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邪武器の娘  作者: ツインシザー
魔族領
51/222

夏休み6

 二人の駆除作戦が始まった。

 もっとも、作戦と言ってもさっきのようにシアを前衛にして巣まで行き、巣を火矢で燃やそうと言うくらいの物だったが。

 ハチも一直線に巣に進んでいく二人を脅威とわかるのか、進むほどに攻撃が熾烈になってきた。


 シアはずっと《円舞》を舞っている。舞いながら自身とオレの《風刃》を放って飛び回るハチを落としてゆく。

「もうっ、数ばかり、多いですわっ」

 お嬢様が背後や槍の合間から入り込むハチを倒してゆく。

 《風突スラスト》と《三段突きトリプルラスト》。二人はすごい勢いでハチを駆除してゆく。


「見えましたわ。あれが巣ですわね」

 大岩に寄りかかるように巨大なハチの巣ができていた。

 3メートルのハチの巣か・・・。実際に見るとすごい大きさだなぁ。


「じゃぁ、燃やしますわよっ」

 お嬢様が巣に向かって火矢を放つ。

 それはまっすぐに巣に向かい、当たる直前に消えた。

「なっ」


 お嬢様はもう一発火矢を放つ。けれどふたたび消えた。消える直前、空中に水が湧いているのが見えた。

 魔術。それも水魔術だろうか。それが火矢を消したのだ。

 巣の前に一匹の毛色の違うハチがいた。他のハチより小さく、体色が薄い。戦士と言う風格ではなく、むしろ女性的な雰囲気を持っていた。


 ――女王。女王蜂クイーンビー


 巣があるのだから女王蜂もいるだろう。

 でもまさか魔術が使えるとは・・・。


 クイーンが出てきたことにより、ハチ達の動きがより統率の取れたものになった。多グループによる同時攻撃が波状的にやってくる。

「くっ」

「・・・っ」

 羽や針がかすり、小さいキズを負うことが増えた。

 敵の攻撃にこちらの手数が回らなくなってきている・・・。


 やばいな、早くなんとかしないと。

 二人はいっぱいいっぱいである。オレが何とかこのピンチを切り抜ける案を出すしかない。

 !

 ひらめいた!

 シアの棍棒をお嬢様が装備すれば右手と左手から《火矢》が打てるのでは!?

「魔力を左右別々に流せと!?、あなたたちといっしょにしないでくださいっ」

 確かに。

 じゃぁ何も浮かばない。

「つかえないですわねっ」

 しょんぼりだ。


「!、パパッ」

 シアが何か気が付いたらしい。

 どうしたシア、今パパは人生の壁にぶち当たって挫折を味わっているところさ。用があるなら――

「スキルっ」

 スキル?、え。まさかっ

「《操槍ピアライド》っ」

 シアが指摘する。ハチの猛攻をシアの《操槍》を使って防ぐうちに、オレもスキルが獲得できたらしい。

 《操槍》――槍を操ることを補佐するスキル。


 よし、今すぐ使って・・・!

 て

 ・・・・・・

 すでに発動してるよ。

 操槍は常時発動型である。

 覚えた時点で発動している。

 ・・・・・・いる?。今これ、いる?。

 ・・・・・・どう?何か変わった?

「・・・・・・狙い、ちょっと楽に・・・」

 うん。

 効果が加算されてるようで良かった。



 オレの意思に導かれるようにシアの槍捌きがきれいに流れる。


・槍術《操槍》 <常に槍の軌道に5%の補正がかかる>


 なるほど。5%だけ思い道理に動かせるのか。

 この敵を攻撃したい!と思えば5%分、狙いがはずれていても補正がかかり当たるようになる。今はシアの操槍と合わせて10%分の補正がある。

 なのでたまに遠心力を無視してぐいんと無理やり攻撃の軌道が変わることがある。

 理解した。


 シア、速度を上げるが平気か?

「・・・ん。」

 操槍の5%をすべて円舞の速度上昇に加える。

 オレ達に足りないのは手数。

 たった5%だが、攻撃の進行方向に意思を向ければそれは速度上昇として現れる。

「あら、流石私の配下ですわね。きっと応えてくれると思っていましたわ」

 ほんの少しの差だが、お嬢様も負担も減ったのがわかるらしい。

 安いてにひら返しだがいいさ。十分うれしい。


 それでも拮抗させることしかできない。

 こっちの体力は無限ではない。

 だがあっちもどんどん数を減らしている。

 こっちの体力が尽きるか、それともあっちの数が尽きるか、その勝負である。

 そのちょっとの状況改善だったが、あちらには思うことがあるようだった。

 魔法を防いで以来、行動を起こさなかったクイーンに変化があった。滞空していた飛び方が、すすっ、という動きのあるものに変わった。


 ・・・・・・やな予感がしてきた。

 クイーンはこちらをジッと見つめていたと思ったら、オレたちに向かって水の弾を撃ってきた。

 向こうも手数を増やしてきたか!。

 めんどくせっ

 オレの《風突》を発動する。円舞中で刺突状態じゃなかったので威力はほとんど出ない。が、弾の軌道を逸らすことはできた。


 お嬢様っ

「わかってるわっ」

 クイーンが再び水の弾を撃ってくる。お嬢様はそれを、《火矢》で迎撃することはなかった。

 オレが再びとっさに《風突》で軌道をそらす。

 お嬢様はクイーンの魔術の隙に、《火矢》を放った。

 カウンター攻撃

 クイーンはそれをスッと避ける。避けた先、巨大な巣に《火矢》は当たり、燃やし始めた。


 避けやがった・・・

 それを見てクイーンは巣から距離を取る。何体かの親衛隊もそれに続いてクイーンを囲むように移動していく。

 ・・・こいつら、逃げるつもりだ。


 オレたちが拮抗状態に持って行った時点で勝てない可能性を考えたのだろう。もしくは決死の覚悟でつっこんで来られてしまえば、どのみち巣を燃やされるかもしれないと。ならば、クイーンさえ無事なら巣はまた作れる。

 魔術を攻撃に使って来た時点で、巣を捨てて逃げ出すつもりだったのだ。


 薄情は親だ。

 判断は正しいのだろう。いくらでも新しく子供を作れるのなら、親を残すのが正しい選択だ。

 でもな、大好きな娘のために頑張ることができるのだって、親の特権なんだ。


 お嬢様、《火矢》をクイーンに!

「この距離だと避けられますわ」

 かまわない。シア、《風突》を合わせるぞ!

「んっ」

 お嬢様の《火矢》に重ねるようにシアが《風突》を放つ。そしてもう一つ――オレの《風突》をさらにのせる。

 《操槍》に《操槍》の効果が加算されるように、スキル同士でも威力を増やすことができる。それがわかればあとは実際に使ってみるだけだ。


 クイーンに放たれた《火矢》は二つの《風突》の後押しで避ける間もなく女王蜂クイーンに突き刺さる。

 一瞬にしてその姿を焼き尽くした。


「・・・すごい」

 クイーンもろとも、その周りにいた親衛隊の大半も消え失せる。

 クイーンがいなければ敵の統率は悪くなる。


 消化試合が始まり、オレ達の勝ちが確定した瞬間だった。


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