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邪武器の娘  作者: ツインシザー
人間領
74/222

学園6 守護輝石


 休日。

 シアは午前中、アンナと買い物に街の商店街に来ていた。

 流石に休みの日まではイオ君はついてこない。

 今日の目的は”騎士科”の授業で装着する、守護魔道具を選ぶことである。


 学科としての騎士科は2学年からあるが、今は授業としてのものだ。これは選択授業で、他には”魔術科””魔道具科””生活科”がある。生活科とは、すなわち庶民の生活を知ることらしい。

 庶民を多く雇うような事業を展開している貴族向けの授業だそうだ。


 さて、騎士科で使う守護魔道具、と言っても必須のアイテムではない。それは貴族におけるお約束。人に見せて評価されるための、ただの装飾品としての物品だった。

 自身を守護するためならきれいなアクセサリをまとっていてもいいでしょう?

 という理論で華美な装飾品を付けることを許可させたのが、この独自ルールの始まりなのだそうだ。

 シアは別になくてもいいと言っていた。だが、オレが”守護魔道具”というものに興味があったのでゲリウスにわがまま言って買ってもらうことにしたのだ。


 食べ物屋台があるごとに足止めをくらい、おなかがいっぱいになったころ、目的の店まで到着した。

「わぁ~、たかそうなお店ですねっ」

 そうね。

 すっごく高級品を扱う風格の店だった。

 事実貴族御用達のお店らしく、店に入ると貴族の使いらしい使用人が店員とあれこれ話しているのが聞こえてきた。

「いらっしゃいませ・・・、いらっしゃいませグラスマイヤー様。本日はどのような品をお探しでしょうか?」

「?」


 店員として声をかけてきたのは若い子だった。

 というか、見覚えのある少年だった。

 ダンスの授業でシアを踊りに誘ったエレガントな美少年。

「見覚えが、ある」

「覚えていただけてうれしいです。僕はセシル・ロークレインと言います。父の持つこの店を時々手伝っているんですよ」


 詳しく聞くとセシルはスキル《鑑定眼》を持っているらしい。ただ、セシルの鑑定眼は不完全な物らしく、その能力は鉱石にしか発揮されないらしい。

 シアの《探索眼》もスキルとして発現する前は換金アイテムにしか効果がなかった。なのでセシルの《探索眼》も熟練度を上げないと本来の能力が発揮されないのかもしれない。

 セシルの父であるロークレイン伯爵は、息子のスキルを伸ばすために宝石店を購入し、店で手伝いをさせながらスキルを鍛えられるようにしたらしい。

 なんともスケールの大きな話だ・・・。


「守護輝石をお求めですね。ではこちらのエリアになります」

 連れてこられたところにはいくつもの宝石が並べられていた。

 ・・・普通の宝石と同じに見える。

「何が、違うの?」

「そうですね・・・ご説明しましょうか?」

「ん。」

 セシル君は嫌な顔をせず、何も知らないシアに一つ一つ説明をしてくれた。


 まず、宝石は魔力の効果を増幅させたり、効果を維持させたりすることができる。これは宝石だけにかかわらず、鉱石全般のことだ。魔力の伝導率がいいみたいなことだ。

 向こうの世界の物語りでもアダマンタイトやオリハルコンなんて金属がそんな感じの金属だった。

 宝石には魔力との相性がある。エメラルドには風魔術。アメジストには水魔術など、込められた魔術の効果がより強く発揮される組み合わせがあるらしい。

 風魔術なら《速力》などの効果がつけられるのかというと、それも違うらしい。魔術を付与するのは”魔”属性魔術師の仕事だ。

 ”魔”属性は付与の属性。他の属性より深く魔力を理解し、魔道具を作り出す属性。

 シアの使う喪失の属性、”無”属性とは対極に位置する属性である。

 なので守護魔道具の効果を《失力》で消せるのではないか、と聞いてみるが、そう簡単なものではないらしい。魔力をとどめやすいということは、失われにくいことである。相当な練度の《失力》ではないと消せないと言われた。


 さて、守護魔道具――守護輝石と言われる石ではあるが、本来の物は中に魔術の通りを良くするための魔法陣を閉じ込めるらしい。どうやって閉じ込めるのかと思ったが、魔属性魔術にそんな魔術があるそうだ。

