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邪武器の娘  作者: ツインシザー
魔族領
30/222

追加:メイドのお仕事4

「ギルギット、スキル使っていい?」

「・・・はい?」

リッテとラッテがゴ○の波に飲まれるのを見送り、シアはギルギットを連れて二階に移動してきた。

二階はまだそれほど奴らの姿が無い。

ちょこちょこ現れるのをオレで突いたり斬ったりしながらギルギットに伺いをたてていた。

「スキル。飛ぶやつ。」

ギルギットは即答せず、難しい顔で返答に悩んだ。

飛ぶスキルとはおそらく剣や槍の風を飛ばすやつだろう。ゴ○ブリを退治するのに便利かもしれないが、かわりに家具や絨毯に大きな傷がつくかもしれない。

おいそれとは許可できない相談だった。

「・・・わかりました。いいでしょう、おやりなさい」

この階には旦那様たち、お嬢様の部屋がある。

廊下が大変なことになろうとも、主人たちの部屋や寝室がゴ○まみれになるよりましだと決意したらしい。ちなみに今、館には旦那様と奥様はいない。地方の視察に出ているので惨状を目撃せずすんで良かった。が、お嬢様は部屋で教師と習い事の最中である。不味いことだった。

そんなこともあり、ギルギットは主人の安心できる環境を厳守するために、シアにスキルを使うことを許可したのである。


許可を得たオレたちは階段を登ってくるゴ○に《風刃》を放っていた。

「《風刃(スラッシュ)》っ」

《風刃》っ

ザクザク

「《風刃(スラッシュ)》っ」

《風刃》っ

ザクザク

《風刃》を撃った後はクールタイムがあるので連続して放つことができない。

だからオレを振り回して斬ったり刺したりして数を減らしていく。けれどーー


シア、右上抜けるぞっ

「んっ。」

左飛んでるっ

「つっ」

二匹のがしたな。気にせず来るやつを倒そう

「ん。」


抜けたゴ○は箒を持ったギルギットがキャーキャー言いながら叩いていた。

腰が引けているので効果は薄いが何度も叩くことで息の根を止めていた。

しかし数が増えてくるとそれもままならなくなる。

少しずつ後退することでなんとか踏ん張っているが瓦解するのは間もなくだろう。


「ん?」

なんだあれ?

キラリと光る光沢を持ったアレがいた気がする。

「あ、あれはっ、ゴ、ゴールデンローチです!」

「ゴールデンローチ?」

「ローチの親玉ですよ、アレを始末すればこのローチたちも逃げ出すはずです!」

ギルギットはシアにアレを倒せとせっついていた。

ゴ○の群れの中でキラリキラリと光る親玉は、未だ手の届かない階段の途中にいる。

・・・中に入って倒してこいってことかね。オレはごめんだが

「・・・シアもやだ。」

流石のシアでもあのワサワサしたとこには入りたくないらしい。


「しかたありませんね・・・はいっ!」

ギルギットは腰から白い固形剤を取り出し、端に火をつけて階下に放り投げた。

・・・そういやあったなぁ。ああいうふうに使うのか。

1個も使ってないのでシアの腰にはまんま残されていた。

ギルギットに使ってもらった方がいいな。

「・・・シアもやりたい。」

そう言うと、腰の固形剤を手に取りギルギットに火を着けてもらう。

ポイ、と階段の上から投げるとカンコン音を鳴らしながら落ちて行った。

「・・・んふっ」

楽しそうで何よりである。



投下された固形型殺虫剤はぷしう~と白い煙りを吹きはじめる。

煙りに包まれたゴ○は一瞬動きを止めたあと、猛烈な速度で煙りから逃げはじめる。


「《風刃(スラッシュ)》っ」

シアの《風刃》で階段を登ろうとした多くの黒いのが階下へと叩き落とされる。

その中から金色に輝くゴ○が飛びあがった。

シア!

「んっ。」

《風刃》っ!

