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邪武器の娘  作者: ツインシザー
リザード集落
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リザードマン

 リザードマンの集落は湿地に囲まれた湖にある。湖といっても水深は浅く、水草が浮き岩場が所々に生えている。

 その岩場と岩場を木の足場でつなぎ、木と草で編んだテントのような家に住んでいる。

 この集落に外壁はない。見張りはいるが、湿地が天然の障害として機能しているのだろう。

 なんとも面白い場所だった。

 ファンタジーすげえなぁ。


 さて、他のリザードマンから帰還を祝われたあと、長らしきリザードマンの拠点に向かった。

 そこで何を言ってるのかわからんやりとりをぼーっと見せられていたのだが、一つだけ明確に分かったことがある。


 オレ、探索リーダーに下賜された。

 リーダーの使う武器として、槍として、リザードマン長老から持っていけとばかりに手渡されたのだ。

 しかたねぇ。この身からあふれる強者のオーラがリザードマンにもわかっちまったんだぜ。


 動揺はしていない。

 武器として連れてこられた時点でそうなるかなと思っていたし。

 倉庫でほこりをかぶらないだけましというものだ。


 と、いうわけでオレはシアから引き離され、3か月がたった。


 リザードマンにも階級というか、進化度合いがあるらしい。

 とりあえずの仮称として

 コモンリザードマン

 ハイリザード

 リザードリーダー

 としよう。


 コモンは村の生活を廻している。子供や女性体らしきものがこれだろう。戦闘に関らないからか体が細く、背も小さめだ。


 ハイリザは戦闘にかかわる兵士をこなせる個体だ。だがどうやらスキルが使えないらしい。コモンより頭一個分大きい。


 リーダーは洞窟を探索した個体だ。スキルが使え、この集落では一番強い者たちで他のハイリザを束ねる。コモンとあまり変わらないがウロコの体表色がハイリザよりも濃い。

 ハイリザ10体に対してリーダーが2体の割合で存在する。オレを持つリーダーも5体のハイリザが部下としてついていた。

 リーダーの中でもさらにリーダーを務めるのがオレを持つリザードマンだ。リザードリーダーと進化度合いは同じだが、彼らの中で従う何かがあるのだろう。

 ちなみに長老は年老いたハイリザだ。

 コモンのことはよくわからない。あまり女性体の区別がつかないせいだが、彼らは武器を持って家の中には入らないらしい。そのせいで生活の一部しか覗き見ることができない。


 武器は家の前に置く。どうも個体ごとに武器の形に違いがあるらしく、それを見れば誰がどこにいるのか把握できるようだ。いわば玄関に置かれた靴である。

 武器はどれも槍しかない。もしかすると武器の種類ごとにも能力値があり、リザードマンは槍しか能力がないのかもしれない。


 シアはコモンの子供たちといっしょに行動している。

 まだ3か月しかたっていないのにもう集落の中を立って走っているのをたまに見かける。やばい成長速度だ。まぁ野生の草食動物が生後一日にして立つよりは遅いか。

 シアは割ととけ込んでいるように見える。


 いや、リザードマン達がシアを仲間のように扱っているからだろう。

 ここにはゴブリンの捕虜がいるのだが、そっちと同じように捕虜扱いだったなら、あんなイキイキしてはいなかっただろう。

 シアが笑顔なのはいいことだ。


 ここにはゴブリンの捕虜がいる。これはこの近くにゴブリンの集落があることが理由だが、それとは別に思惑もあるようだ。

 ゴブリンのコモン種はスキルが使えないが装備している武器が多い。剣に短剣、斧、槍、弓、棍棒とかなり器用な種族らしい。

 そのせいだろうか、リザードマンはゴブリンを相手に戦闘訓練をしているようだ。

 コモンリザードやハイリザードで単対単、複対複の訓練をしている。もちろんゴブリンの方は訓練ではない。リザードマンの持っている装備や装飾品、お宝がほしくてやってくるのである。

 ゴブリンを捕虜にしてそれらの品をちらりと見せびらかし、そのあと捕虜を解放する。すると仲間のもとに帰ったゴブリンが徒党を組んで襲撃に来るのだ。


 解放してから襲撃に来るまでだいたいの間隔がわかっているらしく、ちょうどよく訓練につかわれている、かわいそうな種族である。

 そうして訓練をして、別にあるオークの集落と戦いを行うのだ。


 さて、リザードマンは”戦士”な種族である。

 一族総じて槍を持ち、戦うための訓練をかかさない。

 一日の半分くらいは戦いのために費やしている感じだ。

 体を鍛えることもそうだが、装備の手入れや付近の魔物の動向の調査、縄張りの安全確保・食料となる魔物の狩猟も時間に含む。

 他の時間は釣りや日向ぼっこ、水浴びや編み物などをしている。


 シアは自分に合った長さの槍をもらった後、装備の手入れから訓練が始まったようだった。


 4年がたった。

 今日、シアが初めてハイリザに交じって狩りをしに行く。


 まだ生まれてから4歳のはずだが、槍を持って立つ彼女の身長は10歳くらいに見える。

 女の子は成長が早いとはいえ、流石に早い。

 黒い髪は長く、毛先の方を三つ編みに編んであった。顔立ちはまだ幼いが将来性は期待できる。ただし赤子のころから目つきが悪かったが、どうやらそのまま育ってしまったらしい。

 左目は黒く、右目ははっとするほど威圧感のある金色だ。

 実に攻撃的な目をしている。


 今日は同じく初めて狩りを許可されたらしいコモンリザードマン4体といっしょにハイリザの戦闘に連れていかれ、大猪を狩りに行くらしい。新人参加ということもあり、リーダーが2体付き添いでついていくことになっている。その一体がオレを持つリザードマンだった。このリーダーを他と区別するためにハイリーダーと呼ぼう。

 おかげでやっと。やっとシアといっしょに行動できるっ


 あぁシアあああシアやっとお前といっしょだよっ

 ほらほらパパだよー覚えてまちゅかー


 死ねって目で見られた。

 良かった。念話はまだ可能であるようだ。


 オレの独り言が独り言ではなくなったのだ。この4年間辛かった・・・オレの心の声を拾ってくれるものがいない状況は、心が壊れるかと思った。発狂モノである。


 しかし何でオレの声をシアだけが拾えるのだろうか。

 あの洞窟でシアの卵とオレは隣り合って置かれていた。まるで最初からペアで用意されていたように。いや、そうなのだろう。

 置いたやつが誰なのかはわからないが、オレとシアはセット物として用意されたのだ。わざわざ手間暇かけて用意するだけの理由が、きっとあるはずだ。

 たぶん。おそらく。


 あるなら聞いてみたい。ついでにオレが何で武器なのか問い詰めたい。

 せっかく異世界転生するなら無双したかった・・・・・・。


 ともあれ、ようやくシアがスタートラインに立った。

 戦士としてのスタート。

 ようやくだ。


 ちなみにオレはハイリーダーのおかげで経験値うまうまな4年間だった。


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