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邪武器の娘  作者: ツインシザー
人間領
81/222

学園は夏休み2


「お帰りなさい!。待ちくたびれましたわ」

 タウロン館の正門前でシアが馬車から降りるより早く、我らがお嬢様が出迎えてくれた。

 モルテイシア・タウロン。

 オレンジの髪を縦ロールにした派手なお嬢様でこめかみから太い角が横に生えている。ミノタウロス系の血を引く魔族の少女だった。

 魔族領の学生から人間領のゲリウスのおっさんに鹵獲ろかくされ、人間領の学生になってやっと帰ってこれた。

 前回会ったのは魔族の学校が夏休みだったころか。ほぼ一年ぶりの再会である。


 うむ。流石に魔族の成長速度では胸囲はそれほど育ってはいないな。

 魔族は10歳前後から成長が遅くなり、ゆっくり長い時間をかけて生きてゆくのである。

 シアの誕生日に牛乳を送ってきたのはお嬢様のモノではなかったのか。

 なんかそういう風習でもあるんじゃないかとビクビクしていたのに。

 母乳とは血液である。

 ”配下”とは生死を共にする、血肉を分けた大切な存在であるから、その10歳の誕生日には主の血液ともいえるモノを送るのがしきたりである

 みたいな。


「パパ。エッチなのは、ダメ」

 ちちちちがうぞ。

 魔族なんだからそんな儀式めいたことだってあるんじゃないかと思っただけだしっ

「ふふっ」

「まったく、相変わらずのようですね」

 シアはお嬢様に抱き着き、タダイマ、と言った。

 お嬢様はそんなシアをオレごと抱きしめ、おかえりなさい、と言った。




 お嬢様はアンナに言った。

「シアのメイドということなら私のメイドでもあるということですね!」

 たぶん違う。

 だが幼く純粋なアンナは自分の仕える主のさらに主となれば、これはもうすごい主なのだと結論付けた。

 なので普通に世話をし始めた。

 お嬢様がお茶にしましょとのたまえば、シアがティーセットを用意しようとしてアンナが厨房まで取りに行き、持ってきたティーセットがアンナからシアに渡り、シアがお嬢様にお茶を入れる。

 ・・・正直この子らは賢くないのではないかと思ってしまう光景が展開されていた。

 本人らはとても満足そうではあるが。

 ともあれ、お茶とお菓子と女子三人寄れば、そこに生まれるのはかしましいの文字。

 お茶会が始まってしまった。



「でねでね、ミーシャが言うんです。『あなたの主はきぞくじゃないわね。だってやりをふり回すばかりでししゅうのひとさしさえぬえそうにないもの』って」

「ししゅう・・・」

「こういうのです。人間の貴族は恋人に自分が縫い付けた刺繍入りのハンカチなどを送るらしいわよ」

「ですです。でもわたし、言ってやったんです。シアおじょう様はぼうけんしゃだからけがをしたら自分できずぐちをぬうことだってあるんだから、ぬいものはとくいなんです!って!」

 やめてっ、血なまぐさいアピールはやめてっ、うちの娘が野生児みたいだから!

「そうね。冒険者なのだし、縫えますね?」

「・・・・・・え・・・」

 お嬢様は縫った経験がありそうだった。だけどシアはない。

 大ケガをしたことが無いのもあるが、そもそも回復力が高いのでポーションと包帯でなんとかなってきたのだ。


「やれば、できる」

「・・・そうね。シアは割と器用ですものね」

 メイドとして働いてきたのだ。おかげで器用さは普通に高数値である。

「わたし得意です。今度いっしょにやりませんか」

「・・・・・・ん。」

 アンナが教えてくれるらしい。これは見ものだな。

「あと、ミーシャはシアおじょう様がパーティーにさそわれないのをばかにするんですよっ。『やまざるみたいだからどのだんせいからも相手にされないのよ』って!。なので言ってやったんです。おじょう様にはジェラルダス様っていういい人がいるんだから、そんなしりがるなことはしないのよ、って!」

 シアが珍しく頭痛が痛そうな顔をしている。


 なんだかどんどんイオ君との仲が周知のものになってきてて、おかしいとは思っていたんだ。

 イオ君を恋人に誤解させたのはシエスのみのはずなのに、すでに決定事項のような情報がシアの周りから聞こえてくることがあった。

 不思議に思いながら誤解を放っておいたのだが・・・・・・。

 原因はアンナか。


 イオから届く手紙やダンジョンで拾った宝石、売った金銭のやりとりなど、アンナを介することがあったからなぁ。異性から宝石を送られたらそりゃ誤解もするわな。

「へぇ、シアには恋人がいるのね」

「・・・・・・イオは、友達。それこそ、パーティー仲間」

 パーティー違いだぞ。

 アンナの言うパーティーはダンジョン攻略のパーティーじゃなく、ダンスパーティーの方だ。舞踏会なんかのドレスを着て異性と踊る催しのほうだ。

「舞踏会・・・」

 舞踏会と聞いてシアの表情が暗くなる。

 ダンスにはあまりいい思い出がない。

「シアはパーティーが好きではないのね」

 そういうわけではないが、ダンスの授業でずっと踊れずにいたからなぁ。

「・・・・・・そういうことなら、踊らない祝賀会というものが、あるにはあるわよ」

「祝賀会?」

「呼ばれてはいるのですが、行く気がしなくてどうしようか迷っていたのです。貴族になったのなら、そういったものに参加することもあるでしょうし、行ってみます?」

 なるほど。祝賀会ならダンスは無いしな。パーティー経験を積むのに悪くはない。・・・しかし、なぜ行く気がしないのですかね?

「・・・・・・ブヒ蔵の祝賀会です」

 ・・・・・・

「・・・・・・」

 それは行かなくてもいいやつでは。


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