洞窟探索1
件の洞窟に到着し、第1層の攻略が始まった。
ここは変わらない。10数年前のままの洞窟だった。
いるのは魔物がスライムのみ。あとは虫か。ダンゴムシ、イモリ、ムカデにカマドウマ。
この階層は戦うことなく階段を見つけて通過した。
第2層。
植物の魔物が生い茂る密林のような場所だ。洞窟のそこかしこに蔓を伸ばし、蔓に触れた者を捕獲する。そんな魔物の蔓を切断しながら進むと時折、紫の霧を吹く魔物に出くわす。あれはおそらく毒か何かだろう。魔術師が二人いるこのパーティーには動かない的でしかない。
第3層。
おもちゃの兵隊が闊歩する、おもちゃ箱みたいな階層だった。
人間の膝くらいしかない兵隊だったけれど、その装備はいろいろだった。旗のついた槍、剣、ハルバード、鎖付きハンマー、それから鉄球を打ち出す大砲のような物まで。
それらが隊列を組んで襲ってくるのだ。・・・まぁ、数は怖いがリーチの差はいかんともしがたい。さくさく蹴散らして探索していく。
第4層。おそらくは中層。
そろそろ警戒しながら進んだ方がいい階層になる。
ここにいるのはラミアだ。上半身が人の女の姿をし、下半身がヘビ。そして何より魅了攻撃を持っている。
この魅了攻撃にかかるとラミアを攻撃せず、むしろラミアを守るようになる。
2度ほどシアが魅了をかけられたが、すぐにエステラとディーアの魔術が、かけたラミアを退治してくれた。
そしてもう一つのパーティーとの合流時・・・擦り傷やかすり傷だらけなのにとても満足そうな男どもの集団があった。
うちの女性陣から生ゴミを見る眼でみつめられていた。
第5層。
ケンタウロスと空飛ぶ火の玉のいる階層だ。
矢と火球が飛んでくる危険な場所だったが、シアの無魔術《魔素喰い》と風魔術《爆風》でそれらは無力化できている。
こちらのパーティーは順調だが、あちらはどうだろうか。遠距離攻撃できるのがシシールの弓しかなかったはずだけど・・・。5階層に入る前にパーティーを組みなおすべきだったかもしれない。エステラかディーアが一時的に入ればバランスは良かったと思う。
階層攻略の途中で会うことがあったら提案してみよう。
という思いとは裏腹に、彼らに会ったのは階層をほとんど攻略し終えたあたりだった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
大分すすけていた。
そして今更だが、この2パーティーの弱点もわかってきた。
6層に行く前に少し長めの休憩をとることになった。
各自が携帯している水と、エステラに持たせていた干した果物をみんなに配る。
こういったちょこっと口を楽しませるものを持ってくるのは、冒険者経験が長いシアやエステラ、ディーアくらいだった。
・・・・・・そう。
他のメンバーは冒険者の経験が無いのだ。
せいぜい若いころ修行の旅に出ていたラザン将軍と外見より人生経験が長いシシールが知識として聞いたことがあるくらいで、王子、クラウニード、ジェフリーの3人は冒険者のことをよく知らないのだ。
「あなた方・・・ダンジョンを進むペースの配分が下手なのではないかしら・・・」
「・・・そうですね。こんなに何度も小人数での戦闘が続くことがありませんでしたから。これほど気を抜けないものだとは、予想できませんでした」
冒険者でもダンジョン探索をメインにする者は多くない。
依頼討伐や護衛任務に比べると、生存率が大分低くなるからだ。けれど報酬のうま味があるのはやはりダンジョン探索だ。危険だが当たれば大きいのがダンジョンである。
シアはエステラを連れてダンジョンばかりもぐっていた。ディーアも祖父やグラフェン・テスラーに連れまわされてダンジョンに潜っていた。
だから3人はダンジョンに慣れている。
