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邪武器の娘  作者: ツインシザー
人間領
79/222

学園11


 メンバーは4人だった。

 制服に着替えたシエストリーネを先頭に、シエストリーネの取り巻きの魔法が得意な生徒、クラスメイトで剣術が得意な生徒、そしてシアだ。

 シエストリーネはシアの参加を嫌がった。だが、半ば強引についていくことにしたのだ。


 地底湖には学園から近くの水質管理坑という梯子のついた穴から降りられるようだった。

 無人の施設である。入り口に鍵はついていたが、王女の号令の下、剣術生徒の装備した剣が鍵を破壊することになった。

 シエストリーネの光魔術であたりを照らしながら穴を降りていく。

 どこまで続くんだこの穴。もうだいぶ下がったのに底が見えない。

「・・・・・・見えてる」

 お?。

 んー・・・あぁ、そういうことか。

 真っ暗に見える穴の底。けれどちがう、あれは水だ。明かりがなくて真っ黒に見える水。

 オレ達はようやく湖に到着したのだ。



「・・・・・・スライムじゃなくてクラゲじゃないのっ!」

 シエストリーネの雄たけびが洞窟にこだまする。

 洞窟の水面の上、空中に浮かぶように何匹ものクラゲが浮かび、ゆったりと動いていた。

 ある意味幻想的な気がしなくもない。

 ――槍術《円舞》そして《円舞陣》。

 スキルが増えたことでとぎれることなく槍を振り回せるようになった。そのスキルでシアは近づいてくるクラゲと子クラゲを切り刻んでいく。


 子クラゲ――まるでスライムのような姿で素早く動くやつら。プールの水から現れたこいつらは厄介ではあるが脅威度は低い。

 動きが速いため攻撃が当てにくいが、こっちにひっついてきたりネバネバした液をくっつけてくるだけで怖くはない。


 だが、浮遊クラゲはわりと厄介だった。

 足に触れると麻痺をおこす。足を切ってもしばらくするとまた伸びてくる。ゆっくりとだが、敵を感知できるのか、どんどん集まってくる。

 そのうえ空中にいるために、シエストリーネの《雷光》でまとめて感電させることができないのだ。


「う~~~っ、めんどくさいですわっめんどくさいですわっ」

 そう言いながら一体づつ、光矢で射貫いてゆく。シアともう一人の魔法生徒もちまちま魔法を使って一体づつクラゲを減らしていく。

 確かにめんどくさいが、これなら時間さえかければなんとかなるだろう。

 クラゲの足はシアの円舞で何とかなっている。子クラゲは処理しきれておらず邪魔くさいが、ほっといてもなんとかなる。

 あとは頑張るだけ――


「きゃあぁっ」

 子クラゲを処理していた剣術生徒が悲鳴を上げる。

 彼女の足に何か巻き付いたと思ったら、上に持ち上げられた。


 何だあれ・・・触手?

