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邪武器の娘  作者: ツインシザー
人族領 軍隊編
147/222

エステラ3 ステータス


「・・・話しはこれで終いか?」

 エイハムが一区切りついたところで周りを見回しながら立ち上がった。

「・・・・・・少し、休憩を入れましょう」

 エステラが冷めてしまったポットをカートにのせて、部屋を出て行った。シアは立ち上がってそれを追いかける。

 外の様子を気にしていたエイハムは、二人が出て行ってしまったことで、逆にこの部屋から出ることができなくなってしまったようだ。

 魔将を信頼することができないために、監視として部屋に残ることに決めたらしい。

 部屋にはディーと、ディーアと、エイハムとアクリアが残されている。

 シアとエステラは厨房に移動しながら小声で話す。

 彼らには聞こえないように。


「・・・・・・どう思われます?」

「ん。アクリアは味方」

「そうですわね。”龍”の肩入れがどこまでしてもらえるのかはわかりませんが、こちらに好意的ではあるようですわ。それに、魔将の二人組も契約魔術が機能しているのなら、信頼はできませんが明確には敵ではないでしょう」

 けれど、とエステラは言う。

「エイハムはダメですわね」

「・・・・・・教えて」

 なぜダメなのか、とシアが聞いた。

「魔族であったイリーニャの上司ですから。さっきは知らなかったようなことを言っていましたが、嘘かもしれません。いえ、嘘である可能性がある限り、エイハムは敵と思っていないといけませんわね。そもそも、彼は最初からシア様の監視役として私たちに付けられた軍の兵士です。軍の判断によってはいきなり剣で刺されることだってあり得ますわ」

 そうか。シアが聖剣を持っているとなれば、それを奪う選択肢もある。

 その命令を受けて行動を起こすのに、一番いいポジションにいるのがエイハムだった。彼の性格的にも軍からの命令であればそれを実行するだろう。

 いつかシアに剣を向けるかもしれない存在。

 今、あの部屋の中で一番信用ならないのがエイハムだった。


「シア様はこのあとの話はどうされるおつもりですか?」

「・・・お嬢様の場所を、聞く」

 今現在どこにいるのかわからない、シアの大切な主。

 同じ魔族軍に所属していた二人になら、居場所がわかるかもしれないのだ。

「そのことは・・・エイハムの居ない場で聞くべきですわね」

 シアにとって弱点になるということか。

「シア様を軍に協力させるために、モルテイシア様のいる戦場を同盟軍がどのように扱うのかわかりませんわ。シア様に内緒で攻めてモルテイシア様を捕虜にするかもしれませんし、シア様とわざとかち合わないように別々になるように配置をするかもしれません。エイハムにお嬢様の現在の居場所を握られるのは不安がありますわ」

「ん。わかった。気を付ける」

 コクコクとシアがエステラの言うことに納得している。こういった卑怯目なやり方はエステラの方がくわしいのだ。

「んー・・・じゃ、魔将になる方法を聞く」

 魔将になれば魔王の”支配”にある程度抗うことができるようになる。お嬢様を魔将にしてしまえば、あとはディー・ロームの《失力》で”支配”を消して元のお嬢様を取り戻すことができる目処が立つのだ。

「そうですわね。魔将は魔王が任命するモノでなければ良いのですが」

 魔王に敵対しながらでは頼めないもんな。

 でも魔将って今現在7,8人しかいない稀有な存在だろう。魔将になるのはかなり難しい条件がありそうだけど。

「ん。でも、魔将の協力があるなら、獲得は無理じゃない」

 確かに。等の魔将本人が手を貸してくれるなら条件自体はわかるはずだ。

 魔王さえ絡まないならなんとかなるかもしれない。


「あとは・・・揺り籠」

「揺り籠ですの?」

 そう。魔将になれなかった場合、”支配”を解除したあと、再び”支配”の干渉を受けないために揺り籠と呼ばれるダンジョン的な場所が必要になる。

「アクリアがパパを見たとき言った。『他の龍なら籠を作れる』って」

 あー、ん・・・何だっけ?。オレを見て作り方思い浮かべながらそんなことを言ってたっけ。

 龍なら揺り籠を作れるってことか。

 お嬢様用のダンジョンをどうするか考えてたけれど、モンスターが湧かずに快適に過ごせる場所ができるのならそっちの方がいいな。

 けれどどうするんだ?作ってもらうのか?、それとも、シアが作るのか?

