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邪武器の娘  作者: ツインシザー
リザード集落
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家族3

 18歳まではそれなりに学生をしていた。

 高校の部活動ではバドミントン部だったが、あまり行かなかった。ちょうどそのころにはネットの対戦オンラインゲームが主流で、ゲーム内のギルド仲間と他国の陣地をひっかきまわしに行っていた。


 高校を卒業して、家から二駅の所にある教育系の大学に進学した。

 教師になりたい、とかではなかった。母が教師をしていたから一応興味はあったが、理系より文系が得意という程度の理由だった。このころ一番なりたかったのはウェブデザイナーかな。急速にPCが発展していてオレもその勢いにのまれていた。


 大学に行ってはいたが、やっぱり家ではネットゲームで遊んでいた。キャラを作ってRPGをするタイプのやつだ。このあたりからオタク知識を吸収していったころだ。


 そして20才の時、世界異変がおこった。まぁはじめは少しずつな。なんだか衛星からの映像と地上からの映像に齟齬があるとかいう話題が最初だった気がする。


 そういったちょこちょこ異変を報道するのを横目に、オレは就職活動を失敗してた。

 そりゃそうだ。変な報道ばかりで将来の展望なんてそうそう描けやしない。意欲的でもない学生なんて企業も採用してくれない。オレはそのまま卒業して、学生時代にやっていたコンビニのバイトをそのまま続けていた。


 恋人もいない。目的もない。金もない。まぁゲームの方ではそこそこ名を知られるプレイヤーになっていたが。

 そういや前にやっていた対戦ゲーム、他国の人間とも戦えるゲームだったんだが、いつの間にか他国の人間とのデータ速度に大きな差が出てくるようになって運営が終了したらしい。


 とうとう世界の異変が国ごとのレベルまで来たってんで驚いた気がするな。


 確か28歳の時かな。バイトもなくなった。首になったわけじゃない。仕事場が閉店したんだ。

 大きな施設を作るんだとかでそのあたりの土地を国が無理やり接収したんだ。それに店も巻き込まれた。

 異変に対抗するためだってさ。でもそんなことは知ったこっちゃない。

 こっちはそのせいで仕事をなくした。


 異変はだんだんと世界をおかしくしていた。そのせいで就職先もみつかりやしない。まぁ近くで大規模な建築作業があるんだからそれに混ざってもよかったんだろうけど、オレは家でゲームしていることを選んだ。

 ありあまった、けれどさしせまった時間の浪費と、いろいろな恐怖から現実逃避できる。


 オレの家族は無気力になったオレに対して黙認してくれていたな。余った時間を好きに使ったらいいってことで。オレは親の用意してくれた環境によりかかって食いつぶしていくだけだった。


 母は最後まで教師をやめなかった。


 父は最後には店の酒を全部無料で提供してたな。終わり一か月前くらいはずっと店前で酒盛りしてた。

 オレは家に引きこもってPCのネットから配信されてる世界の終わりの映像を食い入るように見てた。たぶん世界の終焉に心が囚われてた。

 だってこんなことそうそうないんだぜ。ネットの中じゃずっとお祭り騒ぎだった。オレもその勢いに飲まれてた。

 オレが不幸なのは終焉のせいだ。こんな世界終わってしまえばいい。みんな等しく不幸になれ。オレといっしょにリセットされちまえ、ってな。


 けれどな、オレの親は違ったんだ。


 終焉の先を見てた。

 親は生き残るために、コールドスリープの資格募集に応募してたんだ。たぶん教師をしてた母の応募枠だな。そういった有用な公務員には優先的に応募枠があったんだ。

 その枠は一人分が当たった。


 家族で一人だけ。


 オレは興味なかった。コールドスリープなんかでこの終焉は逃れられないと思ってた。だってネットでそう言っていたからな。無駄なことしているなーくらいにしか思ってなかった。

 けどな、親がオレの部屋のドアをたたいて、神妙な顔して言うのさ。


「お前が行け」ってさ。

 なんでだよって思った。

 母が当てたんだから母が行けって。一番人に貢献している母が行けって思うだろ。だって教師だぞ。もし終焉の後の世界があるなら、役に立つ人間じゃないか。


 でもオレに行けってさ。

 なら父だっていい。酒屋をしてたおかげで人脈が多かった。近所でワイワイいつもたのしそうにしてた。オレはそんな父が好きだった。だから、父が行けばいいとも言った。


 でも行けって。


 オレに行けって。

 オレは泣いてた。親も泣いてたと思う。

 オレは胸が詰まって何も言えなくなってた。親なのに、なんだよこいつら、すげーじゃねーかってさ。親って、すげーじゃねーかってさ。かなわないって思った。

 オレが先に行かなきゃ、この二人は絶対後からコールドスリープには入らないってわかった。


 オレはさ、子供だったんだ。いい年して、まだ子供だった。

 そうしてオレは一人だけ装置に入った。オレは”生きる”目的で入った。


 生きて、・・・生きてもしできるなら、何かのために生きようときめて。

 父と母のように、これってもののために。


 そしてシアに出会ったんだ。


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