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邪武器の娘  作者: ツインシザー
魔族領
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学校生活4

 お昼休み、彼は幾人かの配下を連れてシアのいる初等部のクラスに現れた。


「ブヒヒッ、初めましてでブヒッ」

 ブヒ蔵こと、ブランヒルグ・オークだった。


 お前この学校だったのかよ・・・

 お嬢様と同じように実家で専属の家庭教師について教わっていると思っていた。


 そんな彼が初等部に何をしにきたのかといえば――勧誘だった。

「初等部の生徒は知っているかな?この学園では夏休み前に実技のテストがあるブヒッ。そのテストは数人で決められた数のモンスターを倒してこなくてはいけないブヒよ。毎年このテストで大けがをするものが出るブヒ。たまに死ぬ生徒もいるブヒ。悲しいブヒね」


 初めて会ったときはこんなブヒブヒ言ってなかった気がしたが。あれは貴族と付き合うために実態を隠してたのか。


「しかーし、おれは人がいいので、おれの配下になるなら助けてやるブヒッ。主は配下を大切にするブヒ。討伐テストでも協力して課題をクリアさせてやるブヒよ。悪くない条件ブヒ、今から配下になる生徒は特におれが優遇してやるので挙手するブヒよっ」


 討伐テスト。そういうものもあるのか。

 テストで大けがを負うくらいなら、と考えてしまう。たしかにブヒ蔵が言い出した条件は悪くないように聞こえるだろう。

 だが”配下”の意味を知らなければ、だ。


 配下は主と戦場を共にする。主が戦場に駆り出されれば、配下も主を助けるために馳せ参じなければならない。

 それをこんな幼少の子供たちに決めろと言う。死ぬかもしれない契約を、まだよくわかっていない時分の子供に結ばせるのだ。


 ひどい青田買いだ。


「やめな!、何やってんだっ」

 フェイ姐が教室のドアを開けて現れる。

「た、ただの勧誘ブヒ。君には関係ないブヒ」

「おまえ、初等部のやつらを巻き込むんじゃねえっ。ぶっころすぞ!」


 ブヒ蔵はヒッと青くなるが、思い直してフェイ姐にくってかかる。

「ブヒッ、ブヒヒッ、やれるものならやってみるブヒ。おれの配下は100人いるんだぞ。勝てると思うならかかってくるブヒッ」

「てめえ・・・吠えたなぁ?」


 フェイ姐の雰囲気が一気に剣呑としてくる。

 一触即発。

 何かあれば即戦闘が起こりそうな空気にクラスの生徒どころか、ブヒ蔵ですら身を硬直させている。


「パパ。どうするの?」

 シアが聞いてきた。

 みんなが硬直する中、掃除用具入れに近づいてきたらしい。シアは威圧無効があったっけ。どう、とは?。

「私、あれ嫌い」

 そうだな。オレもあいつは好きになれない。うちのお嬢様のライバルだし、ブヒ蔵が配下を増やさないようにしようか。


 オレのアドバイスを聞いてシアはトテトテと教室の一番前に移動する。ブヒ蔵の前の位置だ。クラスメイトの方に体を向け宣言する。


「配下には、ならなくていい。討伐テストは私と、フェイ姐と仲間がみんなを助けてあげる。・・・ただしタダじゃない。ちょっとだけお昼の給食をわけてもらうから」

 昼給食の等分は、実は体の大きな種族にはちょっと足りない。逆に人間のような発育が年相応の種族には多いのだ。

 なので、昼が食べきれずに余らせる者にはタダ同然の宣言だった。


「なにっ、何言い出すブヒッ」「おい、シアおまえ、何言い出すんだっ」

 ブヒ蔵とフェイ姐が取り乱している。


「フェイ姐、みんな困ってる」

 確かに以前、困っていたらあたいに言いなと言っていたが、それは親分子分の間でだ。しかしこうしてみるとシアが困っているようにも見えなくもない。


 子分が困っていたら親分が助ける。


「チッ、ああったよ。やりゃいいんだろ。ただしタダじゃないよっ、きちんと給食の分け前はもらうかんな!」

「ブヒィィィッッ!?」


 こうしてフェイ姐のお助け隊が学校に発足したのだった。



 しかしブヒ蔵の行為は一つの魔族社会の定石を踏襲していた。

 数は力である。それまでブヒ蔵はフェイ姐の派閥には手が出せなかった。けれど配下の数を増やすことで、今やフェイ姐に匹敵する勢力になっていた。


 うちのお嬢様は自己の鍛錬に重きをおき、個として強くなることを優先させた。だがブヒ蔵は数を得ることに重きをおき、群として強くなることを優先させた。


 なるほど面白い。

 とはいえ、ブヒ蔵のやったことは学生規約に違反していた。

 初等部での配下の勧誘は禁止である。

 なので後日教師が出張り、初等部で配下の契約をした生徒は契約解除することになった。


 解除できるのか。

 ただ生易しいことではないらしいので、その意味もふくめてブヒ蔵はしばらく謹慎処分となった。


 フェイ姐はしばらくプンスコ怒っていたが、あの場を丸く収めたシアは子分仲間からよくやったとほめられた。

 みんなの負担が増えたことより、あそこでフェイ姐が暴れてブヒ蔵と全面対決になるほうがよっぽど大事おおごとだったらしい。


 子分たちのとりなしもあってフェイ姐の機嫌も良くなってくる。ブヒ蔵の勢力に一泡ふかせてやったのだ。学園を〆るヤンキーとしては面目躍如である。


 けど、良かったのか?、結局人間も助けることになっちゃったけど

「!・・・しまった・・・」

 うむ。

 自分が言ったことはきちんと守るんだぞ。約束を守らない魔族にはけっしてなるな

「・・・はめられた」

 そういう言葉どこで覚えるの

「パパ」

 さもありなん。


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