「うーん、少し早いですが次の階層からはいっしょに行動した方がいいかしら」
「ん。そうする」
「・・・わかりました。よろしくお願いします」
「く、すまないダリウス様。オレたちがふがいないばかりに」
クラウニードが王子に頭を下げている。
別に大きな失敗があったわけではない。安全のために少し早いがいっしょに行動するというだけだ。
「時間はあるんですから、今のうちにうまい立ち回りを彼女たちに教えてもらいましょう」
「・・・そうする。すまないが、よろしくたのむ」
「ん。」
そんなこんなで次の階層から共に攻略することになった。
このメンバーの中には回復役がいない。
怪我をしたら各自が持ち込んでいる治癒ポーションを使って治すしかない。
それもあって分かれて行動しているとどうしても別パーティーのことが心配になってしまう。
そういった意味でもいっしょに動けるのはありがたかった。
第6層。
かつてここは、リザードマンたちが敗走したところだ。その武器もスキルも戦闘技術も、何もかもがかなわなかった。
技術は強靭な肉体の前には無力だった。
ミノタウロス――牛の頭と力強い筋肉を持った、危険度の高い魔物だ。
「クラウニー!」
「おうっ」
ミノを一体抑えているジェフリーの脇を通り抜けてクラウニードが通路をかける。奥からやって来るミノに刃を躍らせるが、その攻撃はミノの持つ柄の長い大斧に防がれてしまう。けれどクラウニードの攻撃は一太刀だけでは止まらない。二太刀、三太刀、やむことなく振るわれる刃にミノはついて行けず、その体を己の血で赤く染める。
あっちはなんとかなりそうだ。
ジェフリーが抑えているミノは王子が小剣で丁寧に相手している。盾に守られながらも盾の後ろから敵の隙をついて相手に致命傷を負わせていく。堅実で嫌らしい戦法だった。
シアたちはそちらとは別の通路のミノを処理していた。
ここは洞窟の交差路。3方向の道があるのだが、その3方どれからもミノがやってきて大変なのである。
本来であれば通路を少し下がって一方向のミノだけ相手にしたい所だったが・・・、なぜか後ろの通路は地面が滑りやすくなっているのだ。
トラップではなさそうだが、戦いにくい。そんなところで戦うよりは、まだ交差路で戦ったほうが事故はおきないだろう。
右の通路はラザン将軍とディーアが、正面をシアとエステラで対処している。シシールは中央に陣取って足りないところの補助だ。
エステラの《影縛り》がミノの動きをにぶらせる。シアはひと振り目を槍のまま、ミノに防がせ、二振り目を蛇腹槍に変じてさっきと同じように武器で防ごうとしたその武器ごと、ミノを切り裂いていく。
これでシアは3匹目を倒したことになる。
「はっはっは、これは頼もしいな。どうれ、わしもやってみるか」
ラザン将軍がシアを真似して一撃目を相手に防がせる。そして二撃目・・・振りかぶった斧と共にスキルが放たれた。
「《重剛剣》っ」
斧で受けたミノに重く、重力がかかる。その上にラザン将軍の力任せの押し込みがかかり、なんとか受けていたミノの腕力は限界を迎え・・・押し負けた。
下に切り下ろされた斧はミノの体を大きく傷つけていた。
「ふん、こうじゃな」
いや、それはたぶん違う・・・。
とても力任せの戦法だった。
「ひやっとしましたが、何とかなるものですね」
やってきたミノを倒しきって辺りを警戒しながら、各自の被害状況を報告しあった。
怪我をした者はいない。
ミノ自体はBランクの魔物なのだ。腕に覚えのある者が2,3人集まれば十分処理できる。
「けれど、パーティーを一つにしておいて良かったですね。あの人数を1パーティでとなると、少し骨が折れる数でした」
ディーアの言う通り、ミノタウロスは戦闘音を聞いて仲間を助けるためだろう、どんどん集まってきた。
全部で8匹。
