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邪武器の娘  作者: ツインシザー
魔族領
48/222

夏休み3

 4階層。敵は3階層と同じだった。が、どうやら一番大きな部屋にボスがいるらしい。ほとんどの場合はいないのだが、新しく強い個体が現れるとそれがボスになるそうだ。


 その大部屋のボスは・・・蛾だった。

 きっとハイモールバタフライとか言う名前なんだろう。カクテルの名前かな?。

 などと余裕をみせてみたが、強い。

 蛾の鱗粉を載せた羽ばたきで二人の体が麻痺してしまう。そこから相手の体当たりをくらい、地面に転がされる。

 お嬢様が初めに叩きこんだ火矢4発分くらいしかダメージを与えていない。

 麻痺が強すぎるのだ。


 やばい。

 次に麻痺が解けたら逃げよう。シア、お嬢様にも伝えるんだ。

「・・・っ」

 シアはまだ戦意を失っていない。

 以前獲得した”麻痺耐性6”のおかげでお嬢様よりも体が動いている。それでも戦えるというほどではない。

お嬢様と違って近距離でしか戦う方法がないのだから、逃げて体勢を整えるんだ

「・・・ま、だ・・・っ」


 シアは振りかぶる。だが蛾には遠い。

 蛾はシアの攻撃の届かない位置から鱗粉を飛ばして麻痺させてくる。賢いボスである。

 シアの攻撃は届かない。

 そのはずであり、それは間違いがなかった。

 シアは投擲する。

 山なりのゆったりとした速度で。オレは放物線を描くように落下し、――いま!


 刺突術《風突スラスト


 寄宿舎でシアが寝ているときも、砂浜に一人残された時も、できる限り使って育ててきたオレの直線120%攻撃。

 その風属性の衝撃波は、片羽と共に蛾の右半身の一部をえぐりとった。

 蛾が地面に落ちる。羽を失って飛ぶことができなくなった蛾などムカデにも劣る。


 体に活を入れて立ち上がったシアに、残った片方の羽を開いて威嚇する。

 シアは蛾の頭を殴った。殴った手で落ちているオレを拾い上げ、蛾に振り下ろす。

「《風刃スラッシュ》」

 シアの一撃は蛾を縦に一直線に断ち切るのに十分だった。



 ボスを倒しても宝箱は出ない。

 ボスが宝を集めていれば別だが。蛾が何を集めると言うのか。

 何もない。

「・・・あれだけ苦労させられて、こんな物なのですわね」

 お嬢様も不満気だった。

 しかたない。低ランク冒険者がランク上げのクエスト目的でも廻っているダンジョンなのだ。めぼしい魔道具なんてそうそう落ちていない。


 ぷんすこしているお嬢様を連れて一度街にもどる。お嬢様と違い、シアはそれほど不満はないようだった。

 面白かった?

「ん。」

 そうか。


 ランク上げ用のクエストの二つ目を受けつつ、シアが拾った透明な貝殻を職員に見てもらう。

 未鑑定品は鑑定カウンターで鑑定料金を払ってみてもらうそうなのだが、これは未鑑定品ではないのでその場で教えてくれるそうだ。

 500G相当の換金用アイテムだった。

 高いのかといえばそこそこ。以前の金銭的価値観だと5000円くらいだ。

 洞窟の地図とほぼ同額である。

 地図高いなぁ

 洞窟に何度ももぐるならいいが、一回きりだと損になる。

 次は建物型のダンジョンに行く予定なので再び地図がいる。

「買う?」

「・・・やめましょう。せっかくのダンジョンなのだから、自分たちで探索したいですわ」

 お嬢様はダンジョンの楽しさを模索し始めたらしい。

 攻略本があれば楽ではある。が、目新しさはなくなってしまう。安全性を犠牲にすることになるが、自分たちで初めて見る土地を進むというのは、いつだってワクワクするものだ。

「ん。わかった」

 シアもそれでいいらしい。

 荷物の中からノートを取り出す。夏休みの宿題用に持ってきたものだ。まっサラサラできれいなのでマッピング用にするらしい。


 おい

「ん?」

 宿題あるんかい

「・・・キノセイ」

 まぁいいけど。宿題の中でモンスター関係の部分だけあとで見せてくれ

「ん。」

 シアはやれと言われると反発しやすい性格である。なのでとりあえず興味のあるとこから埋めていく作戦に出ることにした。

 オレが興味深げに読んでいると気になっていっしょにのぞき込んでくるのがシアである。

 ふふふ戦略どおり・・・。


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