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0.24 雲雀 どうして僕たちは

 魁君の言葉も気にはなった。

 けれど。そもそも、全部。なんだかよく分からなくて。

 輪郭が掴めない。

 言葉通りのことは理解できる。

 けれど、それが具体的にどういうことなのか。

 想像がつかない。


 それじゃあ、とオレは続ける。

「“共鳴”って何? “抑止”ってどういうこと?」


 魁君は困ったように笑って「そうだなぁ」と呟いた。

「言葉で概要を説明すると……“共鳴”によって自分を思い出しながら丹と“同調”して、そのまま丹に強い衝撃を与えると、丹の活動を“抑止”、つまり“無害化”することができる」


 オレが眉間にシワを寄せると、魁君があはは、と笑って肩を叩いた。


「こればっかりは自転車に乗るみたいなもんだから……感覚で覚えるしかないよね。

 そうだねぇ〜……。簡単に言えば、丹は黄泉の国から来ちゃったお友達。

 このお友達とお話しする力が“同調”って言われる力。引き寄せられてることに気付いてコントロールする器だね。

 で、そのお友達はいつも仲間を探してて、俺たち人間を丹にしようとして来るわけ。

 でもやじゃん? それ死んじゃうって事だからさ!」


「うん」


「だから、器のある、お話し出来る俺たちが、みんなのこと丹にするのやめてよ! って叱り付けて、丹には文字通り黄泉の国にお帰りいただくわけ。

 で、ここで重要なのは。丹とお話しすればする程、丹と“同調”すればするほど、俺たちも丹になっていっちゃう、丹電子障害になっていっちゃうってこと!

 一言話すならまだいいけど、しつこい人説得するにはそれなりに会話が必要じゃん?

 いや、ほんとに会話するわけじゃないんだけどさ。

 だから、人間に戻るためには、一緒に“同調”しながらそこに居て“お前人間だよ”って思い出させてくれる人が必要なわけ。

 手綱つけといてもらうかんじ? この手綱が“共鳴”」

「それ」と魁君がオレの手元にあった音叉を指差した。

「音叉は“同調”の器を広げる効果もあるんだけど、“共鳴”を行う為に必要な道具なんだよ」


「じゃあ、さっきオレは、これを使って丹と“同調”して……琉央さんとは“共鳴”してたって事?」

「そうそう! さすが一也! そう言う事!」


 魁君は大きく頷きながら「音叉が何でそういう効果があるのかは、まだ解明されてないんだけどね」とも呟いた。


「それでね!! 一也!」

「っ、はい」

「そもそも! 丹とお話しする時に、たくさんの丹にプレゼンするのが得意か、一つの大物の丹を説得するのが得意かが分かれるし。

 かつ、そもそも丹を説得するのが得意な人と、お前人間だよって冷静に見てるのが得意な人がいるんだけど。

 今回はそれのどっちが得意なのか、正確に確かめる為の訓練でもあった訳だよ!」


「な、るほど……?」


「で、今、琉央くんがそれをゆきちゃんに報告しに行ってるとこ」

 身を乗り出す魁君に少し仰け反りながらオレは「そうなんだ」と息を吐いた。


「それで……結局オレは、なにが得意だったの?」

 オレが尋ねると、魁君はニコニコしながら「ふっふっふ」と得意げに笑う。

「正式には答えが出てないけど」

「……」

「琉央くんが言うには、一也は大物を説得する方が得意で。それでもって“お前人間だよ”っていう方が得意っぽいらしいよ」

 オレは俯いて「なるほど」と呟く。

「その“なるほど”は理解してない“なるほど”だね」

 魁君が笑う。


「どうして能力の得意分野を見定めないといけないかっていうとね。

 “共鳴”は、誰とでも最大の力を発揮できるわけじゃないんだよ。

 だからさっき言った得意分野を見て、最大限力を発揮できる()()を見つける必要がある」


「相棒?」


「そう。で、それって生まれ持った遺伝子で決まるんだよね。

 つまり、努力しても、体質に変化があっても。共鳴の質、得意分野は変わらない」


 そう、とオレは言って俯く。

 遺伝子。

 途方もない。

 自分でどう仕様もないところでオレの運命は決まっていたらしい。

 自分のことなのに自分のことじゃないような気がする。不思議な気分だ。

 実感がわかない。


「それで……」魁君が困ったように笑った。


「一也の相棒は、なんと、残念ながら“瀧源シュン”なんだよねぇー」


 オレは思わず黙り込む。


「……嫌だ?」魁君が首を傾げる。


「………ずっとシュンさんと組まないといけないってこと?」

「まぁ、場合によっては今日みたいに俺たちも共鳴するし。シュンちゃんと同じ体質の人が後から現れればその人と組むことになるかもしれないけど。

 第一“同調”できる人間が限りなく少ないからその可能性は少ないかもね。

 お上から命令される組み合わせだから……まぁ逆らわない方がいいかな」


 オレがまた黙り込むと、魁君が俺の顔を覗き込みながら優しい困った顔をした。


「……やっぱ無理?」

「分かんない」

「……怖い?」

「……怖い、けど、シュンさんが怖いというより、共鳴がよく分からなくて、怖い。なんというか、シュンさんが相棒なのは、別に…」

「うん?」

「…………この気持ちをうまく表現できないんだけど。納得? に近いのかな。でも逆に躊躇する自分もいる」


 オレは考え込む。

 シュンさんに殺されかけたこと。

 (はた)から見たらシュンさんのことを嫌いになるのが普通なんだと思う。


 けれど。

 そんなことより、そんな重大なことよりも、もっと大切なことがあの人にはある気がした。


 それを言葉にできない。

 赤の他人。

 初めて会った人なのに。


 人はこの感覚を「運命の人」と言うんだろうか。


 けれど。

 これはもちろん恋心ではないと思うし。

 放っておけない、とも違う。

 側にいて安心するという表現もこの状況にそぐわない。


 もちろん、怖い。

 けれど、シュンさんが怖いんじゃない。

 それは本当だ。


 きっと。共鳴が怖い。

 共鳴自体が怖い、というのとは少し違う。






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