夏休み2
さて、三日遊んで二日だらけてなぜか七日目の朝、二人は覚醒した。
「ダンジョンにいきますわ!」
「はっ!?」
・・・忘れられてなくて良かった。
「・・・・・・、ん。」
というわけで5郷の冒険者施設に行き、近場のダンジョンを聞いた。
低ランク冒険者に開かれているのは二つだけだった。片方は洞窟のみで水場が多い。片方は建物型で広範囲。
お嬢様はDランク冒険者の証しを持っている。
シアは実技課題のおかげでEランクをもらっていた。
ちなみにEランクの証しはモンスター10匹を倒せればもらえるらしい。スライムでもいいらしい。
EからD、DからCにあがるにはちょっと面倒くさいクエストを受けないといけないらしいのでダンジョンついでに受けておく。
一月以内に低ランクモンスター20種からランダムで選ばれた物を10体討伐。これを3回やるとDランクに上がれる。
敵を探す能力や敵に対して有効な装備を整えられるかを加味した結果らしい。
モンスターを知らば百戦あやうからず、ということを低ランクのうちに叩きこんでおこう、ということだ。
シアが当てたのは『モールバタフライ 10匹』バタフライといいつつ蛾のモンスターらしい。
お嬢様は『ハイゴブリン 10匹』だ。ハイゴブリンとはオレがゴブリン戦士と呼んでいたものらしい。ゴブリン戦士はゴブリンと一緒に複数体で行動している。なかなかに嫌らしいチョイスだ。
モールバタフライとは貝を食べる蛾らしい。なので洞窟から攻略することになった。
光る魔道具、食料、ロープ、ダンジョンの簡易な地図を購入した。
大体地図にあるあたりは他の冒険者が探索しているのでめぼしいアイテムはないらしい。ダンジョンが新しく枝分かれすれば新しいモンスターの巣やアイテムが見つかるだろうと言っていた。
ダンジョンは勝手に生えてくるらしい。
すげーなダンジョン。
ただ、ダンジョンは生ものなので枯渇させることもできるらしい。ただし冒険者組合が管理しているダンジョンは冒険者の稼ぎ場であるから、枯渇させることのないように、と説明をうけた。魔素吸収スキルなどはご注意くださいとのことだ。
魔素吸収スキルはないので気にせず、さっくりと二人パーティーで赴く。
ダンジョンである。1階層目には弱いモンスターしかいない。ダンゴムシやムカデ、イモリ、スライム・・・
・・・・・・なつかしい面子である。
シアが目の端で動いたものに反応し、オレを突き出す。
オレの刃先にカマドウマが刺さっていた。
「・・・・・・」
・・・・・・
「・・・いらない。」
ぺっ
捨てられるカマドウマ。良かった、うちの娘はグルメになったようだ。
「このあたりには何もなさそうですわね・・・」
辺りを散策していたお嬢様が顔を上げる。
その行動は既視感がある。お嬢様と同じように、かつてリザードマンが探索していた。
そうか、魔道具を探していたのか。
ということはこの後のことも大体予想できる。
階層を下がるごとに敵が強くなってゆくのだ。
――そして2階層。
ダンゴムシが硬くなった。ムカデが多頭になった。イモリの毒が強くなったモグモグ。そして・・・スライムが大きくなった。
うん。強くなってはいる。
ちょこっとね。
3階層。
ムカデが大きくなった。多頭で大きくなり、ちょっとだけ脅威度が上がった。そしてやっと、お目当ての蛾を発見した。
モールバタフライ
洞窟にちょこちょこある水場の一角に、何か所か海水が流れ込んでいるらしく、ヤドカリやカニが生息している場所があった。モールバタフライはそれらを捕食するために群れになって集まっていた。
「《火矢》!」
お嬢様の先制攻撃でまず、数体を火で燃やす。虫なら火に弱かろう。
火矢3発で7体ほどのモールバタフライを倒した。
その間に群れに近づいていたシアがスキルを使って切り裂いてゆく。風刃と円舞。なんというか、とても良く斬れる。2階層のダンゴムシの方が硬かった。
合計で15体を倒して終了である。討伐数はパーティーで共有されるので、シアが10体を倒さなくてもこれで討伐完了である。
まぁ、あと2回こなさないとランクが上がらないが。
結局このモールバタフライはどんな攻撃をしてきたのだろうか・・・。状態異常とか持ってそう。蛾だし。
安全に耐性を増やせる敵ならメモっときたい。
「ん?」
シアが足をとめた。
モールバタフライを倒した近くの水場の中に、片腕を突っ込んで何かを取り出した。
貝殻だな。
透明な巻貝。
水の中にあったのでほとんど見えなかっただろうに、良く見つけたものだ。
「どうしました?、あら、きれいですわね。魔道具・・・ではなさそうですが」
換金用アイテムかなぁ?。あとで冒険者施設に持って行ってみよう。
「ん。」




