学校2学期1
「競技会があります」
秋が色濃く木々を染め上げ始めたころ、クラスの担任がそんなことを言ってきた。
競技会。
早い話が運動会である。
走力、剛力、遠投、射的。他にも演舞や応援合戦など運動会らしい種目が書き出される。
そして最後に「戦技」と書かれた。
きた・・・!
やっぱりあるのか。そうだろうそうだろう。戦闘技術を重点的に教えてくれる学校で、個人の強さを競う競技がないはずないものな。
これは腕がなるぜ!
「戦技は3年生からの参加になります。みなさんは先輩の戦い方を良く見て参考にしてくださいね」
ですよねー
人種族の成長速度は人種族そのまま。6,7歳では幼稚園児が一回り育った程度である。そんなカワイイ子らに武器を振り回して戦いをせよなどとは、いくらうちの学校といえど言えやしない。
そうなるとどの競技に出場したものか。
演舞は全員参加っぽいから、走力だろうか。
とりあえず生徒の父兄っぽく温かい目線で見守ろうと決めた。
その日から、シアの自主鍛錬に”走力”の特訓が追加された。
「ばびゅーん。」
掛け声を付けただけで人は早くなるわけではない。
シアは早いには早い。が、あくまで人型としては早いというだけだ。生徒にはケンタウロスやチーターから進化してきた魔族の生徒もいる。そういった生徒には倍近い差をつけられて負ける。
シアが勝ち負けにこだわるとは思えないが、やるからには本気で戦いに行くつもりのようだ。
「勝つし」
そうか・・・ガンバレー
「ばびゅーん。」
・・・・・・
「ぼびゅーん。」
シア、オレがコーチしてやろうか?
「?」
ふふふ、こう見えても早く走るコツみたいのはいくつか知っているんだぜ。オレがシアのコーチになればシアを今より早く走らせることだってできちまうんだ
「・・・・・・ん。」
ではオレのことはコーチと呼ぶんだ
「ん。パパ」
コーチだ
「ん。パパコーチ?」
・・・まぁいいか。
シアの特訓は続く。
野生児だったころに培った走法はここでも発揮される。四つ足の獣みたいに前傾になり、地面を蹴る。
障害物があればその性能はいかんなく発揮されるだろう。
が、校庭はきれいに整備された平らな地面だ。
普通に体を起こして腕を振って走った方が速く走れる。
「むー・・・」
シアは普通の走り方を練習し始めた。
普通に走れるようになった。
ただ、地面から目線が遠のいたせいで遅くなったと感じるようだった。地面に近い方が早く感じるのだからしかたない。実際にタイムが計れるといいのだけれども・・・。
オレの風突から次の風突までのクールタイム中にどこまで走れるかで比べることになった。
よーい、《風突》!
「ばびゅーん。」
・・・《風突》!
こんな感じ。
結果は前傾走りも普通走りもそれほど変わりなかった。なんでや
「ふふん」
ぐぬぬ。
剣魔道具の《速力》を使って早く走る感覚を体験してみることにした。
早い感覚を覚えると走るのが早くなると、昔テレビで見た記憶がある。
まぁ、ものは実験である。
魔道具を発動させ、走る。
・・・確かにちょっと早いな。速力は15%増加のはずなので違いがわかるくらいは変わっているはずだ。
「ん。・・・はやい」
良かった。
しばらくはスキル有り、無しで訓練してみよう。
早くなってきた。
走り方が普通走りと前傾走りの中間くらいになっている。
早く走れる方法が体に染みついてきたようだ。
とりあえずよし!
うむ。
「パパコーチ、次は?」
・・・・・・どうするかなー。
「ん?」
いや、走れ!走れば早くなる!
「んっ。」
そんなこんなで競技会当日になった。
なってしまった。
やることはやった!シア、今のお前は昨日のお前より強い!いざ、決戦のスタートラインへ!
「んっ」
・・・・・・・ふう。
しかし・・・特に策もなにもなかったな。普通に練習してしまった。
こんなことではコーチ失格だろうけども、まぁいいか。
《速力》でも覚えられればと思ったが練習期間ではだめだったようだ。剣の持ち込みもできないし、まぁ、負けて帰ってくることになるだろう。
それもまたよし。
涙のシア
うん。良い。
いつもと違う一面を見ることができるなら、それもまた本望である。
ふひひ
「・・・・・・パパ」
あわわわ、シア、いつからそこに!?
「さっきから」
う、うん。
「パパ。」
は、はい
「勝ってくる」
・・・・・・おう。




