オマケ 其の七
「お母様」
「おかあさまぁ」
「お帰りになるの?」
「の?」
「うん。ちょっとねぇー。って、うわぁ」
「帰るのか」
「うん。……いきなり後ろから抱きつくの、本当に止めてくれる? 心臓に悪いから、冗談抜きで」
「予告したらいいのか」
「そういう問題でもないんだけどね……、言っても無駄か」
「お父様ずるーい」
「イー」
「なっ」
「ボクも抱っこ」
「スーちゃんも抱っこ」
「ハイハイ。おいで」
「子供には甘いな」
「お父様ほどではないけどね」
「そんなことはない」
「はい、終わり。お母様はお仕事に行ってきます」
「別に仕事しなくてもいいだろう。王族なんだし」
「わたし、一応あっちでは一般庶民なんですけどね。善良な一般市民ですよ」
「それにしては気品がある」
「…………(こいつは一体何なんだ)」
「早く帰ってきてね」
「ねー」
「頑張ってくるよ」
「気をつけてな」
「うん。また子育てよろしくお願いしますね。『魔王サマ』」
「了解した」
「じゃあ、いってきます」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃい」
「スーちゃん、おりこうね。エドくんも」
「やっぱり子供に甘い」
「焼きもち焼くのね。ジルでも」
「それはな」
「珍しい」
「そんなに珍しいことでもない」
「えー。全然そんなふうに見えないよ。(最近は、ね)」
「隠してるからな」
「ふぅーん」
「隠さなくてもいいのか?」
「……、いや、隠しておいて」
「今何を考えた?」
「いや?(誤魔化しながらニコリ)」
「考えたろ」
「お母様?」
「サマ?」
こんな未来も案外アリ??
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「あー、帰りた……」
「どこにだ」
「どこにって、あっち」
「お前の家はここだろう」
「わたしの家を見たら、ジルはカルチャーショックをうけるね、絶対。賭けてもいい」
「ユキノと一緒ならどこへでも」
「うちの親がびっくりするだけだよね……」
「帰るたびに、出戻りだと勘違いする親御さんのことだな」
「うん、毎回『結婚相手を連れて来い』ってうるさい親」
「申し訳ないな、奪っておいて挨拶にも行かないというのは」
「しょうがないでしょ」
「そう言ってしまえばそれまでだがなぁ」
「帰りたい」
「いつか挨拶したいな」
「とりあえず、未来を考えるより明日のためにわたしを放してくれませんか」
なんだかんだ言いつつ、雪乃を放さないジル。