出会い方によってはこちらに死者が出てもおかしくない数だ。
「ん。けど、おかげで王子が戦えるってわかった」
「・・・・・・私は一般的なおかざり貴族とは違いますからね」
少し悲しそうな顔で王子が答えた。
今までどういう目で見られていたか、理解してしまったからだろう。
シアも無体なことをするものだ(他人事)
「・・・・・・」
シアに冷ややかな目で見つめられつつ、十分な休憩をとった。
「みんな、いけるな。これからは戦う場所、人数、ローテーションを意識して行こう。全体の指示は私が出します。ただ、怪我や疲労はわからないからその都度おしえてください」
みんなは王子の言葉に頷きを返す。
王子が指揮官として慣れているのはいつもの戦闘でわかっている。
人数が多くなると戦闘中でもあぶれてしまう人間もでてくるから、管理してくれる者がいると助かるな。
みんなは気を引き締めてみ探索エリアを進んでいくのだった。
6層はこのパーティーでの戦闘に、いい訓練場だった。入替えや連携の順番、各々のスキルの攻撃範囲など、大分把握できたように思う。特に攻撃範囲が広いシアとか、シアとかの戦い方をわかってもらえると、味方への巻き込みがなくなるのでありがたい。
・・・やたら攻撃範囲が広いせいで連携に組み込まれず、一人で先行していい、と言われてしまっていたが。
そっちの方が窮屈ではないのでシアも喜んでいた。
先行するシアを補助するのはエステラの役目になった。
《影縛り》。暗い洞窟内でも敵を呼び寄せることなく使用でき、しかもシアの”闇無効”のおかげでシアを巻き込んでも気にしなくていいスキル。これが非常に役に立った。
二体の敵を片方だけ足止めして一体づつの戦闘にもちこむことができる。
仲間への寄与がすっごく高いスキルだ。
「エステラ様、右をっ!」
「わかってますわ、《影縛り》っ」
第7層。
水と氷に覆われた階層だ。
洞窟のあちこちに水たまりのような水場がいくつもある。そこから次々に黒い姿の鳥が現れ、パーティーを襲って来た。
その魔物は”氷鳥族”と呼ばれる、寒い場所にしか生息していない魔物だった。
氷鳥族・・・ペンギンだな。
動きの速いペンギンだった。
まるで水の中を泳ぐように、洞窟を跳びまわる。かなりやっかいな魔物だ。
一同はできるだけ死角を補うように円形になりながらペンギンに対処している。
ペンギンの素早い動きに翻弄され、ジェフリーとラザン将軍は守り一辺倒になっていた。シアも突出することなく槍形状のまま戦っている。
ここでも役に立っているのがエステラの《影縛り》だった。一匹でもペンギンを束縛できれば後ろのペンギンの移動できる道を制限できる。渋滞ができる。そして複数が通路に団子状に固まるようならそこにディーアが火球魔術を叩きこむ。
そうして少しづつ魔物の数を削りながら、階層を進んでいくのだ。
「はぁ、はぁ、疲れましたわ…」
便利なせいか、エステラが酷使されていた。そろそろ魔素が心許ない。今はシアの特殊輝石も借りて魔素回復に励んでいた。
「肉ですわ・・・肉が切りたいですわ」
道中も倒したペンギンを包丁で切り裂いて魔素吸収していたが、全然足りていないらしい。
7層に入ってからは包丁を突き立てるモノを常に探し求めている感じだった。
「・・・・・・エステラ様が、不穏ではないでしょうか」
少し引き気味に王子が問いかけてきた。
「ん。これが正しいエステラ」
王子たちはエステラの包丁のことを知らない。なので肉を切りたがっているのを、本当に猟奇趣味があるのだと勘違いしてしまう。
シアの頭頂部にエステラのチョップが落ちた。
「正しくありませんわよっ。・・・まったく。それはこの《魔素吸収》のついた包丁のせいですわ。この包丁を装備して攻撃すれば相手から魔素を奪えます。だから私は倒した相手であっても、魔素のために包丁を突き立ててるんですわっ」
