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邪武器の娘  作者: ツインシザー
魔族領 軍隊編
120/222

逃亡生活1

少し長いです。


「少し尋ねたいのですが、この乗り物、どこまで飛行できるものなのですか?」

「にゃん」

「・・・・・・ですかニャン?」

 シアのつっこみでエステラが付けたす。

「・・・・・・どこまでって・・・あんたらくらいの体重なら二人乗っても一飛びで町二つ分は飛べるぞ。もしかしてグリフォンは初めてかい?、だったらしばらく訓練に参加してもらわんとダメだぞ。二人だけで乗るなら一週間。操者がいるなら3日だ」

 馬宿の店主はそう教えてくれる。

 三日か。ありといえばありだな。

 宿には馬の他にラクダやオオトカゲ、さらにはグリフォン、ワイバーンといった飛行能力のある騎乗動物も置いてある。

 これらは買うこともできるが、一時的に借りることもできる。ただし馬と違って保証金があるので大分高い。

 手配を受けているせいで冒険者組合でお金をおろせない今、シア達の所持金は心もとないことになっていた。

 グリフォンを借りるならどこかでお金を稼いでこないとなぁ・・・。

「ありがとうですわ。また今度借りることにいたします、ニャン」

 エステラはネコミミを乗っけたままの頭を下げた。


 馬宿を後にする。ふたりは周りを警戒しながら人の流れに乗る。

「この場所で三日は流石にとれませんわね・・・、あれを使うのならもう少し南で訓練してからじゃないとダメですわ」

 二人は今、北に向かうのをやめて東方領に来ていた。

 今、エステラの頭にはネコミミがついている。シアの頭にもイヌミミがついていた。

 獣人のふりをすることで二人は捜索から逃れているのだ。

 これで見逃されるのは簡単な捜索だけだったが、魔族が探しているのは”人間”の娘二人だ。何食わぬ顔をしていると気づかれなかったりする。

 北方領では各町に手配書が貼ってあったが、東方領ではせいぜいが兵隊の詰め所や冒険者ギルドにしか張られていない。

 ここなら目立つことをしなければみつからないだろう。

 さて、そうなると当面の目標は金策ってことになる。

 なるのだが・・・依頼もダンジョンもダメとなると、どうすればいいんだ・・・

 まったく思いつかない。




「はぁ、はぁ、お嬢ちゃん、本当にいいんだね?」

「えぇ、たったの1000Gです。たったそれだけで、私のしぼり汁があなたのモノになるのですわ」

「こ、これ、これを・・・うん。どうだい?」

「えぇ・・・十分ですわ。さぁ、ん・・・こちらを・・・今日しぼりとったばかりの、出来立てですわ。まだあったかい・・・十分堪能してくださいませ」

「はぁ、はぁ、いいんだね」

「いいですわよ」

 その男は今受け取ったばかりのポーションをグビリと飲み干していく。

「おお・・・おおお・・・沁みいる・・・君の魔素が・・・私の中に沁みてゆく・・・。これでまた仕事ができる」

 男は白衣の襟を正し、ふたたび施設の中へともどっていく。

 魔術治療院という施設へと。

「フフフ、これでまた一人私の色に染めてやりましたわっ。魔族などちょろいですわね」

「・・・品がない」

 パシンとエステラの頭をたたく。ちょっとだけネコミミがずれるが、エステラがその位置を直しながら振り向いた。

「あらご主人様、お掃除はおわったのですか?」

「ん。終わった。・・・帰る」

「えぇ、帰りましょう」

 仕事が終わり、倉庫の片隅で支給されている作業着を着替える。まだ仕事をしている同僚に挨拶をして二人は借りている部屋へと帰る。部屋は治療院から徒歩で10分のところだ。


