表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
優しい魔王サマ  作者: いつき
オマケ・短編
26/40

オマケ 其の六

「私たちの間に、愛なんてないでしょう?」

 ノアが楽しそうに笑う。

 桜はきゅっと唇をかみ締めてから、握っていた手を開いた。じっとりと汗でぬれていて、不快にしか感じない。それが桜をいらだたせる。

「何が、あるの?」

 ノアがまた、ニヤリと口角を上げた。

 この時点で気付いておかなければいけなかった。こいつへは注意しても、しすぎるということはないのだと。

「狩るものと、狩られるものの上下関係」

 そういうとノアは桜の手を掴み引き寄せる。激しく口付けられて、膝ががくりと折れた。

「絶対に、あんただけは好きにならない」

「知っておりますよ。私も、あなたを愛していません」

 またそうやって、口付ける。桜の手がノアの服の裾を掴んだ。ノアの手は桜の頭へと回る。そして左手は腰へ。

「ですがそうですね、しいて言うならば、あなたの血の味を、愛しています」

 首筋に口付けられた瞬間、落ちた、と桜は小さく呟いた。


 こちらはこちらで何か分からない。



      ――――――――――――――――――――――――――――――



「とっておきの、夜の過ごし方を教えて差し上げます。いかがですか?」

「この、鬼畜、悪魔、吸血鬼っ!!」

 ノアの瞳が怪しく光り、桜は軽々と抱き上げられた。

「いい眺めですね」

 そう言って、ベッドへ投げ上げる。

 どさりと重く音が響いて、桜の服がふわりと空気を孕んだ。桜が起き上がろうとひじをつくと、すかさずノアが膝で押しとどめる。

「赤く熟れた頬も、潤んだ瞳も、薄く開いた唇も、私を誘っているのですよ」

 ぞわり、と頬をなでられた瞬間、桜の背筋に寒気が走る。しかし同時になんともいえない感覚に襲われた。

「あなたの嫌がる仕草は全て、男を煽るモノです。まったく、無意識とはタチが悪い」

「余計な、お世話」

 ぎゅっとノアの指の感覚から逃れるように目を瞑る。

 しかしそんなことできるはずもなく、ノアの手が上下する度にわずかに肩を揺らした。そんな桜を見ながら、ノアは小さく笑い声をもらす。

「これだから、あなたの血を吸って以来、誰の血も吸えなくなったんです。どう責任をとるおつもりで?」

「あんたに餌付けするのは、あたしだけで十分でしょう」

 ぐっと桜の手がノアの手首を掴んだ。ノアは笑みをかみ殺し、桜の手に口付ける。その感覚にさえ、桜は肩を震わせる。

「一つ聞いていい?」

 ノアの手が桜の服の裾にかかる。するりと手が入り込んで来て、肌の表面を撫でた。

「どうぞ」

「あんたの心に見合う、血の量っていくら?」

「あなたの血、全てですかね」


 あれー。桜ちゃんがただのいじめられっこになっていく。



      ――――――――――――――――――――――――――――――



「血を吸われてる間だけ、あたしはあんたの一番?」

「そうですね」

 くすり、と桜の首筋を舐めながらノアが言った。桜はノアの背中に回した手に力を入れる。

「では吸われている間、あなたの一番は誰ですか」

「そんなの……、わから」

 分からないと言おうとした瞬間、ノアの牙が深く穿たれる。

 ぎゅっとノアの背中に爪を立てた。意趣返しのつもりで、痛みの分だけ爪を立てる。ジュルリ、と液体をすする音が耳元でした。

「一言で済むでしょう」

「誰だって、言わせたいの」

「『ノア』と、ただ一言言えば、くれた血の分だけ、守ってあげます」

 桜の口元が一回きゅっと絞られたあと、恐る恐る開かれた。


 この二人を書くと、いっつもこんな感じ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