 まるで触手のような長い手が、生徒を持ち上げ――そして投げてきた。

「っ!」

 とっさにシアが前に出て受ける。シアは彼女ごと地面を転がり、体に小さいキズを作りながらも、大したケガ無く生徒を受け止められた。


「いやぁぁぁぁあっ!」

 シエストリーネの絶叫が聞こえる。光属性の魔術が連続使用されるが、彼女に向かって伸びる触手にはあまり効果がみられず、段々と彼女に近づいていく。

「シエスっ、こっち!」

 シアが呼ぶと彼女は一瞬躊躇した後、こちらに駆け寄ってくる。

「《虚無弾アーマーン》!」

 《虚無弾》は弾に触れた触手をゴリゴリと喰らい、大穴を開けた。

 パタリと地面に落ちる触手だが、他のクラゲと同じように、ゆっくりとその穴を縮めてゆく。

 回復してやがる。やっかいだな。


 受け止めた生徒は麻痺状態なのか、まだ体を起こさない。シアは彼女たちを守りながら、触手に《旋風刃》を放つ。

 風刃の発展スキル。ほとんど風刃と同じだが、その威力は風刃より高い。穴が回復しきっていなかった触手はその攻撃で二つに切断された。


 ・・・・・・シア、これは無理だ。

「・・・・・・ん。」

 触手の本体さえまだ姿を見せない。きっとクラゲの親分だろうと思うが、そうなるとあの触手があと何本あるか。

 触手から味方を守りつつ戦う。無理。両方をこなしながら戦うのは不可能である。


「シエス、逃げるよ」

「!、あ、あなた、私に逃げろと・・・!」

 シエストリーネは良くやっていた。けれども戦い慣れていない感じがあった。

 今までは誰かが彼女を守り、安全な戦いをさせてきたのだろう。魔力もだいぶ使っている。魔力量から引き際を考えるような経験も足りなそうに見える。

 この状態で魔力切れを起こされたら、全滅を覚悟しなければいけなくなる。

 なので逃げる。


「魔力の残っているうちに、仲間を逃がして!」

 シアは少し強い口調で彼女に言うとともに、いまだ起き上がれない剣術生徒を彼女にあずける。

「早く!」

「私も援護します!」

 魔法生徒もシアの後ろについてシエストリーネたちを先に行かせるよう、援護してくれる。

「あっ、あなたはっ」

「平気。奥の手も残ってる」

「・・・・・・なら、私についてきなさいよっ!」

 そう言って先に歩き出す。

「・・・・・・あなたも。」

「はいっ」

 魔法生徒がシエストリーネの後に続く。ゆっくりと後退を始めるシアへ、いく匹ものクラゲが近づいてくる。そして下から、ゆっくり地面を這うように、4本の触手が寄ってくる。

 4本か。

 ・・・思ったより少ないな

「ん。」

 ちらりと後ろを見て3人が梯子を上り始めたことを確認する。

 ――30秒。

    絶対的な、”竜”の力。


「《竜力ドラゴニカ》・・・!」


 単純な火力の増加ではない。

 武器を振る筋力が上がれば、叩きつける力が増え、さらにそのまま武器を振り切る力にもなる。


 4本の触手。

 シアの攻撃は《風刃》を使うまでもなく、触手を引きちぎる。

 《旋風刃》の一振りは辺りのクラゲと子クラゲを吹き飛ばす。前に出る。

 4本では足りないとわかったのか、残りすべての触手が湖から持ち上がる。

 いい景色だな。

 やっと本体が頭を現しはじめた。


 ――シア、あと10秒!

「・・・・・・《三段突きトリプルラスト》!」

 3本の触手をちぎる。あと2本。

「パパッ」

 《三段突き》!

 残った触手を蹴散らし、本体へのみちが開く。

 合わせるっ。

「んっ。」


 ――風突!」




 上にあがるとそこには装備の整った男子生徒たちと、兵士たちがいた。

 シエストリーネたちを心配して駆けつけてきたのだろう。

 この人数なら、あとはまかせてもクラゲを倒し切ってくれるだろう。


 しかし、つかれたな。

「・・・・・・ん。」

 シアの顔は満足そうだった。

 楽しそうで何よりだ。・・・ボスは倒せなかったけれども。

 一撃を入れることはできたが、いったいどれだけのダメージを与えられたか・・・。自動回復持ちの相手をするのに、クールタイムのあるスキルではどうしても戦闘が長引いてしまう。

 制限時間のある《竜力》とも相性悪いしなぁ・・・。制限時間もクールタイムもどちらも30秒。竜力中に風突は一回しか使えない。

 畳みかけるには弱いんだよな。

 足りていると思っていたスキルの手数が足りなかった感じかね。まぁ、あれと1対1で戦おうというのが間違いなのだが。今回のことはいい経験になった。


「あ、あなた!待ちなさい!」

 学園に帰ろうと歩き出したシアを呼び止める声がする。

「・・・何?」

「私、いつからあなたに略称で呼んでいいなんて言ったかしらっ」

 そういや”シエス”って呼んでたな。あの場面で長ったらしい名前を全部呼んでいられなかったせいなんだけども。

「シエストーネ?」

「しえすとりーねよっ!。言っておくことがあるわ。私を、助けたなんて思わないでちょうだい」

 ・・・・・・ツンが長いなぁ。まぁ、この王女はこういうやつだった。

 それに、どのみち王女のみであれば護衛がついていた。

 あんな状況でも後ろで彼女のピンチを救おうと、出番をうかがっていた護衛がみうけられたのだ。

 だから歩けなくなっていた生徒を預けた。シエストリーネのそばが一番安全だったから。

 なので、言われなくても彼女を助けたとは思っていない。

 ただし、それは彼女の護衛に気が付いていた、オレとシアにとっての話である。


「・・・それから、あなたは人の名前が本当に覚えられないようだからこれも言っておくわ。二度と、私を略称以外で呼ばないでちょうだい」

「・・・・・・ん。」

「わかったわね」

 言いたいことだけを言って彼女は男子生徒の方へ歩いて行った。

 クラゲのことを詳しく話しにいったのだろう。本来ならシアもやるべきことなのだが、彼女に任せてしまってもよさそうだった。

 デレというやつかな。

「さぁ?」

 じゃぁ、シエスの申し出に甘えて、一足先に学園に帰るとするか。

「ん。」


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