緑龍2
三日かかった。
「いやー、悪かったね。私も久々にこの館にきたばっかりで、準備ができてなかったわけよ。もうあんなことはないから安心していいよ」
あの様子からここまで持ち直したか。一時はどうなるかと思ったけど、よかった。
「とどめを、とか。」
ははは、何のことだか覚えていないなぁ!
さて、持ち直したアクスタリアはニコニコで前回の話をさらりとまとめた。
「”聖剣”は確認したわ。確かに二つの属性がそうとしか思えないほど減衰してた。私の属性じゃないから気付かなかったよ、ごめんねー」
・・・良かった、二つだけか。
「そんであれだよね。魔王が”悪魔”って話。そっちはちょっと信じられないかなー。だってさ、憶測ばっかりじゃん。転生?とかいうのも、能力を持ったままってのも。そもそも何で魔族にしか転生しないのさ。ちょっとよくわかんないわー」
うーんそっかー。わかんないかー
どうしてくれようかこの龍。
「じゃ、魔王は放置と言うことで。」
「まま、それは判断が早いかもしれないよ。一応対策したほうがいいんじゃないかなー。これは長生きしてるわたしからの助言なんだけどね、もしもって場合があるからさぁ、前に言ってた対策?てのも考えといたほうがいいかもよ」
・・・・・・
「それを教わりに、あなたを呼んだ」
「あ、そ、そうだったわね。えーと・・・」
「方法、考えて。」
「・・・・・・はい」
さらに二日がたった。
「魔王の”支配”に抗うには、”失力”を上げればいいのよ。あれは強化スキルだからね。魔王の”支配”を簡単に消せるくらいまで”失力”の熟練度を上げなさいな」
「知ってる。」
それはもう検討してる。
でもどれくらいまで上げればいいかわからないから、もっと確実な方法を探しているわけで。
「”支配”は耐性では防げないのかしら?。魅了とか、威圧とか、そのあたりじゃないかと思うのですけれど」
エステラが聞いている。
「・・・いやぁ、私でも世界のスキル全部知っているわけじゃないからなぁ」
「あなた、今さっき強化スキルだからと断言なさっていたわよね」
アクスタリアの額から冷や汗が流れる。
「うん。それは知ってる。魔王の軍勢とも昔やりあったことがあるからね、あれは、強化だったよ」
まぁ、強化であると保証してもらえただけよしとするか。
というか、この龍は魔王のことについてあまり知識が無い。
”龍”とは、対”邪”属性としての存在ということなのかね。
「わかりました。しかたないので私が知っているかぎりの”魔王”の情報を教えてさしあげますわ」
そう言ってエステラがヘビ王とあれこれ検討した話をアクスタリアに教えて行く。
スキルや固有スキルではなく、<称号>であるとされていた一般認識から、けれど”魔王”は<称号>ではないこと、”魔王”として人化する前から、少しだけ特定の種族に影響を及ぼしていたこと。このことから種族限定の能力ではないかということ。そしてどうやら”人族”には効果が無いのではないかということ。
「はー・・・そうなんだー」
今ここにつまみ出していい人が一人だけいます。
「ま、まって。そんなかわいそうなものを見る目を向けないでね。おねえさんきちんと考えてるからね?」
まぁ、また心が折れても困るし、ほどほどにしておこう。
しかし、結局は方策が見つからなかったわけか。この様子だと他の”龍”も望み薄だし。
「がっかり。」
ほんとだな。
「・・・・・・それはちょっとあきらめるのが早いかなー。もっとおねえさんをよいしょしてくれると、何か思いつくかもしれないよー」
あれだな。仕事しないくせに捧げものばかり要求する悪神ってやつだな。悪神って誰が言ってたんだっけ。もうそれと同じ扱いでいいか。
「悪神なら、倒してもいいかも」
「まって、ちょっっとまってね。やめようね。流石の私でも、聖剣を壊した武器を向けられるのは、命の危険を感じちゃうからね。ほら、あるある。あるから。方策、きちんとあるからっ」
アクスタリアがあわあわしながらそう言った。
「あるんだ?」
「あるわ。本当にあったら、私のこと、龍様って「ん?」あ、いえ、・・・おねえちゃんって呼んでくれない?」
「・・・アクリアで、いい?」
シアが妥協案を提示した。まぁ、おねえちゃんはもう少し親しい間柄の呼び方だよなぁ。
「・・・まぁそれでいいかなー。でも君は、きっと将来私の妹分になる気がするんだよねー・・・」
龍の使徒になるとしても、上司の龍はこっちで選ばせてもらいたいな。
もう少し、しっかりした龍がいい。
「それで、方策は何ですの?」
もったいぶった様子に痺れをきらしたのか、エステラが催促する。
「んふー、それねー。まぁ、その子だけしかできないことなんだけどねー。シアちゃん」
「・・・ん?」
「”昇位”しよっか」