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優しい魔王サマ  作者: いつき
オマケ・短編
30/40

オマケ 其の十

「なぁ、ユキノ。確かにユキノが死ぬとき、俺は泣くし死を恐れるだろう。

置いていくなと、懇願するかもしれない。だけどこれだけは覚えておいてくれ。俺はお前と出会ったことを、絶対に後悔しない」

 唐突な話に、一瞬雪乃は意味が分からないと首をかしげた。

「どうしたの、いきなり」

「いや、ユキノといると、一日が長く感じるから……。

お前が死んだあと、俺はこの長い一日一日が耐えられないかもしれないと、そう思っただけだ」

 ジルがゆっくりと雪乃の体を引き寄せる。抵抗もなく納まった雪乃の髪に顔をうずめながら、ジルは呟くように言った。

 雪乃はくすぐったそうに身をよじりながら、その手を逃れようとはしない。

「そうね……。忘れてくれると、いいな。もしわたしが死んだら、すぐ忘れて。わたしは。死んだわたしは、ジルを慰められないから」

 ぽんぽんと右肩に乗ったジルの頭を叩く。その右手をジルは掴んだ。

「悲しいことを言う」

「だって泣いてるジルなんて、可哀想なんだもん」

 ジルが右手首に口付ける。それはそのまま頬に移り、やがて唇へとたどり着いた。

 唇を寄せつつ、二人は会話と続ける。肌同士が当たるかどうかという距離で、互いの息がかかる距離で、瞳をあわせた。

「じゃぁ、死ぬ寸前までそばにいてくれ。ユキノが俺のそばにいる限り、俺はどんなことをしてでもお前を守ろう」

「恥ずかしいことを平気で言うよね、相変わらず」

「そうか??」


 多分、この問題は一生二人に付きまとうんだろうな、と思いつつ。



      ――――――――――――――――――――――――――――――



 雪乃の手を、ジルがいきなり掴んだ。

 そしてそのままベッドの中へ引きずり込む。雪乃は一瞬呆然としたあと、ジルの腕から逃れようと手足をジタバタと動かした。

「ジルーー!!」

「……ん?? ユキノか」

「何? どうしたの」

 腕から逃れることを諦めた雪乃は、そっとジルの顔を覗き込む。

 するとジルが苦く笑った。眉を寄せ、眦を下げつつそれでも口元は柔らかい笑みを作る。

「悪い、夢を見た」

「どんな」

 雪乃がジルの頭を抱え込む。

 胸に埋もれるようにして、ジルは言葉を紡いだ。雪乃の腹に擦り寄るようにして抱きつきだす。

「雪乃が、人間の男とどこかへ行く夢だ」

「まさか」

「『わたし、やっぱり同じ時間を生きる人と生きたいの』

……そう言われて、引き止める言葉がとっさに出なかった」

 ぎゅっと、ジルの腕に力がこもる。痛みがじんわりと広がったが、雪乃は何も言わなかった。

「ジル、わたしの夢も、言っていい?」

「どんな夢を見た?」

「この前ね」

 雪乃がジルの髪をさらりとなでる。

 小さくその髪へ口付けたあと、泣き笑いのような表情を作った。しかしその表情はジルに分からない。雪乃は再びジルを抱きしめて、やっと言葉を紡いだ。

「わたしがね、ジルを殺しちゃうの。ジルは何にも抵抗しなくって、それが少しだけ悲しかった」

「あー。それはしようがないな。俺は雪乃がくれるものなら何でもほしいから」

 たとえそれが、死だとしても。

「馬鹿だねぇ」

「そうか」

 ジルが雪乃の体を離し、見つめ合う。しばらくして、小さく二人で笑いあったあと、また唇を合わせた。

「夢見が悪いと、目覚めてからも嫌なことが多いと思っていたが、そうでもないらしいな」

「そう?」

「たまにならいいだろう」

 そうやって、二人で笑あえば、悪夢はきっと、悪夢じゃなくなる。


 結局バカップルな二人が書きたかったというだけです。




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