学園4
暴露しすぎだろう。
ゲリウスのおっさんががんばってばれないように整えたあれやこれやが全部吹っ飛んでしまった。
でも・・・確かに。
シアの状況を隠したまま参加したのでは、ばれたときに普通に殺されかねなかった。スパイ処すべき!ってね。
あの判断は最適解だったと言える。
流石オレのシアだね☆
うむ。
三日後、なぜか委員会への参加が認められた。
逆に身内に入れて監視しようということか。
シアのことは委員会内部でも極秘の扱いになっていた。
かわりに誓わされたこともある。
知った秘密を絶対に漏らさないことである。
漏らした場合、その大小にかかわらず、罰を与えると言われた。
ぶっちゃけ殺すよ?ということを匂わされた。副委員長に。ガクブル
シアは”威圧無効”を持っている。
副委員長の殺気などものともせず、満足そうに誓いの書類に記名した。
こうしてシアは風紀委員になった。
風紀委員の朝は早い。
登校してくる生徒の異物持ち込みをチェックするのである。
ただし、カバンの中に入っていればOK。外に出ているモノだけを調べるのだ。
相手は貴族だからね。カバンから何が出てくるかわからないからね。
ある貴族は言いました。
「これはわたくしのペットのアビゴベルベラちゃんです。ベラドンナの変異種なのでただの園芸植物ですわよ」
没収した。
ちなみに餌はネズミやヒヨコらしい。食堂であまっていたパンの耳を上げると満足そうにかじっていた。
別の貴族は言いました。
「貴族たるもの、イスにこだわりを持つのは当然である。このイスは我が子々孫々にいたるまで、一族の繁栄を約束してくれる魔道具である」
没収した。
イスの座面の真ん中に円形の窪みのあるイスだった。貴族だって痔になるよね。かわいそうなので返してあげた。
ある貴族は言いました。
「ぴぴえぽぷれぷぱぷぴおぷっぷ」
殴り倒しておいた。
どうやら偽物が紛れ込んでいたらしく生徒に警戒するように通達がされた。貴族というのも楽ではないらしい。ちなみに本物は魔物に消化されるまえに助け出されたらしい。
「ふう」
一週間が終わった。
ほとんど毎日、誰かしらがおかしな物品を持ち込もうとしてくる。
見栄を張ったり、自慢したり、見せびらかしたりが大好きな連中なのだからしかたない。
「・・・お疲れさまでした」
そう言ってイオ君がお茶をシアの前に置いてくれる。
ここは風紀委員会本部。
教室の半分ほどの広さの部屋に、机とイスが並べられ、壁にはよくわからない標語が貼られている。
今は一年生しかいない。一年に今週の作業報告書を書かせて、先輩方は来週の身体測定の準備に行っている。
他の一年はシアに近寄ってこないが、イオ君はちょくちょくシアに話しかけてくるようになった。
というか、
イオ君がシアの監視をさせられていた。
同じクラスだし、しかたないね。
ちょくちょく後をついてきたり、忘れ物をすると貸してくれたりするのだ。
ただ、そうなると怒るのが我がクラスの女王、第二王女シエストリーネ・グラッテンだ。
シエストリーネはシアが嫌いなのでクラスの連中に示し合わせてシアを孤立させようと頑張っていた。
それをイオ君がやぶってしまったのである。
イオ君はこの国の貴族というわけではない。”神龍神殿”という所の御子の系譜を持っているらしい。名前に付けられている”S”というのが、それを表す記号なのだとか。
”S”は魔族の”M”と違い、人気がある。イオ君のシュッとした容姿もあり、神秘的な少年として生徒に大人気だった。
そのイオ君がシアに話しかけている。
これは、話しかけてもいい流れなのでは?と考える生徒がちらほら出てきてしまった。
シエストリーネに見つからないように、もしくはシエストリーネのいない間に、話しかけてくる生徒が増えてきた。
もちろん気が付かないシエストリーネではない。
ある日の放課後、とうとうイオ君はシエストリーネに呼び出されてしまった。
「なのに何であなたまでいるのですかっ!」
「ん?」
学園にいくつかある庭園の一角である。
呼び出されたイオ、呼び出したシエストリーネ、そしてイオのおまけのシアがいた。
「あーなーたーはぁ、呼んでいませんのよ!今すぐお帰り下さいましっ」
「・・・どうする?」
「いえ、いてください」
そう答えるのはイオ君である。