 帰りに食べ物屋で夕食の食材を買って帰る。今日は卵つつみの肉団子だ。

 このあたりは肉体労働者が多いので一個買えば二人でまかなえてしまう。

 借りた部屋は山に面した斜面の一角にある。本来ならここも鉱夫のために貸し出されるはずだった部屋だ。けれどその山は掘削されなかった。

 山から、ダンジョンが見つかったのだ。

 ――Aランクダンジョン

 冒険者組合も無いこの村では扱い切れず、入り口を埋めなおして別の山を掘ることになった。

 だから部屋が安い。

 そして――


「ごちそうさま」

「ごちそうさまでしたわ」

「じゃあ」

「えぇ。掘りましょうか」

 部屋の床板を外し、どっかで拾った鉄盾をはめ込んだだけの穴の入り口を開ける。

 それは山へと続くダンジョンの入り口だった。


「シア様、右から1。私がやっていいですわよね」

「ん。ただし闇で」

「わかりましたわ」

 エステラは迫りくるアナコンダソルジャーに《影縛り》を放つ。光魔術を使わないのは他の魔物を呼び寄せないためだ。

 エステラの”闇”魔術はまだ弱い。初級の《影縛り》一つでは巨大な体のヘビ戦士を縛ることはできない。蛇はスルリと黒い鎖を抜け出す。けれど鎖は無数に展開される。この魔術、攻撃能力が無い代わりに低燃費なのだ。低燃費で、けれど消費し続ける限り捕縛し続けられる。そして彼女は魔術が当たりさえすれば相手からその魔術の何割かのMPを吸収できる。この捕縛用の魔術でもそれは行われる。

 エステラのMP吸収能力は今6割を超えている。本人が言うには7割吸収できるらしい。

 一匹程度なら倒しきるまで捕縛し続けても、それほどMP消費しないということだ。

 エステラは鎖の強さを調節してヘビ戦士を側面の壁に貼り付けにする。

「いいですわよ」

「ん。《虚無弾アーマーン》」

 シアの魔術が貼り付けにされたヘビ戦士ごと、ダンジョンの壁を穴だらけにしていく。

「・・・・・・一個。宝石のみ」

「これで明日のご飯分は確保ですわねっ」

 エステラがうれしそうにしている。夕方に治療院の職員から受け取ってた1000Gはどこにいった。

 あれにはシアから搾り取ったMPも入ってるから全部自分のポケットに入れていいわけじゃないぞー

「さぁ、次に行きますわよっ」

 エステラがテンションを上げている。いいとこの王族のはずなのだが、いつの間にか守銭奴になってきてやしないだろうか・・・。

 貧乏とは恐ろしい。

 夕食後の2時間をダンジョン探索につかう。ここは閉じられたダンジョン。廃棄ダンジョン。誰とも出会うことはない。すごくいい立地にあるダンジョンだ。

 こうして日々、軍資金の調達にいそしんでいるのだった。



 魔王がその地位に就いた日から4ヵ月。

 二人は南方領の険しい山々が連なる炭鉱の町、リーデラ郷コルペイロに隠れ住んでいた。

 この町は冬でもあたたかい。南方であることも理由だが、夜を通して灯される鍛冶の火が冬を遠ざけてくれる。

 エステラはここにきてからいくつかのスキルを覚えた。


・魔魔術《魔素還元》 魔素を液体に還元する魔術。還元率は低いが、いざという時用にストックしておくことができる。

・闇魔術《影縛り》 黒い鎖で相手を縛り付ける魔術。ロープよりも拘束力はないが、何本も出現させればかなりの強度になる。


 どちらも初級魔術だった。魔素還元は息切れの怖いエステラにとっては命綱にもなるスキルだ。・・・まぁ、それをうっぱらおうという奴の気がちょっと心配ではある。

 影縛りは思ったよりも使い勝手が良かった。学校で見たときにはあまり使いようがないスキルに見えたが、Aランクダンジョンのモンスターを捕縛できるというのは結構な性能だと思う。光魔術で明かりを作れるエステラには闇魔術《暗視》はいらないだろうと取らせてみたが、大当たりかもしれない。いや、MP吸収できるからこその性能かもしれないけれど。

