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邪武器の娘  作者: ツインシザー
人間領
77/222

学園9


 ダンジョン探索は週に一回のペースで行われた。

 休みの日、もしくは都合の良い日に、4~6時間程度。

 拾ってきた宝石はセシル君の所で鑑定・引き取ってもらう。

 鑑定料金より買取金額がかなり高いのでどんどんお金が増える。

 探索の合間にシアはイオ君からスキルを見せてもらい、一つのスキルを覚えることができた。


 斬術《斬月》。


 早い斬撃のスキルで、刃の軌道のあとに細い円形の剣閃が残ることから”月”の字が入っているスキルだ。


 かっこいい。すごくかっこいい。

 このスキルを初めて見たとき、その美しさに虜になったと言ってもいいくらい、オレはこのスキルが好きだった。

 ただこのスキル、”静”から”動”への緩急の強い攻撃なのだが・・・シアは戦闘中、ずっと”動”の動きをする戦闘スタイルなのだ。


 おやー?

 斬月を撃つタイミングが見つからないぞー?

 ・・・・・・。

 取ってから気が付くことってあるよね!

「・・・・・・」

 スイマセン、反省シテイマス

「はぁ・・・いいけど」

 許された。

 まぁ、どこかで使う場面もあるかもしれない。夜に使うと特にきれいなので、気分転換がてらたまに熟練度を上げてくれるらしい。

 ありがたい。



 イオ君とはたまに、戦闘術の手合わせをする仲になった。

 風紀委員の朝や、夕方の暇な時間。武器を使って戦うのだ。

 これはイオから言い出したことだが、シアの対人戦の経験を積むのに役立っていた。

 イオ君、シアとシエストリーネの戦いを見て、思う所があったようだ。

 風紀委員として、僕はあれくらいの相手を制圧できなくてはいけない。

 そんなことを言っていた。

 まじめなことだ。



 そんなある日、シアとイオ君がセシル君に呼び出された。

 学園ではなく店に来てほしいと言われたので、二人して仲良く商店が並ぶ通りを歩いていく。

「用は何でしょうね?」

「こないだの、石かな」

 2週間前にみつけた宝石のことだ。

 セシル君が鑑定結果を話すのをしぶっていたのだ。これは自分の判断では扱いかねる、ということだったが。今日やっとその結果を教えてくれるのかもしれない。

 なんだろうなー。すっごくいい効果の石ならほしいけども。


 今まで見つけた特殊輝石は二つに加工してもらい、シアとイオ君の二人でわけてしまった。

 半分にすると効果のほどが3割くらい減ってしまう。もったいないが、今の所それでいいかな、という程度の効果の物しか拾えていなかった。

 今までのは《衝撃耐性》《火耐性》《筋力+》《罠回避》の4種類。まとめて全部、胸当ての内側に縫い付けてある。

 二つに加工するのがもったいないような石が拾えた場合は要相談ということになっていた。

 イオ君は斬撃耐性・刺突耐性。シアならあるかわからないが、クールタイム減少や攻撃速度増加なんかが欲しい。

 イオ君はパーティー全体に効果のある固有スキルを持っている。なので生存力を高めつつ壁役をめざしていくようだ。

 ・・・そう考えると拾った4種類の輝石が全部イオ君に必要な性能をしているように見える。

 《小奇跡》・・・すごい効果だ。

 まぁ、たまたまかもしれないけどね。


 いくつかの屋台をのぞきつつ、宝石店に到着した。

「いらっしゃいませ。シオ様、イオ様、お待ちしていました」

 セシル君は挨拶もそこそこに、二人を店の奥へとうながす。

 こっちは来たことがない場所だ。個室があるようなので大口の取引や貴族相手の商売の時に使う部屋らしい。


 室内に入るとすでに人が3人、柔らかそうな椅子に座っていた。

「おぉ、お待ちしておりました。私はクレイル・ロークレイン。セシルの父でございます。こちらはグラハム・グラニエル侯爵。元老院議官のおひとりであらせられる」

 クレイルは眼鏡をかけたかっちりした男性だ。顔が四角い感じの。グラハムは初老の男性で姿勢がいい。侯爵、ということなのでこの国の王族を除いた最高階級の一人らしい。元老院は前に授業で習った気がする。王に助言をしたり法律の制定に知恵を出したりする役割の人間だったかな。別の議員というのもいるのでよくわからないが。

 紹介されない人物はどちらかの護衛らしい。


 二人とイオ君の挨拶が終わり、では時間もないので本題に、ということになった。

「お二人が発掘されたというのはこちらの宝石で間違いありませんな?」

 そう言ってクレイルさんは宝石箱に一つだけ保管された宝石を二人に見せてきた。

 そうだ。この石だ。2週間前に見つけて鑑定がまだだった石。

「ん。」

「・・・そうですね」

 二人が答える。クレイルさんは一つうなづき、セシルに説明するよう、促した。


「こちらの石はガーネット。その中でも赤色の濃い、パイロープと呼ばれるものです。ガーネットは意思や精神を強くしてくれる石と言われています。付与されている効果ですが・・・」

 セシル君はそこでいったん区切り、再び話し出す。


「効果は《魔素治力》。魔素の自然回復力が上昇する効果があります」


 わぉ。

 MP自動回復か。シアの《龍胆》の効果に加算されるようならぜひともほしい。穴掘り効率があがるな。

「効果のほどは、おそらく30%ほどと思われます」

 効果量も調べてくれていたらしい。ありがたい。

 本当にありがたいのだが。

 ・・・・・・隣の上流貴族二人の存在が不穏でしかない。


 セシル君の説明が終わると、それを引き継ぐようにクレイルさんがずいっと前に出てきた。

「これほどの輝石はこの国ではほとんど存在しない、実に希少な物です。すばらしい輝石だ。けれど、これをあなた方にお渡しすることとが、できないのです」

 うわー・・・

 そうなりますか。

 そっかー

 えぇー・・・

「・・・理由を聞いてもよろしいでしょうか?」

 イオ君が尋ねた。

「もちろんです。この国のダンジョンで採れた物は、基本的には好きなようにしていいという決まりですが、ごく一部の物は国に帰属される決まりなのです。その一つがこれです」

