西へ
シアの歩みは遅い。
あれから三日かけて説得したのだが、それでも気分が乗らないようだ。
わかっている。人はシアの大切なものを奪った。それはどれだけ時間をかけようとも消えることはない。
それにオレも、消えなくていいと思っている。
――復讐心
それはシアを育てる一番の燃料になっている。
人間を殺すために、人間にスキルを教わる。
矛盾である。
そんな矛盾を抱えてもやらなければいけないのか。
いまだに答えは出ない。
でも、
でもだ。
復讐を糧にして強く育ってほしいと思う一方、人間の一人だったオレとして言わせてもらうのならば、シアには人間の弱さを知ってほしいと思う。
オレが弱かったように、間違えない人間はいないのだから。
心通わせられる人間だって必ず、いるのだから。
迷子になった。
来た道を戻ればいいと思っていたが、3年も前のこと。覚えていなかった。
今はどうなっているのか、リザードマンの集落に帰ってみようとも話していた。
行けども行けども見覚えのある地形に出会わない。
北の方に白い雪に覆われた山脈が見えるので、そこまで大きくは間違っていないはずなのだ。あの山々は集落にいたころから北にあった。
というか・・・街道一つ見つからない。人ってもしかして少ないのか・・・?。
歩けども、歩けども、草と林と魔物と大自然しかない。
ずっと西に歩いて12日目。
不安で方角を変えようかと思い始めたころ、ようやく人に出会った。
というか・・・ほとんど魔物に殺されていた。
それは何かおかしな状態だった。ボロボロの服と剣を持って死んでいた。荷物はない。
人だけではない、獣人や、あともしかすると魔族のような種族もいるように見える。
それがみんな同じような格好で死んでいた。一人だったり複数人だったりしたが、どれも強い力で体の一部を破壊されている。
なんだこれ、と見ているとなるほど。サイだ。頭が二つあるサイがシアめがけて突撃してきている。
大きな巨体で人よりもはやい速度で突撃されるのだ。そりゃどこにぶつかっても大ダメージだわな。
こわっ
サイこわっ。
なんて実際にはあまり思っていない。野生の動物みたいなのはリザードマンの集落にいたころから狩りの対象だった。
すでに野生児を極めたシアの敵ではない。
スキルを使うこともなくサイを突き殺していく。
始め一匹いた双頭のサイは後から増え、合計で4頭現れたが程なくそれも倒し終える。
・・・・・・何だろうなこれ。
「シアたちみたいに、逃げてきた?」
サイが、ではなく殺されている死体がってことだろう。
着の身着のまま逃げてきたのかね。でもそれだったら武器よりも荷物持ってそうだけど・・・。




