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574 バイクアクションといえば爆発シーン

 これまでのあらすじ!

 ボク達はトレ子を捕まえる為に呉越同舟で外に出ていた。

 そしてトレ子を見つけるものの、タカラの介入により逃げられる事に。

 あらすじ終わり!


 なのでこれ以上、この場に居ても特に意味はない。

 だが一方で目の前の『彼』を見ると、少年の葛藤とは成長に大切な物であると、哲学的な事を考えてもしまう。

 つまり『彼』──フォウのメンタルがやばい。


「余は、どうすれば……」


 俯き、下を向き、歯をギリギリと鳴らす。

 信用していた家臣に裏切られたという気持ち。

 毒を喰らわば現実が成り立たないという気持ち。

 今まで負け知らずでやってきた彼にとってショックの大きい事だろう。

 よく居るありがちな挫折するエリート貴族っぽいな。


 そんな悩める少年を、タカラは窓から顔を出して眺めている。

 下唇に人差し指を当てる艶やかな仕草。

 そこにはどこか楽しさの感情が、読心術で読み取れた。

 こんな場面で楽しさを覚えるとか、邪悪か?邪悪だったわ。

 全ての元凶はコイツである。


 彼女はニコリと笑みを改め、言葉を紡ぐ。


「それでは、こうしましょう」


 狙撃銃を構えると、フォウに向けた。

 そして……。


──パン


 容赦なく撃った。

 彼は驚くも、無意識から来る獣人の反射神経によって回避。

 尤も彼女には獣人を撃つ実力があるのは証明済みだ。

 だからこれは、わざと避けさせた感が強いかも。

 しかし頭で事態を受け入れられない彼は呆然としていた。


「撃った……?タカラが、余を……?」

「いやぁ……私、貴方の『敵』に回ろうと思いまして」

「なっ、鞍替えしようというのか!?」


 目を見開いた彼は、咄嗟にボクの方に視線を移した。

 まあ、彼にとって敵といえばボク達だからね。


 でも、ぶっちゃけ「仲間にして」なんて言われてもいらないよ?

 味方面してお爺様の前に出ようものなら、ナチュラルに拷問後に死刑だと思うよ?

 あの人、家族というか孫に甘いだけでエミリー先生以上に冷酷で容赦ないし。


「いえいえ、あくまで独立勢力として……いや、それだと面白くないですね。

そうだ!混成軍・『反』大平原王派とでもしましょうか。

うん、それが面白い!」


 え、なんか新しい名前が出て来たぞ。


 名前から判断するに、空中分解寸前の混成軍が割れて、その中でフォウに不満を持つ派閥といったところかな。

 なんか本隊と関係ない所で、突然タカラが名乗っちゃっているけど。

 人数はタカラとトレ子の二人だけかな?


 タカラは腕を組み、少し考える。

 そして話を続けた。

 その内容は『大義』である。


「え~っと理由はですね、理想主義過ぎる大平原王に不満を持った私は、同様の志を持つ獣人の同士と結託し、新派閥を形成。

領都で待機中の大平原王を暗殺する事で、混成軍の女王になろうとしたのでした。

……と、いった感じでどうでしょうか」

「知らんわ」

「ええ、そうでしょうとも。

まあ、今は分からなくても良いかも知れません。

私はこれから9日間、現地協力者及び獣人達と共に貴方の命を狙わせて頂きます。

町に入った獣人達は敵だと思い、精一杯生き残り下さいませ」

「馬鹿な……、貴様の方こそそんな事して全ての獣人達が従うとでも思っておるのか」


 すると再び、フォウの足元にパンと威嚇射撃が放たれた。

 石畳が砕ける。

 それ、ウチの税金で作った公共インフラなんだけど。


「思っていますとも。

彼等を騙すのですから。

私、これだけで大平原を動かしてきたもので」


 そうなんだよなあ。

 タカラが腕の立つ狙撃手ってだけなら彼女を倒して終わりなんだが、色々な政治的要素が絡まってしまっている。

 父上も、異世界からの住人については「戦闘系のチートだけなら、結局のところ『異世界という田舎からやって来た力持ち』でしかなので警戒する必要はないが、政治を動かせる者は厄介だ」と言っていたし。