 視線が石に向けられる。


「魔素の自然回復力上昇を持った魔道具類です。これは国家の軍事力に直結する物となります。逆にこれを冒険者に渡し他国に持ち出されると、他国の強化につながる恐れがあります。ですので、これは我が国に収めていただくことになっているのです」

 あー、なるほど。

 魔法は強い。ゆえに、その回転率を上げることが国の強化につながる。

 他国や他種族との戦争を見据えた装備の収集。この国のダンジョンなんだから、そういうこともあるよ、ということなのか。

 説明されると理にかなっているな。

 ぐぬぬ

 30%かー、欲しいけどあきらめるっきゃないかー


「・・・もちろん、無償で治めていただこうというわけではございません。一介の冒険者であれば金銭で納得いただくこともありますが、お二方は貴族であらせられる。ですので、こちらもできるかぎりの誠意をもって納得いただきたいと思っています」

 ふむ。

「誠意、と言われると、どのようなことでしょうか?」

「それがわしじゃな。等価の物を与えることはできぬが、わしの権限でできることなら何でも叶えてやれるだろう。一人一つずつ、願いを言ってみなさい」

 今までほとんどしゃべらなかったグラニエル侯爵が、かなえられる願いなら何でも、と言った。

 何でも

 いい響きだ。

 でも欲しい物ってなにがある?

 ちょっと相談タイムが欲しい

「相談、する。」

「構わぬが、今日中に願いを言うならわしはあと少ししかここにいられぬよ。後日でもかまわないが、せっかくの輝石。憂いなく国王に献上したいので早い方がうれしいのだがね」

 それはあんたの都合だろう・・・微妙にソワソワうずうずし始めてるのはガマンできない子供のようだ。

 しゃんとした人かと思ったら違うっぽい。

 まぁまって、考えよう。


 武器の魔道具はいらない。シアにはオレがいるからね。防具の魔道具。悪くない選択だが金銭でもそれなりの物が手に入る。シアには必要性が薄い。

 とりあえずクールタイム減少・攻撃速度増加の輝石が存在するのか、あればもらえるのか聞くか。

 あとは何かあったか?

「温泉」

 ・・・・・・いや、頼むほどのものじゃないだろ。

 あとは称号か?。シアは子爵の称号を得て熟練度上限が上がった。まだいくつになったかわからないが、得意属性が120まで上がっていれば得意じゃない属性の上限は60。上級魔術まで使えることになる。

 他には・・・ないか。

「聖剣」

 ないな。

 聖剣の情報も欲しいと言えばほしいが、ぶっちゃけ使命はどうでもいいと思っている。

 オレとシアにかかわりの無いところでやってくれって感じだ。

 ということで、輝石・称号・温泉の順でいいか。

「ん。」


 シアと相談している間にイオ君は願いを伝えたようだ。斬撃耐性・刺突耐性の輝石。実に堅実な選択である。シアといっしょにもぐっていれば、いつか手に入る可能性はあるだろうが、確実性を選んだようだ。

「うむ。うけたまわった。可能であれば両方の性能の良い物を与えよう。・・・そちらの娘は何か決まったのか?」

「ん。・・・クールタイム減少の輝石は、ある?」

「くーる、たいむ?」

 準備時間

「準備時間減少。」

「ふうむ、準備時間か・・・確か無属性の魔術に、そのようなものがあったか?」

「無属性の上級魔術に」

「・・・・・・わしの知識も確実ではないが、輝石で魔術の効果が付くものは中級までの魔術の効果しか付かなかったはずだ。無いと思うが、探させてみようか?」

 いや、そういうことなら別のにしよう。

「なら、攻撃速度増加の、輝石は?」

「あいまいな表現じゃな。攻撃行為全般が上がる物を、ということであれば、無いな。特定の武具の精度を上げる物は存在する。だがほとんど効果を感じない程度の物ばかりだと聞くぞ」

 《操槍》と同じく常時効果で低精度を補佐するものか。思ったのとは違うなぁ・・・。あるならあったでうれしいが、ここでもらう物でも無いよな。


「・・・・・・なら、熟練度上限が上がる、称号が欲しい」

「・・・ほぅ?」

 シアが言うと、グラニエル侯爵とクレイルさんが視線を交わした。


「・・・・・・あるな。ある」

「そうですね、ありますね」

 何だろう、二人、非常に納得した顔をしている。


「<穴掘り名人>じゃな」

「<穴掘り名人>」

「そうか、<穴掘り名人>がありましたね」


 イオ君も納得の称号らしい。

 まって、

 ださい

 かっこよくない。

 採掘師とかじゃないのかよ!

「ん。それでいい」

 にゃー!いいのかー!?

「20年ぶりにこの街に<穴掘り名人>が現れることになるんじゃな」

「おめでとうございます」

「うむ・・・。わしの死ぬ前にこんな日が来ようとは・・・」

 おいじいさん、涙ぐむな。

 なんだか感慨深いみたいだが、さっぱりわからない。

 まぁ、上限上がるなら、いいか・・・・・・



 こうしてシアは<穴掘り名人>になった。

 効果は魔族なら練度上限+10、穴掘り速度上昇、採掘時のドロップ率上昇だそうな。

 すごいねー

 穴掘り系最強の称号なのだ。

 もうやだこのファンタジー。


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