逃亡生活6 ステータス
7月になった。
とうとうシアが上級魔術をつかえるようになった。
・無魔術《時間喪失》 <要魔値。600s時間の自身の準備時間を15%減少する。老化無効>
・無魔術《魔素喰い》 <要魔値。60s時間の魔素吸収空間を作成する。魔素吸収に練度/5%>
この二つが”無”属性の上級魔術だ。上級ってスゲー。そしてなんともう一つ。
・闇魔術《夜槍》 <要魔値。指向性のある黒槍を外発する。射程:10×練度/10>
とうとう待望の遠距離攻撃魔術を獲得したぞ!。
《夜槍》は”闇”属性の中級魔術だ。得意属性の一つなので他の属性より早く中級を得られた。黒い槍がひゅいーんと飛んでぶっささるだけの魔術なのだけれども、名前に”夜”があるように、夜だと攻撃が察知されにくい。どこぞのピカピカめだつ光属性魔術師も闇が二つ目の得意属性なんだし、これは覚えておいていいと思う。このままだとあいつは夜間の戦闘では足手まといになりかねない。めだつし。狙われるし。
だいぶほしかったスキルも獲得し、この後どうしようか悩んでいる所だ。
ひとまず今のシアを確認しよう。
個体 シア
種族 亜人(人間/龍/魔族)
筋力 35(31)
耐久 16(13)
器用 26(23)
感覚 22(21)
知力 20(19)
魔力 28(21)
魅力 20(18)
速度 30(27)
毒耐性16(14)
麻痺耐性6
魅了耐性5
挑発耐性4
苦痛耐性4
熱耐性3
冷気耐性2
・剣術《風刃》140(110)
・剣術《旋風刃》52(22)
・斬術《斬月》12(2)
・刺突術《風突》115(86)
・刺突術《三段突き》37(20)
・槍術《操槍》--
・槍術《円舞》140(117)
・槍術《円舞陣》69(45)
・水術《潜水》18(20)
・龍術《竜力》46(35)
・火魔術《燃力》13
・水魔術《治力》7
・風魔術《速力》58(35)
・闇魔術《暗視》49(26)
・闇魔術《夜槍》4
・無魔術《失力》85(65)
・無魔術《異常消去》10(3)
・無魔術《時間喪失》2
・無魔術《虚無弾》63(21)
・無魔術《魔素喰い》1
・眼力《探索眼》21(12)
特
《龍胆》
前にきちんと確認したのは調査隊で仕事をしてた時だったか。あれから2年弱くらいたっている。
苦痛耐性が増えたのもその時の変なお姉さんのせいだった気がする。
《風刃》《円舞》の成長が止まった。シアは称号がいくつかある。<伯爵><穴掘り名人><財宝獲得者>の3つだ。この3個を合わせてスキルの熟練度上限が+40されている。
シアのスキルはこんなところだが、エステラのスキルをのぞけるようになって気が付いたことがあるらしい。
どうも他の人間は、シアほどステータスもスキルも伸びないのだとか。『成長率』という概念がこの世界にあるかはわからないが、シアの成長率はエステラの1.5倍くらいありそうだと言っていた。
さて、このあとどうするかだが・・・あとは土の内発、風の外発中級魔術を取るくらいしか思いつかない。
ということをシアと話していたところ、もう一つ案があることがわかった。
「パパ・・・鞭がとれる」
そうだった。
オレは鞭にもなれるんだった。
これまでの人生(?)で見たことのある鞭スキルを思い起こしてみる。
思い起こせなかった。
・・・ない。
鞭スキルなんて見たことないぞ。
どういうことだ?学校でさらっとだけど他の武器の前提スキルを見る授業を受けたはずだよな。
なのに見た覚えがない。
「・・・鞭は、武器じゃない?」
ははは、そんなわけないだろう。
現にこうしてオレという存在がいるわけで・・・。
・・・・・・・・・・・・。
よし、おーけー。オレを基準に考えてはいけない。
一般的に武器で戦う兵士や冒険者がいるかどうかで考えよう。
考えるのはやめて冒険者のたまっている酒場をのぞいてみることにした。
「鞭、ですか・・・知らないですね」
「鞭ぃ?。あんな殺傷能力の無いゴミ武器を使う奴なんていねーよ。剣を持てよ剣をよ。剣はいいぞー、強い!そしてかっこいい!」
「鞭ねぇ・・・聞かないなぁ。あぁ、そういや前に夜のお店で鞭が得意だっていう・・・」
中々の不人気武器らしく、冒険者たちの中には鞭スキルを知っている者はいなかった。
しかしオレたちはあきらめない。
酒場のマスターなら何か知っているのではないかと話を振ってみた。
「ん」
カウンターに置いてある注文表を指さされる。
商品を頼まぬものは客ではないということだな。
「・・・ココナットメロードシャワードリンク」
「あ、じゃぁ私もそれで」