オレの刃先から放たれる風の刃の下を掻い潜り、シアのとっさの攻撃も避けてそいつはお嬢様の部屋に走る。

「シア女史、アレを倒しなさいっ。主を守るのです!」

シアの代わりにと震えながら箒をかまえる。

主を守れ

実にわかりやすく、そしてシアに足りていない配下としての有り様だった。

「んっ。」

ギルギットに後をまかせ、シアはゴールデンなアレを追いかける。

後ろから突いたり斬ったりをするが背中に目がついているかのように避けられてしまう。

普通の攻撃は当たらないと考えたほうがいいようだ。

「なら、スキルでーーっ」

「何事ですかな?、騒々しいようですが」

お嬢様の部屋の扉が開き執事長のジョージが廊下に頭をのぞかせた。

「ジョージ、それっ。」

「はい?」

振り返るジョージの足元にアレがいる。

やつはジョージに警戒して動きを止めていたが、ジョージが気づいていないとみるやスッと動いた。

スッと、ジョージを登りはじめ執事服の左にとまる。

「うごかないで。」

シアの横なぎがゴ○を的確に狙う。

あたるーー!

「なんですかな?」

サッとよけた。


ヒュン サッ

ヒュン サッ

ヒュン サッ


「・・・・・・」

ゴ○は自分が動かなくても避けてくれることに気がついたのか、ジョージの服の上でのんびり羽根やすめしている。

あのやろう・・・シア、ジョージごと叩きつぶしていいぞっ

「・・・!」

しかしジョージの感の良さは以前手合わせした時にわかっている。

もうろくしているくせに、攻撃がまったく当たらないのだ。

今もシアの攻撃を避け続けている。

ぐぬぬ、なんとかしないと・・・!

はやる気持ちとは裏腹に、どれだけオレを

振り回しても当たる気配がない。


後方から悲鳴があがる。

黒い波が蠢くのが見える。

ギルギットがやられたか、次はオレたちの番だろう。

・・・シア、ジョージに攻撃はあたらない。けど、罠を設置しておくことはできるぞ

「!」

ギルギットが持たせてくれたあれがまだ残っている。

「わかった、やってみる。」

シアは今までより深く身を沈めながらオレをかまえた。



シアはオレを高めに振るう。一撃、二撃。

ジョージはそれを首を傾けるようにして避けた。

次に大振りで胴の位置を横なぎにする。

「ほっ」

ジョージは腹を引っ込めながら、一歩、右足を下げようとしてーーグラリと体勢を崩した。

視力が斜め下全開のジョージは置かれていた物に気付けない。

シアが踏み込んだ。固形剤をおもいきり踏んで右に傾いたジョージをシアが下から狙う。

最速の刺突

シアが見せた、今までで最も速い一閃。

「ほほう!?」

それはジョージの両の掌で挟まれ、押さえ込まれていた。

ーーシア、いけ、気合いを込めて

「なんーー」

押さえ込まれる前にオレを手放していたシアは、腰から予備武器(ハリセン)を引き抜き

「ーーやねんっ」

ジョージごと、金のローチをはたき倒した!