これはしかたのないことだった。
イオ君はシアの監視を風紀委員長から命じられている。最低限居場所の把握くらいはしていないといけない。
けれどシエストリーネに呼び出されてしまっては監視ができない。ならばどうするか?。
呼び出しにシア同伴でくればいい。
・・・・・・正直、イオ君はシエストリーネが嫌いなのではないかと勘繰ってしまう。
もっと他にさぁ、人に頼むとかさぁ、あっただろうに・・・
真面目なだけなのかもしれないが。
そんなわけで3者があつまり、シエストリーネが頭から湯気を出しているのだ。
「かーえーりーなーさぁい!」
「ん。わかった。イオ、行こう」
「違いますわっ、あなたっだけがっ帰りなさいっ」
「どう?」
「いえ・・・困ります」
「ほら。じゃあしかたない、シエストラーネが帰ればいい」
「りいいいぃぃぃーねぇぇっ!」
第二王女様、顔真っ赤である。
「はぁ、はぁ、そもそも、何であなたが、ここにいるんですのっ!?」
「だってイオが・・・」
キッとイオの方にシエストリーネの視線が向けられる。
「・・・僕に付き合ってもらってるんだ」
「付き合ってって、何に!」
「それは・・・言えないけれど」
風紀委員会でも一部しか知らない極秘の秘密である。
王女であっても教えることはできない。
「いーいーなーさーいっ!」
「察してくれ・・・」
流石にこの状況を察しろというのは無理がある。だが、何かしらの理由があっていっしょにいるのだ、ということくらいはわかるだろう。
「何よっ」
プリプリ怒りながら、シエストリーネはその理由を考え始めた。
「教えればいい。いっしょにいるように言われてる」
イオ君がな。イオ君がお前の行動についていくようにな。
「ええと?」
「・・・私たちの大事な管理者が、イオにわたしといっしょにいなさいと言った」
シアは言葉を選んでそう答えた。
”管理者”としか言わないのであれば、風紀委員会のことを知らないたいていの人間は、”親”と勘違いする。二人の親が、各々にいっしょにいるように言った。
これは、”許嫁”を交わした仲なのではないだろうか――と。
「・・・・・・じ、ジェラルダス様?」
「間違っていません」
「そう。だから、むしろ邪魔なのはシエスタリーネ。」
うわぁ・・・。
シエストリーネは目玉を飛び出るくらい大きく見開いて、ひざから崩れ落ちた。
「なっ、はっ、・・・ええぇ・・・じぇ、じぇらるだす様・・・」
青ざめながら涙目になっていた。
その様子に緊急事態と思ったのか、わらわらと物陰からシエストリーネの護衛が現れ、姫を抱えてどこかに連れて行ってしまう。
どっからあんなに湧いたのだか。王族とはおそろしいものよ。
まぁしかし、
なんとも言い難いことになった。
あの様子からすると、シエストリーネはイオ君に恋い慕っていた可能性がある。
シアのあからさまな言葉の誘導に、みごとにはまって誤解してしまった。
もう少し冷静になっていればよかったのだろうが、なれなかった。
かわいそうに・・・あとで誤解だと気が付いてくれればいいが、そうじゃないと面倒なことになりかねない。
でもちょっといい気味だな。
「ん。」
「・・・グラスマイヤー様」
「シアでいい。その名前は変態を思い出すから、嫌。」
「シア様、シエストリーネ様は、いったいどうされてしまったのでしょうか・・・」
シアはきょとんとイオ君を見ている。
彼は御子である。
それは神の御使いを表す。早い話”天使族”ということだ。
人の悪意にうとく、善意を信じ、愚直で真面目にまっすぐな性格。
純粋すぎるのである。
なのでシエストリーネが何を誤解し、どうしてショックで泣き出してしまったのかわかっていなかった。
罪な男の子である。
「んー・・・、シエストリーネは勘違いした」
「勘違いですか?」
「わたしと、イオが恋人だと」
「え?」
イオ君はしばらく会話の流れを思い起こしていた。
そして納得した。
「・・・・・・理解しました。申し訳ありません。少し頭が痛いことになってるんですね・・・」
どこまでわかっているのか知らないが、一応誤解したことはわかったようだ。
「これは・・・自分が誤解を解きにいくべきでしょうか」
「さぁ?」
シアの知ったことではない。
どうするかはイオ君次第である。
かってに青春しているがいい。




