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邪武器の娘  作者: ツインシザー
魔族領
56/222

学校2学期2

 生徒たちがいきいきと躍動し、いくつもの種目が消化されてゆく。

 そして種目”走力”の番がやってきた。

 1レース6人が同時に出走する。


 シアの相手は人間2人、エルフ1人、ザリガニ魔族1匹、馬1匹、トカゲ魔族1人だった。

 馬は馬だった。おそらくは変身能力とかそういうのかもしれない。この面子なら2位か3位に入れそうだ。


 がんばれー、全力でいけー

 ちなみに道具の持ち込みはできないが、スキル・魔術の使用制限はない。それらをまるっと含めて個人の能力なのだ。


 全員がスタートラインにつく。

 みんな思いおもいの恰好で合図を待つ。

 教師が手を上げ――振り下ろす。


 ドン!


 暴風が吹き荒れた。

 エルフっ子が風魔術を周囲に解き放ったようだ。

 しょっぱなから妨害だと!?

 このルールだったらオレでもそうするなぁ。


 人間二人とトカゲが倒れている。しかし馬は四つ足のおかげで倒れない。馬の隣にいたシアも、体を低くすることで飛ばされるのを防いでいる。


 エルフっ子の風がやむ。

 一番最初に飛び出したのは・・・シアだ!

 今まで見たこともないくらいのスタートダッシュ。そうか、《竜力》。30秒間のみだが筋力と魔力を50%増加してくれるスキルだ。クールタイムが長すぎてあるのを忘れていた。

 だから風で飛ばされなかったのか。シアを追いかけるのは馬だ。流石に早い。

 じりじりとシアに追いつきつつある。シアの横に並び、追い抜こうとしたとき――シアが手を伸ばして馬に触れた。


 馬は突然少年の姿に変わる。


 !?

 これは・・・失力か!

 無属性の初級魔術《失力》。相手に触れなければならないが、触れた相手の強化効果を失わせる魔術。

 馬の変身能力の効果を喪失させたのだ。


 馬から少年になった子は突然の変化に対応できず、足を自分の足にひっかけて盛大に転んだ。

 よし、これでトップはシアだけだ。

 いけっ

 シアはそのままゴールへ走り、ゴール地点でいまだにもたついていたザリガニ魔族の逆噴射ヒップアタックにぶつかって撃沈した。


 は?


 一位はトカゲ魔族の子だった。

 エルフっ子は起きてきた人間の子らと喧嘩をはじめてゴールできず。シアも気絶したのかゴールできず。ザリガニの子はシアを先生のところまで連れて行ってゴールできず。

 とてもひどいレースだった。


 ・・・・・・えー?



 昼休憩。みんなが家族の作ったお弁当や支給弁当を広げる中、意識がもどったらしいシアが肩を落としながら帰ってきた。

「パパコーチ。負けちゃた」

 おう。すっごくおしかったな。最後のアクシデントさえなければシアが一位だったさ。

 シアの頑張りは無駄じゃなかった。オレのまぶたには今もお前が走っている姿が焼き付いている。

 これは誰がなんと言おうとオレの一番の宝物だ。

「・・・ん。」


 ちょっとは自信がもどってきたらしい。うれしそうに笑ってくれた。

 そういや魔術、使えるようになったんだな。

「ん。おととい、使い方がわかった。速力と同じ」

 なるほど。《速力》で内発の魔術の使い方がわかったから、同じように《失力》が使えたということか。今まで魔力を練ってきて、あとは切っ掛けさえあれば魔術が使えるところまできていたのだろう。《失力》は内発であり、外発の魔術。もしかすると《火矢》棍棒も役に立っていたのかもしれない。


 シアは、どんどん成長している。

 他の同年代の生徒よりも成長が早い気がする。オレが補助をし、シア自身が頑張っているのもあるが、それでもおそらく早い。

 理由はわからない。種族”龍”の恩恵なのか、それともオレの《魂吸収》や《変化》あたりが影響しているのか。

 ・・・わからないけどいっか。

「ん。」


 ひとまずは弁当を食べよう。

 ポステリアがこっちに手を振っている。いこう、待たせてしまっているな。

 シアはコクリとうなづいてカバンの中からお弁当を取り出すのだった。


 ちなみにザリガニッ子は謝罪とともに自分の弁当から生魚をシアにくれたらしい。

 まだ暑い時期の生魚・・・やめなさい腹を下す。

 あぁー・・・



 午後から戦技が始まった。

 クラスの代表者2名タッグによる勝ち抜き戦。

 初等部は魔族と人間のタッグが勝った。めずらしいコンビもあるんだな、という感想だった。

 中等部はフェイ姐と生徒会長が参戦していた。いいところまで行ったが2位だった。からめ手にやられた。

 高等部は大魔法合戦をしていた。あれは倒すことより魔法で圧倒することを目的に遊んでいた。

 見ていて楽しくもある。

 そんな感じですべての演目が終わり、締めの挨拶のあと、競技会は終了した。


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