 しかし、この現象見覚えあるんだよなあ。

 タカラの顔が、ボクの身近に居る大人達に被る。

 父上、ハンナさん……あれは子供を育てる時の『試練』を与える時の嫌な笑顔である。


 尤も、彼等ほど周囲に気を使った試練という訳でも無さそうだが。

 ボクも街へ被害を出さないように動かなければいけない。


「それでは、また次の機械に!」


 タカラが帽子を上げて別れの挨拶を言った瞬間だった。

 フッと宙に突然小包が現れる。

 正確には投げただけ。

 だが、帽子を持ち上げた動きに気を取られて、もう片手に注意が向いていなかったのである。

 手品やスリだとよくある動きだ。


「……え?」


 一拍反応が遅れた。

 このタイミングで投げる、あのサイズの小包。

 今までの経験から、詳しく調べなくても何であるか察した。


 爆弾だ!


 思ったと同時、ボクの身体を無理やり掴んで此処から引き剥がそうという手が現れた。

 エミリー先生だった。

 最大時速300kmの蒸気ローラースケートで直線の道を猛ダッシュ。

 そのまま手を掴んで、バイクの影に向かう。

 頑丈な装甲のバイクならバリケードになるという事か。


 更に液体金属のドレスを半球型に展開して、二重の盾とする。

 展開した分薄着となったドレスで、彼女はギュっとボクを離さないよう抱き寄せる。

 ボクの隣に居たフォウに関してはどうでも良いのかな感じだけど、まあ、エミリー先生はそういう人間だし良いか。


 そこへ突如、上から迫る大きな声。

 ボクは盾の影からその姿を覗く。


「うおおおおおお!」


 アセナだった。

 彼女は上から地面へ向け、壁を落ちるように駆ける。

 走る分の加速が加わるので単に落ちるより尚速い。

 そして壁を蹴って宙を飛び、小包に向かって勢いよく何かを投げた。


 ただの煉瓦である。


 しかし獣人の投石は、質量の関係より拳銃より強い。

 サイドスローの投石フォームにて放たれたそれは、小包を空の彼方に飛ばした。

 そして宙でドカンと爆発したのだった。

 パラパラと煉瓦の粉などが落ちて来る。


 くるりと回転して着地したアセナに対し、エミリー先生が聞く。


「爆弾なのは分かったんだが、今のは?」

「衝撃でも爆発するタイプの爆弾だ。

化学反応で爆発するタイプだから、反応する一瞬なら遠くに飛ばす猶予があると思って、蹴りじゃ無くて煉瓦にしたんだ。

平たい面を持つ煉瓦なら、貫通せずに爆弾を巻き込みながら飛んでいくからな」


 この爆弾について後でアセナに聞いた話であるが、捕らえた獣人が『喋らなくてはいけない気がした』と、ペラペラと詳しく教えはじめたので駆けだしたとの事。

 まるで謎のメイドさんのような何者かに操作されたかのような状況だが、真実は闇の中となる。


 それよりも、衝撃的な事件が直後に起こる事となる。


「うわー!助けてなのじゃーー!」


 なんと、シャルが攫われたのだ。

 フォウが乗り捨てた馬に獣人が乗って、彼女を攫っていたのである。

 なんか馬を使った見せ場とかあるのかと思いきや、そっちの意味かよ。

 馬に乗っている獣人ははじめの三人ではない。


 ビルの中に居たと思われる、もう一人の獣人である。

 そう思えたのは、獣人に指示を出すトレ子の立場になって考えたからだ。

 ボクが彼女だったなら、タカラとの交渉中に銃を突き付けられた時を考えて一人くらいは手元に置いておく。


 一人で逃げる様子が必死過ぎて考えもしなかった。

 だが、敢えて言おう。

 なんでボクは気付かなかったんだ。

 フォウとタカラのやり取りなんか放っておいて、エミリー先生の補佐に回るべきだった。

 後悔の念がドッと湧いた。

読んで頂きありがとう御座います。


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