「・・・・・・私?」

 そう。シアも龍族になったのなら作れるんじゃないのか?

 シアがいやいやいや、と首を振る。

 まぁ、龍族になったばかりでそんな機能が突然増えていたりはしないだろう。

 ・・・・・・

 しないよね?

「・・・・・・シア様のステータスを確認してみては?」

 エステラの忠告にうなずき、カートの茶器を食堂に渡す様子を見ながらオレはシアのステータスを開いた。



個体 シア

種族 龍族/亜人(人間/魔族)


筋力 46(35)

耐久 26(16)

器用 27(26)

感覚 23(22)

知力 20

魔力 29(28)

魅力 20

速度 31(30)


闇無効--

毒耐性16

麻痺耐性6

魅了耐性5

挑発耐性4

苦痛耐性4

熱耐性4(3)

冷気耐性2


・剣術《風刃》140

・剣術《旋風刃》57(52)

・斬術《斬月》13(12)

・刺突術《風突》126(115)

・刺突術《三段突き》43(37)

・槍術《操槍》--

・槍術《円舞》140

・槍術《円舞陣》82(69)

・水術《潜水》18

・龍術《龍力》0

・火魔術《燃力》31(13)

・水魔術《治力》25(7)

・風魔術《速力》76(58)

・闇魔術《暗視》67(49)

・闇魔術《夜槍》14(4)

・無魔術《失力》92(85)

・無魔術《異常消去》11(10)

・無魔術《時間喪失》11(2)

・無魔術《虚無弾》72(63)

・無魔術《魔素喰い》8(1)