「そ、そうでしたか・・・」
理由はそれでも『肉が切りたい』という猟奇的な発言のフォローにはなっていない。
残念な子だ
エスエラは少しだけみんなに距離をとられながら、7層を進んでいく。
ペンギンは厄介な相手だったが、ミノタウロスに比べて体格も小さく、攻撃力自体は高くない。大怪我をすることもなく下への階段の前に到着することができた。
すぐ下の様子を見に行くのではなく、ここで休憩になった。
「それで、ダリウス王子、この後はどうするつもりなのだ?」
ラザン将軍はマップ作製に忙しい王子に声を掛けた。各層のマップはシシールと王子で作っていた。この二人がフリーになることが多いのと、何より図がきれいだからだ。
王子は描いていた紙から顔をあげ、一同の様子を確認する。
「みんなの消耗具合を考えると、次の階層を攻略するのはやめておいた方がよさそうですね。次がボス部屋という可能性もまったくないわけじゃないですが、確認だけして一度帰りましょう」
みんなが頷く。
マップさえできてしまえば次回からは最短距離で進むことができる。消耗を抑えた状態でこの下の層も攻略できるのだから、今無理して進む必要はないのだ。
第8層。
7層とは変わってまた洞窟・・・ではある。氷に覆われていたのとは違い、側面や床がたいらに均されている。上の階から滴り落ちてくる水滴も床の側溝に流れて処理されている。
ここの住人は魔物でありながら意識が高いらしい。
ジェフリーとラザン将軍二人を先頭にしながらゆっくりと前進する。あくまでもどんな敵がいるのか確認するだけで、攻略するためではないので慎重なのだ。
というか、道幅が広いな。上の階でも幅が広いところはあったけれど、この階層はどこもこの幅で統一されてそうな雰囲気がある。
「いたよ、・・・武装をしている」
ジェフリーが警戒を強める。この通路を作るような相手だ。知能も高いのだろう、武装も当然に思える。
ガシャン、ガシャンと鎧を響かせながら、一体の魔物がこちらへとやってきた。
鎧に覆われた巨大な体躯、幅広な大剣と大きな盾、そしてトカゲの親玉のような頭とウロコに覆われたシッポ。
「りゅ、竜騎兵・・・?」
竜騎兵は以前見たことがある。シアが槍での打ち合いの訓練に選んだのが竜騎兵だった。
けれど、以前見た竜騎兵よりも背が高い気がする。あと少しだけあちこちがとがっていて、体色がはっきりしているような。
まるで、リザードマンがコモンリザードマンではなく、ハイリザードマンになったような・・・。
「来るぞっ」
竜騎兵は小走りにかけてきたと思うと、ジェフリーに持っていた大剣を振り下ろした。
ガキィンと音がしてジェフリーが大きく後退した。その横からラザン将軍が斧を振りかぶり襲い掛かるが、竜騎兵の盾に攻撃を逸らされてしまう。
「くっ、強いぞ。これは竜騎兵ではない。進化種の竜騎士かもしれぬっ」
より強くなったということか。やっかいな。
ジェフリーが守り、ラザン将軍が攻める。けれど竜騎士はまったくひるむことなく、むしろ二人に競り勝っている。
エステラとディーアが魔術で竜騎士を攻撃しはじめると、流石に防ぎきれず傷ついていく。不利をさとった竜騎士は盾をこちらに投げ捨てると、踵を返して逃げた。
「・・・逃げましたわね」
「・・・こちらも今のうちに撤退しよう。仲間を呼ばれては大変そうだ」
一同が来た道を引き返し、階段を上がる。ここまでは一本道だったのでわき道から襲撃されることもなく、安全に階層を越えることができた。
7層にきて少しだけほっとした雰囲気が流れる。流石に竜騎士は強かったらしく、ジェフリーの盾の正面がかなり削られていた。あんなのと何度もやりあっていたら盾が壊れていただろう。次回は予備の盾もいりそうだ。
