表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/95

0.19 雲雀 もっともらしい理由も

 厨房まで戻って勝手口を出ると、琉央さんの出してくれた黒いミニバンが縁石の前に停まっていた。


 オレは2列目の席に乗り込んで、黒いツルツルしたシートに身体を沈める。


 助手席に乗り込んだ魁君と運転席の琉央さんが何か話をしていた。

 けれど、オレにはよく分からなくて、窓に寄りかかって黙って外を眺める。


 大通りに立ち並ぶビルの隙間から青い空と太陽が見えて、車の動きに合わせて影が動き始める。


 オレが変わっても、世界の様子や現象は変わらないんだな。

 そう、なんだか不思議な気分になる。


 そのまま。

 大通りを走って10分くらい。

 地下鉄の駅と一体型の商業施設が見えてきて、そこに併設された地下駐車場に入って行く。


 進んだ先、奥に『搬入口につき関係者以外立入禁止』と書かれた大きな可動式バリケードが見えてきた。

 黄色と黒で斜線が入っているやつだ。


 車はそこに真っ直ぐと進んで停車する。


 運転席の琉央さんが、首に下げていた認証用らしいカードに手を伸ばすのが見える。

 バリケードの傍に立っている警護小屋の窓から、痩せ気味の警備員のおじさんが顔を覗かせた。

「にいちゃん、久しぶりだね」

 しわがれた声で、無精髭が生えた口元をニンマリと歪ませる。

「いつもどうも」

 琉央さんが言って、カードを差し出した。

「今日はどんな用事だ?」

「野暮用です」

「いつもそれだなぁ〜」

 おじさんは言いながらカードをリーダーに慣れた手つきでかざして、そのまま琉央さんに返す。


 琉央さんが他人と普通に会話をしている。

 ちょっと意外だ。

 失礼だと思いながらもオレは不思議そうにその様子を眺める。

 おじさんの言葉に琉央さんは面倒くさそうに頷いている。


 そもそも、琉央さんっていくつなんだろうか。

 シュンさんとおそらく仲が良く見えるけれど。


「どうも」

 琉央さんが言って車を発進させる。

 その反動で体がもう一度シートに吸い付けられる。

「いってっ……」

 無意識に前に乗り出していたらしい。

 ぶつけた背中が火傷のせいでとても痛かった。


 オレはため息を吐いて、またおとなしく外を眺める。



 ゲートを通過した先、そこは広くて薄暗い空間で、トラックがたくさん停まっていた。

 搬入出用スペースらしい。

 車はその端を通り過ぎて、その奥にある、車が二台すれ違うのがギリギリな細い通路に入った。

 少し進むと、少し広い空間がまた見えてくる。

 鉄筋コンクリートの地下立体駐車場みたいな場所だ。

 けれど、車は一台も停まっていなくて、奥に機械式の立体駐車場の入り口らしき、鉄の円板が埋め込まれた一角が見えた。


 オレがぼさっとしていたら助手席から魁君が顔を覗かせた。

「そろそろ降りるよカズ」


 はい、とオレは答えてポケットに財布があるか確かめる。

 車が止まる気配を感じて、直ぐに車を降りる。


「こんなところに研究室があるの?」

「驚いたでしょう?」

言いながら降りてきた魁君にオレは「うん」と頷く。


「ショッピングセンターの中にあるの?」

尋ねると、魁くんはまたもったいぶるようにえへへっと笑った。

「中にはないよ」


 オレが首を傾げていたら、立体駐車場に車を入れ終わった琉央さんがこちらに歩いてきた。


「そのうち分かる。行こう」


 そう呟く琉央さんに、オレは唇をぎゅっと結んで仕方なくついて行く。

 空間を真っ直ぐ突っ切きる。

 その先、柱の陰に隠れた非常階段の入り口らしき白い扉の前で二人は立ち止まった。


 琉央さんがカードキーをかざしてその扉を開ける。

 何もない。

 入るとそこはただの白い部屋だった。

 オレは辺りを見回しながら後ろ手でドアを閉める。


 その様子を見届けた琉央さんが、部屋の奥にあった、入ってきた側の反対にあるドアのノブに手を掛ける。

 そうして、ドアの真ん中あたりにもう一方の手をかざした。

 途端、琉央さんの手をかざした辺りが丸く光って、次にはコピー機のスキャンみたいに横長の光が琉央さんの手をゆっくりなぞった。


 少しして光が消えて、琉央さんが手をのける。

 ガチャっと鍵の開く音がした。


 琉央さんがゆっくりドアを開く。


 すごい。

 オレは興味深くて思わずドアを観察する。

 重そうで、かなり頑丈そうに見える。

 こちらから見た感じはただの白い薄そうなドアだったけれど。

 開かれた様子を見るに、とてつもなく分厚いし、ドアの反対は光沢がある金属板が剥き出しでかなりゴツい見た目をしていた。


 ハイテクだ。

 オレも恐る恐る先を進む二人に続く。


 中はまた小さめの、今度はコンクリート打ちっぱなしの部屋だった。


 けれどさっきと違って、部屋の天井に監視カメラがたくさん付いていて、壁にも何かしらのセンサーが埋め込まれている様な穴が沢山見えた。

 奥にエレベーターのドアがある。


 そわそわして魁君の近くに寄ると、魁君はそれに気が付いたみたいに少し笑った。

 けれど何も言わず、魁君は琉央さんに続いて進んでいく。

 オレもそれに付いて、到着したエレベーターに乗り込んだ。

 床はグレーで、壁と天井は白い。

 大型の機材も運べそうな広めのエレベーターだ。


 ドアが閉まって、思わず上を見上げる。

 階数表示はなかった。

 けれど、身体の感覚としては、どうやら地下へ進んでいるらしい。


 オレがキョロキョロしていると、魁君が隣で、今度は声を上げてくすくすと笑うのが聞こえて、そちらを見ると「驚いたでしょ?」とまた笑われた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