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邪武器の娘  作者: ツインシザー
魔族領
50/222

夏休み5

 久しぶりに人としての生活をし、おいしい物を食べながら相談した。


「ダンジョン、いいですわね」

「ん。がっぽり」

 違う、そうじゃない。

 クエストのゴブリンメイジをどうするかだ。

「そうですわね、あと3週間もあるのだから、何とかなるでしょう」

 いや、ならんし、お嬢様のランク用クエストはこれがまだ二つ目ですからね。

「そうだわねー・・・」

 だらけている。

 休日のONとOFFが激しいタイプか。


「・・・もっと難しい、ダンジョンに行く」

 シアがそう発言した。

 まじか。

 流石にそれはまだ準備が足りていないと思う。最低でも風突の熟練度を上げて射程距離を延ばさないときびしい。もしくは人を雇い入れるかだ。

「んー・・・、あぁ、そうですわね。シアのランクを先にあげましょうか」

 そうか。シアの言ったことを理解した。今行けるランクのダンジョンではゴブリンメイジを探すのに苦労する。ならゴブリンメイジが湧いている、今より難しいダンジョンに行けばいい、ということか。

 シアのクエストはモルビー10匹。森にいる15センチくらいのハチのモンスターだ。



 冒険者施設に戻ると、冒険者用の依頼掲示板にちょうどハチの討伐依頼の依頼書が貼ってあった。牛農家の庭先にハチが巣を作っているので駆除してほしいらしい。


 依頼を受けてのんびり風景をたのしみながら牛農家のところへ向かう。

 農家につき、安全のために牛が放牧されていない牧草地を見て、そして気が付いた。

 ブブブと辺りを飛んでいるハチの色が紫だった。

 ・・・・・・おや?


「・・・・・・モルビーじゃないわ。あれはパープルビーですわね」

 モルビーが毒強化方向に進化した種類らしい。

 状態異常はちょっと前に痛い目を見ている。

 一度準備にもどった方がいいかもしれない。


 その時、牛舎から牛たちの悲鳴が聞こえてきた。

「っ、行きますわよ!」

「んっ。」



 牛舎に突入すると中では数頭の牛と紫のハチがあばれていた。すでに何頭かの牛がハチに刺され、倒れている。お嬢様は突入の勢いのままハチに刺突剣をあびせた。

 スキル《三段突きトリプルラスト》刺突剣による3連撃。

 一撃目で体の中心を貫かれたハチは、そのあとの攻撃で頭を貫かれ、動かぬモノとなる。


 入り込んだのは一匹か?

 シアは辺りを警戒する。

「・・・・・・ん。いない」

 よし。

 牛は・・・まだ息がある。薬屋に行ったとき毒回復のポーション買っておけばよかったか。

 騒いでいる牛たちはいまだに動揺しているようだ。


「・・・・・・落ち着きなさいあなたたち!」


 お嬢様が一喝する。

「タウロスの血に連なる者ならば肝をすえなさい!。あなたたちの戦いはまだ終わっていないのですわよ!」

 牛たちは落ち着きを取り戻す。

 お嬢様の言葉は彼らに届いた。

 幾匹かの牛がハチに刺されて倒れている牛に寄り添い、傷口をなめ始める。

 そうか、この世界の毒は時間経過でのHP減少。しかも時間がたてば毒の効果も切れる。・・・シア、何か使えるものはないか?


 持ってきたものは多くない。

 ダンジョン用の装備とお昼ご飯くらいである。

 ダンジョンで拾った微妙魔道具は宿に置いてきてしまった。

 何もないな。しかたない、毒を吸い出すか。


 オレはシアに言って牛の傷口から毒を吸い出してもらった。

 これで大分良くなるはずだが、さてどうするか。

 牛舎の周りでは帰ってこない仲間の心配か、それとも戦いの気配を察してか、他のパープルビーが集まってきていた。

 まずいな・・・囲まれてるぞ

「ん、戦う」

 確かにそれしかなさそうだ。こんなことなら煙の出る剣や火矢が撃てる棍棒を持ってきてればよかった。

 今更言っても後の祭りである。

「そうですわね。ではシアを前衛に、私がフォローにまわります」

 いつも通り、攻撃範囲の広いシアに好きに動いていいとのことだ。

 いくか

「ん。」


 牛舎の扉を開け、入り口の少し前に陣取る。

 さっそく一匹のハチがシアに近づいてくるが、風刃のスキルで真っ二つになる。

 シアを敵だと認識したハチたちは、徒党を組んでシアを狙い始めた。2~5体が1パーティーになり、波状攻撃をしかけてくる。だがそんな物は槍舞の速度が上がっているシアの元まで、届くことはない。

 舞い、払われる槍にハチが次々と切断されてゆく。

 たまに一匹、攻撃の隙をついて飛び込んでくるのがいるが、横から振るわれる小剣の一突きで無力化された。


 牧場の周りにいたハチは程なく姿を消す。

「あっけないわね」

 まぁ、モルビーの進化種だし、毒をくらわなければそれほど強くない相手なんだろう。モルビー自体がEランク冒険者のクエストに選ばれる程度の敵なのだ。

「良かった!冒険者さんが助けてくれたんですねっ!」

 牛舎とは別の建物から男が出てきた。シアの足元に転がるパープルビーの残骸に驚きつつ、安堵の声を上げる。

「もしかして依頼を受けてきてくれたんですか?」

「そうですわよ」

「ありがとうございます!。あなた達ならあの巣もお願いできますよね」

 あの巣とは。


 一回帰って準備を整えたいのだけど・・・。

「・・・・・・巣とは、大きさはどのくらいなのかしら?」

「3メートルくらいです。かなり大きくなってしまって・・・早くに見つけられればもっと小さかったんですけど、ちょうど丘の向こうにあったせいで見つけるのに遅れまして・・・」

「わかりましたわ。けれど依頼には”ハチ型の魔物”としか書かれてませんでしたから、毒消しポーションを持ってきていません。一度町に帰って買ってくるので待っていていただけますか」

「そんな・・・」

 お嬢様がジロリと見ると彼は口をつぐんだ。


「・・・シア、私が帰ってくるまで牛舎を守りなさいですわ。そこの依頼人、残っている人を牛舎に集めて守りを固めなさい。傷ついた牛もいますから世話もお願いしますわね」

「は、はい・・・」

「ん。」


 お嬢様は毒消しを求めて旅立った。

 まっすぐ行って帰ってくれば3時間くらいで戻ってくるだろう。



 何度か襲撃を受けたが、少数でやってくるハチはシアの敵ではなかった。

 やつらは辺りを周回するだけになった。


「・・・・・・暇」

 やることも無いのでスキルの熟練度を上げていたが、それも飽きてきたらしい。

 たまには魔法も練習しておくか。ほらシア、魔力の練り方覚えてるか?。

「んー、こう・・・」

 もにもにと魔力を練っているようだが、いまだに魔法は発現できていなかった。


 もにもにすること一時間弱。シアが再び飽きてきたころ、お嬢様が帰ってきた。

 毒消しポーションとHP回復ポーションを渡された。


「あとこれを使うといいですわ」

 先っぽが焦げている棍棒だった。これか、火矢の出る棍棒。売っておいてなんだが、遠距離攻撃のできないシアにとって非常に頼りになる武器だ。

 買い戻したらしい。ただし火事には気を付けるように言われた。

 お嬢様も装備が増えていた。左の腕に小さな木盾を装備している。ハチの針を防ぐためだろう。


「毒に侵されていた牛は?」

「おきた。今は平気」

「わかりましたわ。・・・では巣をなんとかしましょうか」

「んっ。」

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