表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
優しい魔王サマ  作者: いつき
オマケ・短編
21/40

オマケ 其の一

 本編終了後すぐになります。気の抜け方が凄まじい、といいましょうか、本編とは毛色が違うお話です。なお、オマケシリーズは大体こんなゆるいノリですので、ご注意ください。

今回は雪乃は出てきません。

「どうして帰したんですか、陛下」

 背中を見れば、あの少女を帰したくなかったというのが丸分かりだ。心なしか、ドヨーンという効果音が入っているようにも見える。錯覚などではないだろう。

 背中が、寂しいと言っていた。

「ユキノが、答えを出したから、だな」

 あの瞳に、どうも弱いらしい、とジルは苦笑いした。

 美しい顔が寂しげにかげる。なかなか様になっている、などと言える人物はここにはいない。が、お人よし、とここにいる誰もが心の中で呟いた。

 王の心情を慮りつつ、周囲の人はそっとため息をついた。あの少女のことだ、強引に言えばここに残るという選択肢も、なかったわけではないだろうに。

「しかも、ユキノの答え方もあいまいでしたしね」

 ルークがちくりと痛いところをついた。

 無自覚とはいえ、それがジルを傷つけないとも限らない。ドヨーン、という効果音がさらに大きくなったような気がしたノアは、また小さくため息を吐く。

 つくづく、面倒ごとをひっきりなしに起こしてくれる主である。

「大切って、友人として、でしょうか」

「どうでしょう」

 でも落ち込むジルの姿もいいものがある、と一瞬思ってしまう加虐趣味のノア。

 ついついルークの問いに返して、頷いた。傷に塩を塗る行為だと分かっているので、ルークよりたちが悪い。

 そのことを分かったジルはむっと口をつむいだ。

 ごう、と魔力が渦巻く。そこでやっとルークは事の重大さを悟ったらしい。

 白目をむいて倒れそうになる。すかさず、ノアが蹴りを入れて意識を取り戻させた。一人でこの魔王を相手にするなんて、命がいくつあっても足りない。

「で、でも今回限りではないですよねっ。行き来できないんですか?」

 とりなすようなルークの言葉に、今度はノアが難しい顔をした。

 術式が正しければ、向こうとこちらを繋ぐ道は残るということになる。しかしそれをルークが口に出すと、ノアがすかさず手を左右に振った。

「一回きりの術式なんですよ。実はコレ」

 不安定な空間を無理矢理ゆがめ、道を作ることがそもそも難しい。その道を半永久的に持続させることは不可能に近い、というのが大体の人間の言葉だ。

「しかも時間がかかる上に複雑なんですよ。失敗すれば、人は時空のはざまに閉じ込められることにもなり得ますし」

 ユキノをそんな危険にさらすのは、ね。とノアが笑った。

 まともなことを言うこともあるもんだ、とルークが思ったのもつかの間、『と、魔王陛下が』と補足が入る。

 まぁ、そんなところだろうと、ルークは肩を落とした。

「え、じゃぁ、何で帰したんですか。危険って言ったじゃないですか」

「今日はよかったんですよ。今日は。僅かながらも賢者が繋いだ空間の道がまだ残っていましたし、今日は新月。――私たちの力が強まる時期です」

 よくもまぁ、こんなときにここへ来ましたね、勇者様。

 ノアの笑顔が黒すぎて、ルークは一歩下がった。ちょっと危険な感じがする。主に命の方面。

「ユキノの見送りくらい、したいじゃないですか」

 精一杯の抵抗だった。が。

「勇者様もユキノが好きですねー」

 我が魔王陛下といい、あなたといい。

「賢者はモテる人間らしいですね」

 ピクリと、会話に入ってこなかったジルの肩が動いた。

「俺は諦めの悪い魔王だからな。また方法を考える」

 ばっとマントを翻し、ルークを見た。

「貴殿とは積もる話もあろう」

 そして問答無用でルークの首根っこを掴む。“え? 何ですか。ちょっ……” という、戸惑いと恐怖の混ざった悲鳴が城中に木霊した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