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邪武器の娘  作者: ツインシザー
魔族領
53/222

夏休み8


 ブヒ蔵と顔を合わせたくないので武器防具屋から見て回ることになった。


 と。

 なぜかフェイ姐がついてきた。

 ほんと世話焼きな性格だ。

 最初疎ましく思っていたお嬢様だが、ブヒ蔵の行いに対して思う部分が同じだったのだろう。ちょっとはお互い譲歩するようになっていた。


「この装備が軽くていいぜ。男どもはもうちょっと厚い装甲を選ぶが、あたしらにゃ胸が窮屈すぎるからな。動きやすくていい」

「・・・私たちはまだ、胸は困るほどではありませんが・・・そうね。それにしましょうか」

 言うてもお嬢様はタウロス種なのですでにそれなりの胸囲を持っている。ぺったんなシアの装備なので確かに関係ないが。

「ぺったん・・・」

 大丈夫だ。パパはぺったんも好きだ

「知りたくなかった」


 オレの性癖は置いといて、シアの装備が新しくなった。

 白鉄の胸当て、黒鉄の肘当て、黒鉄のすね当て、腰ベルト、それから短いマントだ。マントは水、火、光を軽減する。属性耐性付きのものだった。


「属性防具も買うのかい。・・・なぁ、あんたらどのダンジョンにもぐるつもりなんだ?」

「Dランクダンジョンに行ってみるつもりですわ」

 ちょっと長めの耐性マントを見繕いながらお嬢様が答えた。

「Dかよ・・・二人でか?」

「・・・一応そうですわね」

 お嬢様がちょっとオレを数に数えようか迷った節があった。

 うん。気にしなくていいよ。

 とくに秘密というわけでもないが、シアの口数が少ないこともあって、オレのことを知っている生徒は誰もいなかった。

 オレはいないものとして話した方がこんがらなくていい。

 うん。そっちのがいい(しょんぼり)


「・・・チッ、あたいも行っていいかい?」

「・・・来るんですか?」

「あぁ。行っていいなら行く」

「・・・かまわないですわ。シア、いいかしら」

「ん。」


 いっしょに買い物をしている時点でそうなることもあるだろうと思っていた。

 二人だと不安があったのでありがたい。

「あと、もう一人呼んでいいか?、暇ならあたいのダチに声をかけたい。生徒会長をしてるサイクロプスなんだけど、悪い奴じゃない。生真面目な男だよ」

 お嬢様はすぐに返答せず、シア・・・オレに視線をよこす。


 生徒会長はすっごくいいよ!ぜひとも仲間に欲しい。むしろ配下に欲しい。この機会に何とか勧誘してほしい!


 貴重な鑑定能力の持ち主である。

 鑑定料金が浮くうえに、ダンジョン攻略中の装備品の取捨選択が可能になるのだ。大量の装備を持って帰らなくてもいいのは機動力の面でもありがたい。

「・・・いいですわよ。冒険者組合の向かいのお店で落ち合いましょうか」

「おっし」

 こうして新しいパーティーが結成されるようだった。



「では、この5人で行くことになりますわね」

「4人だろ?あんた目は開いてんのか?」

 というわけで、生徒会長の紹介の後、オレの紹介が始まった。


「パパ。」

「それは前に聞いたぜ。・・・おやじさんの形見なんだろ?」

「違う。パパ。パパなの」

 シアに通訳をお願いしてオレの挨拶を行う。


 ふはははは、オレは暗き洞窟の底より引き抜かれし伝説の武器だ。今はシアのパパをしている。ご飯も睡眠もなんもいらんが一個の生命体なのでよろしくするようにおーばー?


「おぉ、これは初めて見るアイテムですね。命を持った武器ですか。しかもスキルが使える・・・こんなモノは今まで聞いたこともありません。そうですね・・・これほどの武器なら――」

 おいまて


「”魔鎗冥父”と銘を付けてもいいでしょうね」


 ・・・・・・めいふ

 洞窟って言ったから冥府とかけてるのか?

 てか、おい。

「パパ・・・名前が・・・」


 ・・・・・・・・・・・・。

 ぎゃばーっ!


 おい、おま、おまえっ、おまえふざけんなよっ、のりでっ、のりでつけていい名前とちがうんだぞっ拾ったトンカチじゃねえんだぞっ

 一生もんの名前をーっっ!!!!!



 こうしてオレは本名”魔鎗冥父”になった。

 ステータス欄にきちんと記載されている。

 名づけは生徒会長のグロード・ロプサリス。動機は思いついたから。罪状は窃盗罪。

 彼はオレの大事なものを奪っていきました・・・。


 何気に読みやすいしちょっとカッコイイ字も入ってるしでにくしかゆしなのはなんなのか。ネタ全振りじゃなかったのはありがたいが父を入れるセンスは減点と言わざるをえない。

 どうすんだこれ・・・


「本当に申し訳ない。いくら謝っても許されないことだと思うのですが、それでも謝らせていただきたい。本当に、本当に申し訳ない。この責は必ず返罪いたします・・・っ」

 いや、いいよ。

 名前つけてなかったのはオレだし。まさか銘を付けたら名前欄が埋まるとは思わなかったし。

 もうしかたないさ・・・


「何か、返せるものでもあればいいのですが・・・!」

 してほしいってのならお嬢様の配下になってほしいけども、生徒会長も貴族みたいだし無理かね。

「いえ、可能です。準男爵でよければ・・・」

「まてまて、ちょっと待てよ。あんたあたいを配下にするって約束はどうした。あたいは何のために今までやってきたんだよっ」

 グロードの返事に待ったをかけたのはフェイ姐だ。どうもこの二人には大事な約束事があるようだった。

「それは・・・そうだけど」

 ならいっそ二人がお嬢様の配下になってしまうのも、一つの案ではある。


「・・・・・・保留しましょう」


 そう結論付けたのはお嬢様だった。

「配下とは安易に作るものでも、契約するものでもないと私は考えますわ。何かの代償に私の配下になるなどということは、当の私が歓迎しません。そして名づけの代償という、返済の難しいものの代償なら、やはりそれは名づけることでしか返せないのではないでしょうか」

「な、名づけること、ですか」

「そうですわ。いつか生まれるグロードさんのお子さんの名前を、ウェポン・・・シアパパさんが決めるのですわ」

 冥父の名ではなく、シアのパパの呼び方でオレを呼んでくれる。気遣いに涙が出そうだ。


 そしてそうか、オレがグロードの子の名づけの親になるのか。

 納得いく解決方法だった。


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