館にて3
話は少しもどる。
剣術の授業の時だった。
剣術の教師はジョージであり、いったいどうして見えているのかわからないが、眉毛で隠れている目でお嬢様の攻撃をことごとく防いでいる。
「くっ、せいっ、やっ、やっ、・・・んっ、やっ」
お嬢様の鋭い突きをジョージの持つ小剣がいなしてゆく。フェイントや攻撃の速度を変えての緩急織り交ぜた攻撃をだ。
いつものヨボヨボ具合からは想像できない剣の腕だった。
すごいな。スキルなのかね。
回避系のスキルかもしれない。相手の攻撃を逸らすスキル。槍を使うシアにぜひともほしいスキルだ。
というわけで、ちょっと試したいことができた。
シアにコショコショ耳打ち(イメージ)する。
「・・・・・・えー・・・」
スキルのために、心を鬼にするのだ!
「うー・・・」
シアは仕方なく地面の石を拾い、こちらに背中を向けているジョージに全力で投擲した。
キンッ、という音一つ。
ジョージは後ろを振り返ることなく石を剣で払い落し、そのままお嬢様の稽古を続ける。
動揺したのはお嬢様の方だった。
足さばきが乱れ、攻撃に隙ができる。
とんっ、とジョージの突きがお嬢様の肩を突くと、お嬢様はそのまま体勢を崩して尻もちをついた。
「くぅ~っ」
お嬢様がこちらをにらんでくるが、尻もちの原因はお嬢様自身である。我々の責任ではないと主張したい!。
「お嬢様、どんな事態にも落ち着いて対応するようにと教えていたはずですぞ。それを自分の機にするか、お嬢様のように尻もちをつくことになるか。剣の腕だけでは強くなれないことをもっとお考えくだされ」
しかられてやんのハッハー ゴリゴリ などとは決して言うまい。動揺させる原因を作ったのはオレたちだ。ジョージの言葉をオレたちも真摯に受け止めよう。
「・・・たち?」
大体オレです。
「ん。」
ひとしきりお嬢様にお小言を言ったあと、ジョージはこちらに歩いてきた。
「ふむ。シア殿、先ほどの行為はどのような思惑があったのですかな?」
悪びれる様子の無いシアに、何かしらの意図があったのだと推察したのだろう。
「・・・あれは何てスキルなの?」
「私めがお嬢様の剣を払っていたスキルですかな?」
「ん。」
「スキルではありませんぞ。あえて言うのなら研鑽の賜物という所ですな」
プレイヤースキルか。どれだけの技量を積めばそんなことができるんだよ。ヨボヨボのくせにとんでもない武人だ。
「どれ、一手お手合わせしてみますかな?」
声をかけてくれるのはうれしいが腕の程はなぁ・・・。リザードマン流ですゆえ。
「ん。やる」
シアはそう言ってオレを握りなおした。
やるのか。がんばれ。スキルなしでいくんだぞ。
スキルを使ってもいなされる気がするが、万が一ということもある。事故は起こさない方向でいこう。
「準備できております。いつでもいいですぞ」
ジョージは剣を斜め下に向け、右半身をこちらに向けて立っている。
「ん。」
シアは返事と共に地面を蹴り、地を這うように低い姿勢から最速の突きをジョージに放つ。
ジョージは剣の腹でそれを払いのけ、シアと位置を交換する――キンッ
通り過ぎざまにジョージが一撃を狙ってきたようだ。シアはそれをオレの石突でふせいだ。
「ほぉ?」
シアは今度は槍を振り回す。武器が長いアドバンテージを活かして相手の間合いの外から戦うようだ。
が、こちらは2合ほど攻撃を打ち払われて終わった。技量もだが、力自体が負けていたのだ。武器の軌道を乱されて隙を作り、眼前にジョージの剣先を突き付けられてしまう。
「・・・負けた」
「そうですな。手合わせ感謝でございます」
シアの攻撃も決して見切りやすいわけではないのだが、簡単に御されてしまったなぁ。
強いわ。
「シア殿、さっき石突で私の攻撃を防いだのは意図してやったのですかな?」
「ん。来るって気がしたから」
勘のようなものか。シアは野生児だからゴリゴリいたいいたい。
「鋭い感覚をお持ちですな。良いことです。けれどその後の円の動き、それをするにはシア殿の体の大きさ、力の強さが足りておりませんぞ。まだまだ武器に振り回されておられますな」
「・・・ん」
そういやオレはリザードマンのハイリーダー用にサイズをカスタマイズされてたっけ。シアにはどうしても大きいのだ。そもそもオレの生まれは槍じゃなかったために刃先部分も大きくて長い。その分通常の槍より重くなっている。
「身の丈に合った武器を使っても良いとおもいますぞ」
ジョージはシアのために助言をくれる。
オレは、まぁしばらくは別の武器を握ってもいいと思う。風刃の発展スキルのためとか、どのサイズ、どの形状の武器が使いやすいかとか、ためしてみてほしい。
オレは後からでもシアに合った形に変形できるのだしね。
「・・・・・・これでいい」
「・・・おせっかいが過ぎましたな。お許し下され」
「んーん。いい。」
このあと、シアに素振りの日課が増えた。




