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邪武器の娘  作者: ツインシザー
魔族領 軍隊編
114/222

特殊警備部隊3


 式典の前夜。

 シアは、12歳になった。外見年齢はまだ13歳くらいだろう。

 一年で世界に大きな変化があった。

 失くしたモノが大きすぎて、前に進む方法を見失いそうになった。

 これど今はここにいる。

 シアは、まだすすんでいく。


「シア、おめでとう。明日は魔王様がその位に就任する日ですね」

「お嬢様」

「聞いていいかしら」

 お嬢様がシアの隣に立つ。

 空は雲っていて星が見えない。

「シアは、どうしたいのですか?」

「お嬢様。・・・私は、魔王を変えたい。魔王に与えられた”呪い”を変えたい。方法はわかんないけど」

「そう」

 お嬢様は静かに首肯する。


 魔王には”呪い”と言っても間違いではない不思議な効果がある。けれどそれは、魔王だけではなく、魔族全部を呑み込んでゆく呪い。

 だからシアは、それを何とかしたいと思っている。

「・・・わかりました。私も探してみましょう」

「ありがとう。お嬢様」

「当然です。あなたの、主なのですもの」

 お嬢様が胸を張る。

 これがオレたちの主。自慢の主だ。

「・・・そういえば忘れていましたが、あなたのそのシアパパは、やりたいこととかあったかしら?」

 オレ、忘れられてた。

 いいけどね、影が薄いし。

「・・・髪も」

 それは薄くない。むしろ無い。

 やりたいことか・・・

 あるっちゃあるが・・・

 うん、

「・・・パパは、ヒュリオを止めたい。ヒュリオが起こす災害を、できるかぎり止めたい」

「・・・聖剣の破壊で起こる災厄、でしたか」

「ん。私も・・・ううん。」

 シアは一度首を振り言い直す。


「私は、ヒュリオを殺す」


 それは宣言だった。

 同じ日に生まれて、同じ運命を背負わされて、そして敵になった二人。

「・・・理由を聞いてもいいかしら?」

 シアが人を殺す、と言うのは相当のことだ。昔は人を滅ぼすと言っていたこともあったが、今は人を憎むこともほとんどない。

 むしろ大切さを知っている。

 だからこそ、理由が知りたかった。

「ヒュリオは、パパをうばった。わたしから、2度。パパだけは・・・私のだから。だから、殺す」

 2度・・・?

 聖誕祭の夜に一度・・・もう一度はいつのことだろうか。

 シアはオレの疑問には答えなかった。

「・・・そう。話を聞く限り、そのやりたいことを肯定したものか迷いますが・・・いいです。ヒュリオを探す手伝いをしましょう」

「お嬢様・・・」

「いいのです、シア」

 シアはお嬢様に抱き着く。お嬢様もそんなシアを優しく抱きしめるのだった。


「まって、ちょっとおまちなさい!」

 ガサガサと脇の藪から現れたのはエステラだった。いつから潜んでいたのか知らないが、ずっとシアのそばにいたらしい。・・・本当、なんでだ?

「不審者・・・」

 そうだな。

「違いますわっ。それより、今の話、詳しく教えなさいっ」

 今の話とはどれのことだろう?。

「今の、災害がどうとかいうやつですわっ」

「ん?。災害は、ヒュリオ・・・同じクラスメイトだった、ヒュリアリアが起こした」

「なんですってぇぇぇーーーっ!」


 そうか。知らなかったっけ?、一応ヒュリアリアを指名手配してもらった時に・・・いなかったか。

 彼女は彼女で首都から逃げ出せた人の確認に追われていたんだ。

「で、では魔族のしわざだと思って、こうして単身魔族領に残った意味は・・・いつかボロを出すだろうとシア様を監視していた意味は・・・!」

 おい・・・

 いや、そういやエステラはシアが《ノコギリ草》を使った所を見ていたっけ。なら怪しんでも仕方ないのか。

 でも、この娘・・・シアを裏切る気満々だったってことか

 よし、今のうちに矯正しよう。

「いっそ、処す・・・」

「ひぃっ、ごめんなさいですわっ、でも、でもでもっ、きちんと説明してくれていればっ」

 まぁ、自国の首都がなくなった理由を知らされてないというのもかわいそうなことではあるな。一番知るべき人間が知らなかったわけだし、ここらできちんと説明してやるか

「・・・わかった。あの日のこと、全部教える」

「・・・よろしくお願いしますわ」


 少し長い説明だった。途中でお嬢様がみんなの分のお茶を入れてきてくれた。そして話は進み、ようやくすべての説明を終えた。

「・・・・・・そうでしたか」

「ん。だからパパの中には聖剣が持ってたスキルの半分のスキルがある。次の聖剣を壊すには、パパみたいな邪武器が必要になる。グラスマイヤー領で、一応邪武器を持つ亜人の捜索もたのんでおいた」

「頭がこんがらがりそうですわ」

 シアの誕生秘話からオレの存在理由まで、いろいろ教えたからなぁ。


「・・・・・・確かに、その話を信じるならば、シア様がグラッテリアを崩壊させた犯人ではないのでしょう。・・・私が復讐するべきは、そのヒュリオ。なのですわね」

 そうなる。というか、復讐するために今まで頑張ってきたのか。

 いくつか不思議だったエステラの行動理由がわかった。

「シア様、今更でこんなことを言うのは許していただけるかわかりませんが・・・どうか、あなたの復讐に私も参加させていただきたいと思いますわ。もし叶うのならば、いいですわよ。私はあなたに従います。あなたの忠実な配下になりますわっ」

「せっかく、面白メイドなのに」

「戦闘用メイドではなくて!?」

 エステラはコホンと咳をして真面目な表情にもどる。

「・・・返事は、いただけませんか?」

「ん。いいよ。あなたを、私の配下にする。」

 契約は成されている。けれどそれは形式上の物でしかない。シエスの進退を決めるために急ぎで交わされた、ほとんど形だけの物。

 今、シアとエステラは二人の合意の上で、きちんとした主従を結んだ。

「よろしくお願いしますわね、ご主人様」

「ん。」

 二人は手を結びあい、シアに促されてお嬢様も加わる。

 一つの輪ができていた。

 たまには、オレもいれてほしい・・・。



「そういえば、お嬢様のやりたいこと、は?」

「私ですか?、・・・軍に入ってバリバリ・・・としか考えていないので・・・戦えればうれしいわね」

 それは、人であっても?

「そうです。シアは嫌がっているようですけど、争うことは悪ではありません。知を競い、勇を比べる。戦争とはその一場面でしかないのですから」

 なるほど。人と戦うのも、それは相手の気持ちを尊重することの一つということか。相手の今までの研鑽を、そして自身の研鑽をぶつけあう。

 殺したくはないが、殺すのなら、その時はきちんと相対しよう。

 そう、決意した


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