なにかすごいのを頼むシアに、同じのを頼むエステラ。このあたりは気候もあたたかいのか、南国風の果物が多い。もちろんそれを使った飲み物やデザートが豊富なのだ。
「あら、おいしいですわね。私の方ちょっと飲んでみますか?。そっちもちょっとくださいまし」
いや、同じの頼んだだろ。どっち飲んでも同じ味だ。
よくわからない絡み方をしてくるエステラの手を払いのけつつ、シアはマスターに鞭スキルのことを聞く。
「魔獣使いを知っているか?。あいつらは魔獣のしつけに鞭を使う。ピシピシとな」
魔獣使いは知っているが、タシムは鞭を使って魔物をしつけてはいなかったなぁ。愛情で魔獣を手懐けていた。
「あとは奴隷市場の商人だ。あいつらは奴隷のしつけに鞭を使う」
ピシピシとは言わなかったが、手で鞭を使うジェスチャーをしてくる。
なるほどな。行ってみようか。
酒場を出て市場の裏通りを歩く。
戦争しているとは思えないくらい、きれいなものだ。
ルデリウス神聖国崩壊後のグラッテン王国の裏通りには、行き場を失った流民がひっそり住み着いていたものだが。
まぁ、今の魔族領は兵士に志願すれば最低限の食事と寝床がもらえるわけだから、行き場のない浮浪者は減ったのかもしれない。
「シア様、龍に会うと言う話、本当になさるおつもりですの?」
せまい道を一列になって歩きながら、エステラが後ろから声を掛けてきた。
「会う。どうしたの?」
「龍はきむずかしい存在と聞きますわ。王族よりも尊大で、多くの知識を有し、魔術を知り、そして強大な力をもつ。・・・わたしの父でさえ、龍を恐れ、敬っていましたわ」
エステラの父はグラッテンの国王。
一大国の王でさえ恐れる星神の遣いか・・・。
「私が懸念しているのは、シア様に流れる”魔族”の血、そしてどこから入手したのかわからない、”龍”の血・・・。もし、その龍の血が盗まれたものだったら、龍はシア様を許さないかもしれませんわよ」
確かにそうだ。この世界に”龍”種はごく一部にしか存在していないようだし、そうなるとシアの”龍”がどこから来たものか、調べられてしまうだろう。そのときに盗まれたものだったり、殺された龍から奪われたものだったりしたら・・・・・・。
怖いことになりかねない。
しかも龍が敵視している”魔族”と組み合わせているのだ。龍を敬っている様子もなく、ただの便利な素材パーツとして材料にされている。
そう思われてもしかたがない所業だ。
ひえぇ・・・
考えてみると龍が怒る要素は多いように思う。
会いに行くの、ちょっと怖くなってしまうな。
「ん。・・・そうなったら、ゴメン」
巻き込んでしまったら、と。
「・・・別に、いいですわ。ふんっ、いいですわよ。なんなら龍の一匹や二匹、私が倒してさしあげますわっ」
たのもしい戦闘用メイドだ。
「ですが、やっぱり会うと言うのなら、直接龍に会う前に、その使徒とお会いになった方がいいかもしれませんわよ」
星神の使徒の、さらにその使徒か?。
「・・・”御子”?」
「そうですわ。イオ様の種族”御子”の一族です。ただ、御子は人族領域にしかいませんので、そうなると大きく移動しなければなりませんが」
龍に会うと怒らせるかもしれない。だから間に入って話を通してくれそうな”御子”をたよりたい。
御子が人間領にしかいないなら、あちらにいかないといけないわけだが・・・どうしたもんかね。
「んー・・・」
「今すぐに答えを出す必要はありませんわよ。考えておいてくださいませ。・・・私、買いたいものがあるので別行動をとらせてもらいますわ。また宿でおちあいましょう」
そう言ってエステラは表通りへの横道に入って行った。
・・・御子か。
オレたちは”龍”を知らない。
なら、御子に会った方がいいかもしれないな。
「・・・ん。」
裏通りをたらたら散策して、ようやくそれっぽい場所を発見した。
奴隷店の看板が出ている。けれど開いていない。
閉まっているわけでは無く、店が無くなっている。
奴隷店は最近どこもこんなものらしい。
今魔族領では兵隊集めに奴隷を買い集める貴族が多いらしく、奴隷の値段が上がっていると聞く。奴隷自体もほとんど買われてしまい商品がなくて困っているらしいとも。
まぁ、おそらくだが、人間を殺してしまったせいで奴隷の数が少ないのもあるだろう。
店じまいしている奴隷市場が増えてきたと言う話だ。
鞭スキルは大きな町の奴隷店に行くまでおあずけかなぁ。
「・・・んー」
宿で合流したエステラが、シアにこげ茶色の眼帯を渡してきた。
この先必要になるだろうから、と。
シアはお礼を言い、そして御子に会いに行くことを告げた。
魔都でもなく、星くじらの降りてくる山でもなく、オレ達は人族領域へもどることになる。