 そう、あれからエステラにはもう一つ、魔素吸収の特殊輝石が装備されている。なんとも幸運なことだが、コルペイロの廃棄ダンジョンで出たのだ。うらやましい。魔素治力はみつかっていないとうのに・・・。

 他にも斬撃耐性や風耐性なんてものも拾っている。この二つはシアが持っている。


 今、エステラの性能更新が著しい。本人も非常にうれしそうにしている。人間にとって周りじゅう敵しかいないような恐ろしい場所でも、素敵に笑える彼女は強いと思う。

 逆境でも強い。

 以前ならショックがあった後は数日学園を休むくらい、メンタルがお嬢様だったというのに・・・。かわればかわるものだ。

 逆にシアは成長の更新がまだない。もうちょっと・・・もうちょっとでいろいろ次の魔術が覚えられそうなのだけれども・・・。なかなか遠い。

 かわりと言ってはアレだが、オレは《旋風刃》を覚えられるようになった。スキルは7個までしか覚えられないので《円舞》をはずそうかと思っている。

 《円舞》はその発展スキルの《円舞陣》があることと、そろそろシアが闇の上級魔術の準備時間減少スキルを覚えられそうなことが理由だ。準備時間が減らせるならオレの《円舞》がなくてもシアの円舞、円舞陣、オレの円舞陣だけでスキルが回せるだろう。

 《三段突き》も交換候補だったが、変化させたせいで意味合いが変わった。隙が大きいことが問題だったが、防御中であれば撃てるようになったせいで隙とはなんぞやという感じに変化していた。

 スキル中は防御に専念させられるが、それはオレだけのこと。オレが防御姿勢をとっている間でも、シアはオレを攻撃に使える。

 ”防御術”は一つは残しておきたい。

 そうなるといつも使っていた《風突》の方が使いにくくなってしまった。

 一度《変化》で変化させたスキルは、二度は変えられない。理屈はわからない。けれど、あえて予想をするなら”自身を変化させる”のところに引っ掛かったのかもしれない。所持スキルは自身で獲得した、自分の一部。けれど変化させたスキルはもう、ルールの外になってしまったのかもしれない。

 だから《風突》はもどせない。再取得ができるならいいが、できなければ・・・もうこのままだ。

 もうしばらく使い様を探してみるが、なければ《円舞》の次に変更してもいいスキルになってしまった。

 まだちょっと迷っているが、シアが準備時間減少スキルを取ってから決めようと思っている。

 オレたちの状況はそんなところだろうか。


 次は世界の状況に行こう。

 魔王軍の侵攻とはほど遠いこんな場所にいても、前線の話しは聞こえてくる。


 一番始めに行動を起こしたのは北の魔将、ディー・ロームだった。

 北方領は、国情が回復していないグラッテン王国と隣接している。

 特に現在まったく仕事をしていない領主が治める地、グラスマイヤー領。

 魔族はここをほとんど素通りできると思っていたのだが、それが逆に手痛い攻撃を受ける原因になってしまった。

 国より派遣された砦を守る守備隊長に、古参であり策謀に長けた男をおいたからだ。

 名をジグラル・ドメッツィオ。この世界では稀な”召喚術士”の守備隊長だった。

 魔族ではないこの男が、まるで魔王のように大量のゴブリンやスケルトン、ゾンビなどを召喚したのだ。

 おそらくグラッテンが貯蔵していた大量の魔素回復ポーションをほとんど投入したのだろうと言われるが、その時間稼ぎのおかげでグラッテン王国は次の対策をとることができたのだ。

