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邪武器の娘  作者: ツインシザー
人族領 軍隊編
136/222

ジェラルダス家1


 ジェラルダス家はグラッテン王国の貴族ではない。龍の使徒としてグラッテン王国の祭事に携わる、名誉貴族なのだ。

 なので継ぐべき土地を持っていない。

 継がれるのは”御子”というモノと、その知識だった。

 トートハイム領の中央市には街を囲む城壁がある。そしてその城壁には特殊な魔道具がはめこまれていた。


「まて、応魔石が反応している。この中に魔族がいるな?」

 馬車が門を通過しようとしたとき、門兵に止められてしまった。

 そういや旧首都にもあったなぁ。魔族かどうか調べる魔道具があるとかなんとか・・・。ミルゲリウスに反応をごまかすペンダントをもらったのを覚えている。

 旧首都以外で使うことがなかったからはずしたままだったか。

 門番に身分を告げる。

「確認までおまちを・・・。えぇ、ありました。パルド・エレイム侯爵からの身元保証書類と通行許可願いが届いています。魔族の血を持つのは・・・シア・M・グラスマイヤー殿ですね」

「そうだ。許可はでているか?」

 エイハムが門兵の相手をしてくれている。

 しかし、届け出を送ってくれていたのが指揮官のパルドか・・・。侯爵位なのでこういった場合には便利だ。

 門を通り、馬車の一団が中程度の広さの貴族の館の前に到着する。



 館の兵士に家人への取次ぎを頼む。

 まもなく執事がやってきてシアとエステラ、それからエイハムをつれて屋敷の廊下を歩く。

 館は質素な作りだった。

 使用人の姿が少ないし、いろいろ飾り付けられてない。絵画も、カーテンも、シャンデリアもなく、廊下の隅っこなどはホコリが溜まっていた。

 一つの部屋の前で、執事が扉をノックする。

 入室の許可が下りる。

 執事が扉を開け、3人は部屋の中へと入った。


「ようこそいらっしゃいましたね。立って出迎えられなくて申し訳ない。少し、体を悪くしていましてね」


 いろいろな本が平積みされている。その奥に古いイスに座った白髪の初老の男性がいた。

 近眼用の眼鏡を顔の中ほどにかけ、すまなそうに微笑む。

 彼は脚が悪いらしい。イスの横に移動に使う車イスが置いてあった。

「いえ、こちらも用件だけの手紙で申し訳ありません。・・・直接会われた方が、わかりやすいと思いまして」

 エイハムがそう言ってシアに前に出るようにうながしてくる。

「・・・私はシア。シア・M・グラスマイヤー。魔王の”支配”に抗う手段を探している」

「・・・・・・そうか、あなたが・・・」

 シアのことをじーっと、上から下まで眺める。

「・・・・・・おっと、申し訳ない。私はロウ・S・ジェラルダス。イオの祖父です。あなたのことはイオからの手紙で知っていました。・・・あなたの瞳が、きれいだと」

 シアが自分の右目の下を手でこする。

「いいえ、あなたの金の瞳と、黒い瞳の両方が、とてもきれいだと書いてありましたよ」

「・・・・・・そう」

 シアがちょっと照れていた。

「・・・・・・魔王の”支配”に抗う手段と言いましたが、申し訳ありませんが、私では力になれないと思います。特に魔王のことに対して知識が豊富というわけでもありませんし、”御子”の持つ能力と言うのは特殊であっても、そのような効果があるわけでもないのですよ」

