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邪武器の娘  作者: ツインシザー
魔族領 軍隊編
113/222

特殊警護部隊2


 特殊警護部隊にはおかしなメンバーが多い。

 部隊集めの方法が軍隊行動に適してないような奴らばかり選んで集めたからだろう。

 そのなかでも一番の変わり種は、魔物をつれた魔族だった。

「・・・・・・すごいですわね。あなた、魔獣使いですの?」

 夜の食後のことだった。前までなら死んだように食堂のテーブルにつっぷしていたエステラだが、最近はそこそこ起きていられるらしく、周りに目を向ける余裕があった。

 その彼の周りにはまるで動物園のように多種多様な魔物が控えている。食堂の一角は彼と彼の動物によって占有されている毎日だ。彼、確か名前は・・・タシム。タシムさんだった気がする。

「魔獣使いをご存じでしたか。そうですよ、ボクはみんなの友達で、主なんです」

「・・・その兎みたいな魔物、かわいいですわね」

 エステラは白くてちょこんとお座りしている兎の魔物を見ながらそうつぶやいた。彼も合点がいったようで、一声かけると兎が近寄ってきて彼の腕に抱かれる。

「抱いてみますか?、強く抱いたりしなければ危ないことはないですよ」

「いいのですか、うれしいですわっ」

 ふわふわしている兎をぎゅっと抱きしめ、わしゃわしゃとなぜる。


 ・・・うむ。いい。

 エステラでなければもっといい絵になる気がするが、やはり動物と少女の組み合わせはいい。

「・・・・・・」

 おや?今どこかから冷気が?なんてことを感じながら眺めていると、エステラも気が付いたのか、こちらに視線を向けてきた。

「シア様、これ飼っていいですか?」

 よくねーよ

「ボクのですからっ」

 方々から注意が飛ぶ。

「・・・・・・これ以上、動物は増やさない」

「え?、動物なんていないですわよね?」

 エステラが記憶を探る。せいぜいお嬢様の館で飼っている番犬の双頭のわんこくらいだ。

「パパと、エステラ。」

 パパは動物じゃないぞー「私はペットじゃないですわよっ」

 動物というのならもっとなぜてくれていいし抱いて寝てもいいしなんならお風呂にごりごりごりごりいたいいたいいたい

 まったく・・・

 しかし魔獣使いか。存在自体は知っていたけれど、オオトカゲ、グリフォン、リザードマン、燃える馬、動く木、しゃべる花、おおきなアリンコとかとか、本当にいろんな魔物が傍にひかえていた。

 グリフォン・・・いいなぁ、乗れるのかなぁ。

 シアはリザードマンが気になるようだった。


「ったく、獣くせーのにさらに女くせーぞここは。いつから食堂は女子供の遊び場になったんだよ」

 嫌悪感を振りまきながら食堂にやってきたのはイノシシの魔族とオオカミの魔族の二人組だった。

 確か冒険者として名前の知られたペアらしく、顔合わせの時の紹介時にちらほら知っていると言う声が上がっていたメンバーだ。

「くくく、兄者よ、これはきゃっきゃうふふという存在らしいです。女子供と動物を組み合わせて金をとる、最近の流行なんだとか、気をつけんと兄者も懐をすっからかんにされかねんでずぜ」

 あながち間違いではない。

「けっ、こんなんが金になるならオレとおめえが組み合っただけで金がもうかるわ。おい、お前の動物くせえから外で飼えよ外でっ」

 イノシシ顔がそう言うが、それを聞いている外野からすると、お前もじゃ・・・?という疑問が沸き上がる。

「ったく、聞いてんのか?、おい。つーかオレらの近くには来るなよな。魔物と間違ってぶっころしても文句言うんじゃねーぞっ」

 それだけ言って出て行く。・・・何しに来たんだ?。食事の時間は終わっている。お茶でも飲みに来たのだろうか。


「フッ・・・彼らはしらないのでしょうかね。女子供とあなどった相手がどなたなのか。入隊式に出なかったようですから、あの衝撃のイベントを見ていないのでしょう」

 今度は別の所から声がかかる。

 最近シアの後をちょこちょこついてくる長髪の男だ。どうやらタールト様をぶったおしたことでシアに着眼しているようだ。

 あの事件でシアは他の隊員から距離を取られるか、逆に尊敬の目で見られるか・・・どのみち距離を取られる原因になっていた。

 こうして声を掛けてくる存在はむしろめずらしい。

 名前をグリムアレン・シャリアニア。二刀流の騎士だ。

 彼は子爵位を持つのに配下がいないという変わった存在である。ただ・・・それには理由がある。彼は戦闘狂バーサーカーなのだ。

 一度スイッチが入ると目に入る敵を殲滅しきらないと止まらない性格らしい。その時は物陰に隠れていてくださいと頼まれている。

 そんな感じの部隊員が他にもちらほらいる。

 面白いと言えば面白いが、こんなメンバーが一つの目標にむかって協力する未来が正直みえない。

 先行きが不安だ・・・




 さて、そんな部隊にも初任務が与えられた。

 4か月。

 ずっと訓練ばかりだったので、ようやくという感じである。他の部隊はすでに警備任務や哨戒任務が始まっていた。

 川辺の空き地に部隊員が全員集められ、任務の内容を告げられる。

「貴様らの初任務は魔王様の戴冠式、その警護だっ。こんな大役をいただけたこと、喜べっ。たーだーし、警護といってもただの警護じゃぁない。観衆に紛れて観衆がおかしなことをしないか監視する仕事だっ。いいか、チームワークができないお前らにはぴったりの仕事だろ。死ぬ気でやれっ」

 とうとう魔王様が表に姿を現すのか・・・。シアの誕生の秘密からすると、シアと同じ11歳か12歳のはずだ。まだ若い。けれどいい加減、隠し通せなくなったのだろうという気がする。魔族軍の再編から軍事力の拡大、最近は魔物の凶暴化のうわさも聞く。人間でも気が付くはずだ。

 そして魔王が生まれれば・・・殺される。

 それは運命で定められたように、必ず起こる未来。

 この任務はそれを防ぐことが目的なのだ。

 細かい概要が説明される。

 ・・・・・・チームワークができないと言っていたが、必要な任務に聞こえるのだが。

 部隊を三つに分けた各15人の主・・・10チームが別々に配置に突き、周囲の観衆を監視し、定期的に特定の位置にいる連絡役に合図を送る。

 合図があれば周囲4人が行動し、開いた穴を別のチームと合同でふさぐ。

 それを式典の3時間の間、行うのである。


 チームに分かれての作業訓練が始まった。

 ・・・の前に

「流石に魔物はまずいんじゃねーか・・・?」

 タシムの配下にイノシシ顔が待ったをかけた。

 そうね。観衆の中に魔物を配備するのはいらない騒ぎを起こすだけだと思う。

 タシムはしょんぼりしながら指示を出す。配下の魔物たちは訓練場の端へと移動する。

 ・・・いきなり戦力の大半を奪われたチームメンバーが出たんですが!

 それでも訓練は続く。

 前の方に配下の多い主を置き、後ろに少ない主を置く。後ろ――遠い方は、たとえ魔王に害意を持つ者がいても式典の舞台への干渉がほとんどできないだろう、というわけだ。

 お嬢様は後ろに配置された。タシムやグリムアレンと同じような場所である。・・・あとイノシシとオオカミの二人組とも。

 だいぶ周りが不安なのだけれど・・・まぁ、不届き者もそんな後方にはいないらしいから平気かね。

 こうして少しずつ準備が進んでいく。


”魔王”の誕生がやってくる。


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