あ、微妙にちがうぞ

でやねん、だ

「でや?」

そう。でやねん

「でやねん。」

うむ。ハリセンは攻撃じゃないからな。死ぬことはあり得ない

シアに叩かれゲホゲホ咳をしながら床に転がるジョージを見下ろしながら、シアはハリセンを素振りした。

「でやねん。」

ん?、・・・まぁいいか。

ジョージの胸には金色に光るいろいろな残骸が、キラキラと輝きながら張り付いていた。



ゴールデンなローチを倒すと、それまで集まっていたゴ○たちは波が引いたようにサーツと姿を消していった。

「ん。せいばいっ。」

ひと仕事終えたいい笑顔でシアが宣言する。

ゴ○との領土争いは終わったけど、争いで撒いた薬品やスキルで傷つけた廊下の後始末がのこっている。

なのでメイドの仕事はここからが始まりなのだ。

しかし、よくとっさにあれだけの攻撃ができたものだ。

回避に気をおいていたジョージを、固形剤で転ばせるってとこは思い付いた。

けれども実際は転ばず、その後のシアの攻撃さえ避けてしまった。

決定的な一撃を避けられーーなのに、シアはわかっていたように対処してみせたのである。

天才かっ

流石はオレのシアだ。

「んふー♪」



さて、ひとしきりシアを褒めたあとは館の清掃があるのだが・・・一番はじめにしたのは人的被害の回復だった。

咳をしていたジョージはまぁ大丈夫だろうとほうっておいて、青い顔で泡吹いていたギルギットの額に濡れタオルをのせる。

呼吸が落ち着いてきたのを確認したら次は下だ。

シアが警戒しながら階段の下をのぞいていると意識をとりもどしたギルギットが箒をにぎりながらやってきた。

「シア女史、下はどうですか?」

「・・・たぶん平気」

階段の踊り場に飾ってある鎧やツボを傾けたりして奴らがいないことを確かめながら進む。

一階におりると廊下の真ん中にメイドが二人、並んで倒れていた。

「リッテとラッテですね。二人とも意識がないようですが、濡れタオルをのせておきましょう」

ちょうど風呂場のそばに倒れていたので風呂場で濡れタオルをつくり、二人の額にのせる。

「ふぅ。」

あとは放置でいいだろう。ギルギットと同じようにそのうち目を覚ますはずだ。

「・・・シア女史。聞きたいのですが、二人がアレに飲み込まれる前に言っていたことを覚えていますか?」

「?」

「いえ、言ってはいなかったわね。私がやったのは誰か、と聞いたらこの二人があなたを指差したのです」

風呂場を煙で真っ白にしたときだな。

自分たちでやったのをシアのせいにしようとしたのだ。

言ってやれシア、二人が固形剤を排水口に投げ入れて火をつけたって

「ん。二人がつけた。」

「・・・くわしく説明なさい」

ダメ出しがなされた。

これにはオレもにっこり、もっと指導してやってくれと応援したい。


頑張って説明をするとギルギットは「やはりそうですか」とため息をついた。

二人がいたずら?を画策したことはわかっているらしい。

「後でこってりしぼっておきましょう」

にっこり怖い笑顔だった。

自業自得なのでいいきみだが、なぜシアの足を

引っ張るようなことをするのかがわからなかった。

二人にはそこまで迷惑をかけていないはずである。

「二人はあなたがうらやましいのでしょう。お嬢様の配下になったあなたが。この二人は昔、お嬢様に救われましたから」

・・・・・・

なら、配下にしてやればよかったのに。そう思わなくもない。

けれどお嬢様は二人を配下にはしなかった。二人が戦闘にむいたステータスをしていないのか、それとも別の理由かはわからないが、『配下として選ばれなかった』ただそれが事実だった。


シアは今回配下としてお嬢様を守れた。

十分な活躍だったと思う。

「ん。」

配下として少なからず自信を得られたようだ。




「ジョージ、胸に何かついていますわ。気色悪いですわよ」

「おお、何でしたかな?、輝いておりますな。今日はバッヂの類いは着けておらぬはずですぞ」

「胸です胸。自分でみて判断なさいな」

「おそらく妻が勝手につけたものでしょう。この勲章に恥じぬ働きをしろと発破をかけているのでしょうな」

「はっぱでなくこっぱ微塵になっていますわよ」

「どうもこの勲章に込められた名誉や想いが汲み取られておらぬ様子。お嬢様、それではいけませんぞ、さぁ、上に立つ者としてしかと感じ取られるがよいですぞ!」

「ぎゃ、ぎゃあ!?近寄らないでですわっもうろくジョージっ」

「さぁ!さぁ!」

「にぎゃーっ!」


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