 魔族軍が召喚された魔物に手を焼いている間にグラッテン王国は隣国イズワルド王国、ネメリア王国と同盟を組んだ。

 少しずつグラッテンの地を侵略していた魔王軍だったが、その足が完全に止まってしまうことになる。

 まもなく3月。侵攻の開始から5ヵ月目になろうというところだったが、その歩みは鈍い。

 世界は魔族軍と、それに抗う同盟軍の2色に塗り替わろうとしているところだった。


「そのせいか、最近は税金高くなったよなー・・・武器防具の発注が増えたからいいものの、そうじゃなかったら大変だっていうのな」

 魔術治療院の待合室で並べられているイスに座りながら、受診にきた男たちがだべっていた。

 彼らは武器防具を販売している商人の所で商品の梱包などにかかわっている男衆だった。

 魔族軍の侵攻がはじまってだんだんと税金が増えてきた。

 食料品や衣類、薬や家具にいたるまでみんなちょっとずつ高い。ただ、この税金を回避する方法もある。

 あちこちで奨励されている方法。

 魔族軍に参加することである!

 軍に入れば税金を免除される!さぁみんな魔族軍に入ってレッツエンジョイ!

 だそうだ。

 さて、そんな税金に嘆いていた彼らだったが、一人があるウワサを話し出したことで様子が変わってきた。


「そういや知ってるか?最近この町から取引される商品にさ、大きめの宝石類が増えてきているって話」

「宝石類?そりゃ、領主様が開拓している鉱山のとこのだろう」

「いや、そこで採掘される宝石よりも大きく、美しいらしい。・・・これさぁ、もしかするとどっかで盗掘しているやつがいるんじゃないか?」

「盗掘だと?」

 なん、だと?。

 いやまて、ダンジョンで手に入れたものは拾った者の物だろう。盗掘だなんて・・・・・・・・・・・・あ。

 ダンジョンで採掘されていることを知っている者が、いない。

 ダンジョン産であればゆるされることでも、ダンジョン産ではない場合、勝手に売買したらどうなるか。

 しかも領主が主導して採掘している山々で、勝手に採掘し、売り払っていると思われたら・・・・・・。

 今の所裏の売買取引所を使っているから身元がばれていないようだが、領主が本格的に盗掘者を探し始めたらどうなるか。

 死刑 ずばー

 うん。ありえるううぅぅぅぅっ

 いやぁぁぁあああっ、死にたくないぃぃっ

「・・・・・・」

 シアもなんとも言えない表情をしている。これはオレと同じで今まで気付かなかった顔だな。

 どうしよう、どうしようっ

「・・・・・・うーん」


 悩んでいる間にも男たちの話は進んでいく。

「だからな、その盗掘しているやつを探し出して・・・・・・こっそりやり方を教えてもらおうぜ」

 あ。よかった。

 犯人探して兵隊に突き出そうとか言い出さなくて。

 けれどこのままだとバレるまでそう時間がなさそうだな。

 せっかく見つけたいい特殊輝石の採掘場所だったんだけどなー・・・。そろそろこの場所ともおさらばだろうか。

 グリフォンの騎乗訓練は暇を見て練習していたのでおわっている。だから国境を越える目処は立っているのだけれど、今、治療院の先生にちょこちょこ治癒魔術の覚え方を教わっていたのだ。

 まだ習得できていないし、習得できるか、できないかの判断ができるあたりまではここに残っていたかったんだけどなぁ。

 どうにか彼らの目的をそらすことができないだろうか

「・・・まかせて」

 シアはそうつぶやいてからトテトテと男たちの所に歩いていく。


「お?、どうしたおじょうちゃん。このあたりも掃除するのか?おれらどいた方がいいか?」

「ん。いい。それより、知ってる。宝石の場所」

「知ってる?、知ってるって・・・今話してた盗掘のことか」

「そう。・・・知りたい?」

 男たちは顔を見合わせる。こんな子供が何をいっているんだ、という顔と、興味あるという二つの感情が見える。

 というか、教えてしまうつもりか。

「そちゃ、教えてくれるってのならうれしいが、本当に知ってるんだろうな?」

「ん。夜にコソコソしてる人を見たから。・・・でも、タダじゃない」

 男たちは再び顔を見合わせた後、一人がズボンの小物入れから銀貨を一枚出してシアに渡す。

「・・・ここのすぐ近くに山に、閉鎖されてるダンジョンがある。そこで採掘できるみたい」

「なるほど・・・」

「ありえるな」

「ダンジョンで宝石が採れるのか?」

「あぁ、ごくたまにだが、壁を掘ると宝石が見つかるダンジョンがあるって話だ。ってことはそのことを知ってる奴らがこっそりダンジョン掘ってるってことか・・・、お嬢ちゃん、そいつらが出入りしてる場所とかわかるかい?」