 ここで売っているものは見た目を良くするために魔法陣を閉じ込めていない。頼まれればできるが、別料金なのだ。ちなみに魔法陣があるほうが当然効果が高い。

 一通り聞いて、次に効果の話をされた。

 冷気を閉じ込めた物、暖気を閉じ込めた物、病を遠ざける物、怪我の治りを良くする物、持病を軽くするための物、視力を良くする物など、その効果はいろいろある。

 ちなみにオススメは冷気、暖気の物らしい。持っていないなら一揃え購入しておくと夏場、冬場が楽になるそうだ。


 とりあえず勧められるままその二種を購入する。このあと彫金師に金具部分のデザインを頼むのだが、シアは良くわからないらしく店のおまかせで頼んでしまった。

 さて、購入が決まり、店側であれこれスケジュールの調整や証文の用意をされている間に別の棚を見て回る。

 ・・・・・・桁が一つ二つ違う宝石が売られている棚があった。


「それは特殊輝石です。希少性のある特殊なスキルや魔法が最初から閉じ込められている宝石ですね」

 セシル君が教えてくれた。

 魔術が、ではなく、魔法が、と言った。

 この店で使われる魔術、とは大体が”魔”属性魔術のことである。

 ”魔法”は一般的にその属性全体をさす。水魔術は一個の水属性魔術を指すが、水魔法は水属性魔術すべてを指す。

 ということは、・・・どういうことだ?

「”魔”属性では付与できない物になります。さっき言っていた《速力》の魔術が入った物もありますよ」

 これです、と言って教えられたものは、買った輝石の10倍の値段がした。

 うん。

 スゲー


 《速力》の効果のある魔道具の剣と何が違うのか。それは効果時間である。

 いちいち魔力を通して発動させなければならない魔道具剣に対して、特殊輝石はなにもせずとも常に効果がかかっている。装着した者はずっとその恩恵を受けられるのである。

 守護魔道具も効果時間はかなり長い。が、やはり魔力を通す工程が必要になる。


 永続っていいよね!

 ほしいなぁ・・・でも高いなぁ。

 あきらめるか、と店を出ようとしたとき、いっしょに来ていたアンナが熱心に見ていた棚に気が付いた。

 それはほとんど加工されてない、小さな原石が置かれた棚だった。

「これは?」

 セシル君に聞く。

「それは不純物がおおく、宝石としてあまり価値が高くない物が置かれています。けれど効果自体は少し低くなる程度ですので、そちらを選んで加工してもらう人もおりますよ」


 はーん。おもしろいな。

 ちょっとシア、《探索眼》でいいものを見繕ってくれ。

「んー・・・」

 シアはいくつかの石を選んで手に取る。

「へぇー・・・」

 セシル君から店員ではない、素の声色が聞こえた。

 3つ。効果はどれも特殊輝石で《浮遊》《耐水》《消臭》。

 浮遊ってあれだよね。オレの兄弟が最初っから持っているものだよね!

 空も飛べるはず!と思ったが、体重がちょっとだけ軽くなる程度らしい。

 ・・・・・・どれもあまり欲しい効果ではなかった。水耐性は持っているマントにあるからなぁ。あれも雨水をはじく程度の効果しかなかったが、アクセサリーと二重にすればもうちょっと強い効果になるのだろうか。


 しかたないのでアンナに欲しい石を買ってあげようか?と尋ねるが、全力で断られてしまった。

 置かれているものは原石でもそれなりの値段である。そういったものを買ってもらうのはメイドとしてあってはいけないことらしい。

 そう言うのなら仕方ない。・・・アンナの誕生日まで我慢するとしよう。


 しかし、こういうのってどこで見つけるのだろうか。

 どっかの山を掘って見つけるのだろうか。

「いいえ、ダンジョンでみつかります。このあたりのダンジョンには宝石がよく取れるものがありまして、ダンジョンの壁を掘って石を集めてくるのです」

 ダンジョンはなまもの。掘ってもしばらくすると掘ったところが埋まっているのだそうだ。崩落の危険がないってすばらしいね!

 そういった石はどこで買い取ってもらうのだろうか。

「《鑑定眼》を持つ店や冒険者施設なら可能ですよ。ここであれば僕が店にいる日なら可能ですね」

 なるほどー

 へー

 うん。おもしろそうだ。


「・・・セシル」

「どうしました?」

 シアがすまなそうな顔をしながらセシルに言った。

「先に謝っておく。全部パパが悪い」

「はい?。そうですか。・・・グラスマイヤー様ですか?」

「違う。けど、おせわになります」

 めずらしく敬語だった。

 えーへーへー


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