがましだと思うな。

「・・・ん。」


 少しずつ、世界が魔王と勇者の二つの流れにからめとられるように進んで行く。

 オレたちはその流れから、いつまで傍観者でいられるのだろうか。

 ずっと傍観者でいられたら――そう願っている


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