・眼力《探索眼》21


《龍胆》

《龍変化》



 ・・・・・・・・・・・・。

 うん。

 よし、<称号>を確認しよう。

「パパ。」

 う、・・・・・・いろいろと増えた。

 まず、種族の表記が変わっている。前は『亜人(人間/龍/魔族)』だったのが『龍族/亜人(人間/魔族)』になった。龍族としての個性が亜人と並んだと思われる。

 シアはりっぱに龍族に成ったということらしい。


 次に、伸ばし方が難しかった耐久が上がった。約10ほど。筋力も同じくらい伸びているので、龍族としての種族固定値分が増加したのかもしれない。

 種族”龍族”で筋力と耐久に固定値増加。もしかすると龍種ごとに補正が違うかもしれない。

 種族”人間”でスキル数の獲得上限がなくなる。

 種族”魔族”で熟練度上限が高くなる。いや、人間のデメリットを無くすだけか。龍族もおそらく高いだろう。

 種族”亜人”でこれらの種族を一つに統合する。


 さて・・・増えた部分その1。『闇無効』

 黒龍の真核を持っているからだろう。耐性をすっとばして無効が増えた。この後に吸収があるのかと思ったけど練度表示がないので吸収にはならないかもしれない。

 無効

 いいね。無効、すっごくいい。

 すべての”闇”魔術がシアには効かない。・・・”闇”魔術を使ってくる相手って誰だろう。

 死霊系とかだろうか。

 あまり思い浮かばないのが悲しい。


 次だが・・・《竜力》が無くなった。代わりに、《龍力》がある。上位スキルに変更されたらしい。今までは前提スキルも残っていたので初めてのことだ。

 スキル説明にはこうある。

・龍術《龍力》  <60s時間の筋力増加100%、魔力増加100%>

 時間は倍に、増加量も倍になった。

 まぁ、竜と龍では強さも、世界に係わる役割も大きく違う。

 そう考えると倍では足りないだろう。もっとほしい。

 いいけど。


 さて、《龍胆》だけれど・・・スキル説明に変化は無い。アクリアが真核に灯を入れるとか言っていたので変更があるかと思っていたが、無いらしい。


 最後に・・・固有スキル《龍変化》。

 アクリアが人から龍へ変化するのと同じことができるスキルだ。

 いや、アクリアは龍から人へ変化か?。シアはこれまでの様子だと、黒龍に成ることができそうだ。

 説明を読もう。

・《龍変化》  <要魔値。600s時間の自身を人/龍に変化させる>

 おー・・・・・・

 そっかー。龍・・・。とうとうシアが龍に変化できるようになってしまうのか。

 これはまたやばそうなスキルですな。どんな形状になれるのか後で試してみよう。


 ひとまずはこんな所か。

 <称号>は<黒龍の加護を受けし者>が増えただけで今までのものに変化は無かった。ただ、何の<称号>を持っているか、見れるようになったので管理は便利になった。

 今まで<称号>の設定方法や確認方法がわかっていなかっただけだけれども。

「大分変わりましたわね・・・」

 そうだな。『闇無効』、《龍力》、《龍変化》の三つが主に変わったところだ。

 ちょっとエステラに”闇”魔術を使ってみてもらってほしい。

「ん。エステラ、私に《影縛り》を」

「はい。《影縛り》」

 ジャランと黒い鎖がシアの腕に絡まる。

「・・・・・・」

「・・・・・・魔素を吸えませんわね」

 シアが腕をぶるんと振ると、鎖が簡単に解ける。

 束縛効果がほとんど無くなっているようだ。

「なるほどですわね。これなら、シア様を避けて細かい狙いをつけなくてもまとめて縛ってもよさそうですわ」

 シアだけはすぐに鎖から抜けられるから、捕まえたい敵だけ鎖に巻かれることになりそうだな。

 闇無効、わりと悪くない。

 まぁ、《風刃》や《風突》が存在する風属性の無効よりは有用ではないかもしれないけれど。

 後は・・・アクリアに効果や使い方を聞きながら試した方がいいかもしれない。龍に変化すると感覚が鈍くなるようなデメリットもあるみたいだから、そのあたりきちんと把握しておきたい。

「ん。」

 変えてもらった茶器をカートに載せて押しながら、シアとエステラは部屋にもどってくる。

「おかえりー。話が中断しちゃったみたいだけど、どうしよっか。とは言ってもさ、一人睡魔に負けちゃったのがいるみたいだけど」

 アクリアがそう言って魔族の方を見た。

 じいさんが椅子に座りながらスピスピと寝息を立てていた。

「・・・・・・続きは、起きてご飯の後で」

 本日は解散することになった。


 シアとエステラはようやく自分の部屋に戻ってきた。

 そういえば盗難事件があったなぁ。

 何が盗まれたのか、確認しておかないと。

 二人はごそごそと各自の荷物を点検しはじめる。

「・・・・・・エステラ」

「どうしました?」

 シアはちょっと口ごもりった。

「・・・・・・いろいろ、ありがとう。・・・エステラがいて、良かった」

 イリーニャに化けていた魔族から守ってくれたこと。それに、アクリアの加護獲得旅行につきあってくれたこと。他にもいろんなことがあった。

 それらを含めて、シアは礼を言った。

 感謝しなれていないせいでぶっきらぼうで全然だけど、無表情に見えるシアのほほと耳が少し朱に染まっている。

 配下には相応の報酬を。

 シアはアクリアの作った契約の魔術を見て、考えさせられたらしい。

 あまりエステラに報酬をあげていないなーと。

 ダメな主がいたものだ(溜息)

「パパうるさい」

 くふふ、とエステラが笑う。

「どういたしまして。シア様、私もシア様がいてくれたおかげで、救われているのですわ。・・・ありがとうございます」

「ん・・・ん。」

 エステラを育んできた土台が崩壊した時、一人ぼっちになった彼女のそばにいたのがシアだ。そして魔族領で殺されそうになった時、主に逆らってでも彼女を助け、いっしょに逃げたのもシアだ。『エステラ』としての人生はシアと共にあったと言ってもいいだろう。彼女が『エステラ』である限り、その忠誠は揺るがないように思える。

 いい配下を持ったものだ。シアのパパとして、とてもうれしく思う。

 ただしエステラが荷物を確認しながらサッと荷物の奥にもどしたシアの下着はどうかと思う。もともと性格にゆがんだところのあった娘だったけれど、変な方向に情が育たないか心配だ・・・。


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