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邪武器の娘  作者: ツインシザー
人間領
67/222

首都グラッテリア1

 新しいお義父様はのたまいました。

「お前には貴族として礼儀作法を完璧にこなせる、淑女になってもらう」

 正直、この変態にしてはまともなことを言っているな、などと思ってしまった。


 シアは罪状をもみ消してもらう代わりに隊長――ミルゲリウス・グラスマイヤーの養女となることになった。

 ひとまず交渉の結果、5年間。その後はまた、報酬いかんによっては考えるということで合意した。

 その後、すぐにシアとの養子縁組書類が造られる。偽造ではない。正式書類をコネを使いまくって作ったのだ。魔族の配下とかの事情は流石に隠していたようだが。


 このミルゲリウス・・・ゲリウスのおっさんは、変態だった。

 オレの知識で言う所の、人形性愛、ピグマリオンコンプレックスに近い形の愛情をシアにいだいている。

 その最たるものが衣装の数だ。

 子爵家の家長にして一人っ子のゲリウスには大きな屋敷とそこそこ潤沢な資金がある。それをシアのためにと屋敷の3部屋分、衣装や帽子や小物などで埋め尽くすために惜しげもなく支払って見せた。

 それからほとんど毎日着せ替えをさせられた。着替えさせてくれるのは屋敷のメイドだが、その着替え中も部屋の中でじっくり視姦しているのだ。


 くっ、オレのシアを・・・見ていいのはオレだけだったのにガリガリガリガリやめて痛い。

 衣装がばっちりだと思った日には外に連れ歩いて喫茶店や庭園へ遊びに行ったり、知り合いの貴族に自慢しに行ったり。お前仕事はどうしたんだという惚気っぷりを披露していた。

 ほんとう、大変な変態ではあるが、エッチなことだけはしてこない。シアに触れるのは髪を梳かす時、真っ黒な髪に触れて恍惚としているときだけである。


 おっさんはわりかしシアの意見も聞いてくれる。

 シアが槍をパパだと言い、手放そうとしないのを見て、「わかった」とだけ答え、以降は口を出すこともない。

 シアが戦闘のための熟練度かせぎをしていても、「美しいな」と許してくれる。

 半ば誘拐されたような状況になり、学校とお嬢様に連絡するために手紙を出そうとしても、「眼だけは通させてくれ」とシアの横に顔を近づけて内容を読むだけで破り捨てたりはしない。もちろんお嬢様からの返信にも顔を近づけて横で読むだけでそのままだった。


 さて、そんな新しいお義父様ができたわけだが、春が近づく2月。おっさんはシアに淑女となれと言った。

 淑女となるために、学園に入れ、と。

 学園とはグラッテン王国首都、グラッテリアにある、国の紳士淑女養成機関なのだそうだ。

 これでやっとおっさんと離れられる、と思った。ちがった。おっさん、グラッテリアについてくるらしい。

 は?ばかなの?何でついてくるのおっさん。仕事しろよ(←元無職)

 貴族の学校である学園は紳士淑女を養成するためのものであり、戦闘訓練はほとんどない。唯一あるのが騎士科。騎士として兵士を指揮するための学部であり、戦うための技術を全力で教えてくれるわけではないらしい。

 まじかーと思ったが、剣の腕は貴族であろうと重要であり、そこは個人で家庭教師を雇って補うらしい。


 そんなこんなで3月の終わり、オレたちはおっさんに付き添われ、グラッテン王国の首都へと出発したのだった。



 そうそう、手紙でやり取りしていたお嬢様はアドバイスをくれていた。

 曰く、

『隙を見て逃げてきなさい』

『寝首を掻いて逃げてきなさい』

『その手の生物は股間を蹴るのがいいらしいです』

 とのこと。

 夏休みにそちらに一度帰るつもりだと返せば一応納得したようではあった。




 馬車の車窓から見る首都は広く、大きく、壮観で、無口なシアですら口を開けて感嘆のため息をつかせるほどだった。

 黄色い岩々に囲まれ、緑の熱帯植物がもっさり生えるなかに、真っ白な建物類が陽光を反射しながら建っている。

 奥に見える一番大きな建物が城だろうか。なんだか台形の廟といったほうが近い外観をしている。


 すげー

 魔族領の建物は西洋風だったが、こっちは中東風かー

 面白いなー


 城門を抜ける前、ゲリウスが一つのペンダントを渡してきた。中心に赤い宝石を宿した、十字架のようなペンダントだ。

「これを付けていてほしい」

「ん?」

「門は”魔族”に反応する魔道具が設置されている。これはその反応をごまかすものだ。書類上は魔族とのハーフということになっているが、門をくぐるのに時間がかかるのはわずらわしい。門を通る間だけでもいいからつけているんだ」

「ん。」

 シアは受け取って少し躊躇する。

 そしてペンダントをオレに巻き付けた。


 うんむ

 そうね。

 イビルだもんね。でも魔族ってわけでもないからどうなんだろうね。

 オレは魔剣なんかと同じ魔属性強めの武器で押し通せると思うから、今はシアがペンダントをした方がいいんじゃないかな。

「んー・・・ん。」

 シアはほどいて自分の首にかけなおす。

 ほどなくして馬車は門へと到着する。貴族用の通用門だ。

 御者と門番のやり取りの後、馬車はゆっくりと門を通る。・・・・・・通れた。


 はーん。オレはその装置とやらに引っ掛からなかったわけだ。

 ”魔族”じゃなくて”種族 魔動槍”だからなのか。それとも聖剣を壊す使命を持つ武器なので、魔将ママがひっかからないように造ったか。

もしくはペンダントの効果範囲が広いかだな。まぁ、さっくり通れてよかったけども。


「・・・・・・シア、君はここでは『シア・M・グラスマイヤー』と名乗りなさい」

「エム?」

「魔族の血が入っていることを示すものだ。君の容姿を見れば別の血が入っていることは一発でわかってしまう。その時に後々面倒ごとを起こさないように、名前でわかるようにしておくための記号だ」

「ん。シア・M・グラスマイヤー・・・」

 貴族みたいだ。いや、貴族になったんだけども。

 子爵家の養女。グラスマイヤー家を継ぐ者か・・・。


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