「わからない」

 シアは頭をフルフルして答えた。

「そうか。・・・おい、何人かに声を掛けて手伝わせようぜ。鉱夫に知り合いがいただろう。あいつらだ」

「おう。あと暇そうな冒険者にも声をかけねえとな」

「面白いことになってきたな。いそいで道具そろえなきゃならねえ。おい、もしかするとこれはうちの商品を売るチャンスかもしれねえぞ。大旦那にも知らせよう」

 ワイワイガヤガヤと一気に活気づいていく。

 町おこしになるとか一大産業がおこるとか、そんな夢物語まで語りだす者までいる。

 まぁ、これでシアたちを探し出そうって流れにはならなくなったが・・・。

 誰にも会わないってとこが良かったんだけどね。しかたないか。

「おじょうちゃん、ありがとうな。悪いけどおれたちは用事ができちまった。若先生にはあやまっといてくれな」

 男たちはそう言っていっせいに治療院から外に出て行った。

 それまでそこそこにぎわっていた待合室が閑散とする。

「ふう、すっきり」

 誰もいなくなった待合室をサカサカ掃除し始めるシアだった。

「次の方~・・・あれ、誰もいない」

 呼びに来た看護術師が人気のなくなった待合室を見て首をかしげている。

「・・・みんな帰った」

「えぇー・・・いったい何があったのよ・・・」

 申し訳ない。



 人もいなくなったので、先生、若先生と呼ばれていた治療院の医術師に治癒魔術を教えてもらうことにした。

「今日はシダさんだけかな?、エリステラさんはいっしょじゃないのかい?」

 シダというのはシアに偽名である。同じようにエリステラというのがエステラの偽名だった。

 若先生はエステラに薬漬けにされているせいか、彼女のことを気にかけているようだった。

「エリステラは3階にワックスかけてるから、しばらく戻ってこない。それより早く、前の続き教えて」

「そうかい・・・。ええと、前は治癒魔術が特別だって教えて、術の発動を体験してもらったんだったね」

 治癒魔術は誰でも覚えられるスキルではない。固有スキルではないが、シアが種族/龍を持っているから《探索眼》を覚えやすかったように、なんらかの理由によって使える、使えないがわかれる魔術らしい。

 その理由はわかっていない。ただ、どうも術者の性格に向き不向きがありそうだという話だった。

「やっぱり近いのは”魔”属性の魔術かな。あれも魔素を使って対象に特殊な効果を与えるものだから、”魔”属性が使えるようなら治癒魔術もできるかもしれないよ」

 ”魔”属性はエステラが最近覚えた属性だ。治癒魔術からではなく、”魔”属性から覚えていってみたほうがいいかもしれない。


「ひとまず、治癒の感覚を共有してみようか。手を出して」

「ん。」

 シアの手を包み、若先生が治癒魔術を使う。シアの体内で発動した治癒魔術が、シアを癒す。

「・・・はい。あとはこの感覚を魔素で再現できるようになれば、使えるようになると思うよ。ただ、前にも言ったように治癒魔術はできる、できないがはっきりした魔術だからね。特に魔族は使えるひとが他の種族より少ないから、無理はしないでね」

「はい」

 シアはうなずいて診察室を出る。さっきの感覚を忘れないよう、待合室のいすに座って再現してみるのだった。

「・・・うーん、うーん」

 さてはて、モノになるだろうか。

 難しいかな。


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