「・・・・・・」
シアだけは後ろを振り返り、階段の方を見ていた。
どうした、シア。まさか腕試ししたいとか言い出さないでくれよ。
「・・・・・・来る」
何が・・・って、まさか
シアがオレを構え、みんなに離れるように声を掛ける。
みんながシアの言っていることの意味を理解してその場を離れようとしたとき、階段から音を立てて竜騎士が上がってきた。
――3匹も。
やばい、みんなの準備ができていないっ
それはシアを認識すると、シアに対して武器を振りかぶり・・・シアが持ち上げた武器の先が一匹の竜騎士を指し示したのを理解して動きを止めた。
決闘の申し込み。
竜騎兵は一対一の戦いであれば、一切手を出さずにその戦いを見守るという矜持を持った種族である。なら、その進化した竜騎士も同じだ。
決闘を申し込まれたなら嬉々として受けるのが当然である。
「し、シア様っ」
「・・・手だししないで。」
王子たちがシアを心配する中、シアに選ばれた相手が前に出て戦いの準備を終えたことを鳴き声で教えてくれる。
こちらもみんなが下がり、戦えるだけの広さが確保できたのをシアが確認した後――シアは戦闘を開始した。
シアは振りかぶり、蛇腹槍を叩きつける。竜騎士は盾を構えて蛇腹槍を受ける。盾はガリガリと音を立てて二つに切断された。
使い物にならなくなった盾を投げ捨て、竜騎士が突撃してきた。
シアの二撃目を剣で払いながら避ける。三撃目は左腕を犠牲にすることでしのぐ。ようやくシアをその武器の射程にとらえたとき、シアが魔術を使った。
「《爆風》っ」
それはシアと竜騎士の真ん中で強風を発生させる。竜騎士は強風に抗いながら剣を振り切った。真上から、真下へと。
風に吹かれて後ろに飛ばされた、さっきまでシアがいた場所を。
シアは後ろに跳びながら蛇腹槍を振り切っていた。真横に。
竜騎士の両腕が地面に落ちた、竜騎士が驚いた表情で体を引いた。その勢いのまま、真横に腹で切断された上半身がずれ、後ろへと倒れた。
「ん。一匹目」
一体目を屠ったシアが、次の獲物を指名する。
選ばれた竜騎士は表情を険しくしながら、シアと戦うために武器をかかげた。
今度は竜騎士から先に動いた。
シアの斬撃を大剣と盾を用いて丁寧にさばきつつ、段々とシアとの間合いを狭める。ようやくシアまで半分という所で、シアはスキルを叩きつけた。
「《旋風刃》」
今までのように大剣と盾でさばくつもりだった竜騎士を鋭い刃が襲う。盾は壊れ、剣も半ばに大きな損傷を受けていた。シアは続けざまに《風刃》を放つと、竜騎士の武器を破壊した。
獲物が壊れてしまった竜騎士は、半分になった大剣で戦うことを選ばずに負けを認めた。
シアはそれを受け入れ、二体目との戦いを終える。
「・・・もう一匹も、やる?」
こちらの言葉がわかるわけではないだろうが、最後の一体は首を振り、生き残った一体を連れて階段を下りて行った。
「・・・・・・ふぅ、これでやっと、安全が確保できるようになりましたか。シア様がとっさに竜騎士に勝負を挑んでくれたおかげですね」
「一人で竜騎士を下すか・・・火竜のことといい、”龍”とは恐ろしいものだ。もしかするとお前さんだけで下層を攻略できてしまうのではないか?」
ラザン将軍は期待するような眼をシアに向ける。
おそらく半分は冗談だろう。実際にやってみろ、ということではないはずだ。しかし・・・
おそらく、できなくはない。
シアと相性の悪い魔物やSランク魔物が複数いるということでなければ、シアを阻める者はなさそうだ。
「・・・どこまで下があるのかわからないから」
あと1階層か2階層くらいならなんとか。けれどそれ以降があるなら無理だ。それくらいだとSランク魔物も現れるだろう。
Sランクがいたらどうするのだろうか。聖剣をあきらめることになるかもしれない。