 ”御子”の能力は確率を操る能力だっけか?。確かルール・・・世界の掟に少しだけ作用できる能力って話だっけ。

「”御子”は龍の使徒だよね?」

「そうですね?」

「ん。」

 ほら、やっぱり、みたいな顔をされても・・・。

「はぁ、わかりましたわ。最初からいきましょう。人数分のイスはありませんの?」

 エステラがそう言ってテキパキと指示を出し始めた。


 さて、まず最初に認識を統一しなくてはいけないことがある。

「まずそうですわね、私たちは魔王が”悪魔”ではないかと思っています」

 ”悪魔”の名前を出した途端、ロウの顔が険しくなった。

「・・・あなた方は、”悪魔”を知っているのですね。・・・どこまで知っておられるのですか」

「”悪魔”は掟に作用する」

「世界の掟を操作できる能力があると聞いていますわね。あと、聖剣を持つ人間と、龍によって殲滅されたと聞いていますわ」

 ヘビ王との話で聞いたことだ。

「そうです。けれど、そのことを知る者はそう、いないはずなんですが・・・」

「イグンっていう、1000年生きてるヘビの王様が言ってた」

「そ、そうですか。・・・掟を破る方法は禁忌です。できればあまり知られないようにしていただきたいと思います」

 掟を扱う”龍”の御子としては当然の反応か。

 ほいほい世界のルールを改変されても困るだろうしなぁ。

「魔王が”悪魔”と言われましたが・・・魔族と悪魔は違うものです。”悪魔”はもっと神に近い・・・言ってしまえば悪神が創造した存在です。けれど魔族は私たちが神と呼ぶモノが生みだしたモノ。この二つは対立することはあっても、合わさることはありえません」

 けれどそれも世界の”掟”である。

 ならば、その”掟”を変更できる悪魔がいたとしても不思議ではない。

「それは、理屈で言えばそうです。けれど”悪魔”が誕生した後に、今の世界の生命が誕生したのです。新しい掟を定めるには、これが逆でなくてはいけない」

 今の世界の生命が誕生した後に”掟”が創られることはないってことだろうか。

 たとえば、人間と”悪魔”が子をなしたりで。

「・・・・・・それは・・・完全にないとは言い切れませんが、けれど悪魔に子を成す能力があるとは思えません」

 ふーむ。けれど魔王は”悪魔”でしかないと思うんだけどなあ。

 エステラはロウにヘビ王と検討したことを説明した。


「能力や知識を持ったまま生まれ変わる・・・”転生”能力ですか・・・」

 魔族に生まれ、支配する能力をずっと失わない能力。

 もしそんなものがあるのなら、どうか?。

 そしてそんな”掟”外の能力を持つ者は・・・”悪魔”でしかありえない。

「・・・・・・なるほど・・・あなた方の言うことも、無いとはいいきれませんか」

「そういうことですわ。そして”悪魔”のことであれば、あなた方に聞きに来るのが一番でしょう?」

「確かにそうですね。・・・あなた方と言われますが、私以上に悪魔に詳しい者は、ジェラルダス一族にはおりませんよ?。他の”御子”の所にもいかれるおつもりでしょうか」

 御子によっては仕える”龍”が異なる場合がある。

 別の”龍”の御子なら知っている知識も違うかもしれない。そういうことなら会いにいくかもしれないけれど・・・。

「違いますわ。わたしたちがここに来た目的は、あなたではありません」

「え?、うちの、誰かでしたか?」

 ロウは自分の知識が目的ではないと言われ、驚いているようだった。

 ついでに、横で話を聞いてたエイハムも驚いている。

 『魔王の”支配”に抗うために”御子”に会う』としか聞かされていないからだ。

「ロウ様、”龍”の御方との面会の場を、設けていただきたいのです」

「なんと・・・そうか、それが目的だったのですか・・・」

 ロウは考え込んでしまった。

 やはり人と会うようにはいかないらしい。

「少し、時間をいただけますか?、これは・・・簡単に答えられるものではありませんから」

「わかりました。・・・どのくらい時間がかかるものなのでしょうか?」

 もし星くじらのように年一回、一週間程度しかやってこないなら返事があるのは一年後、なんてこともありえる。

「・・・一月以内にはお答えできるかと。待っている間の滞在はこの館を使ってください。客人として歓迎いたしましょう」


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