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53 錬金術士街表通り

「いやあ、まさかエミリー先生まで手伝ってくれるとはの」

「早く終わっただろう?」

「はい、感謝しております」「ありがとうございますなのじゃっ!」


 ボクら兄妹はエミリー先生に道案内をして貰えば帰れる。


 しかしその前に、エミリー先生から経営する店に案内したいと誘われたのである。

 ボクとしては急ぐ事情でもないし、シャルも興味がある様子。

 そういう事でお邪魔させて貰う事になったのだ。


 因みに店の片付けが終わったのに店番の子も付いてきているのは、エミリー先生の店へ自分が面倒を見ている弟分妹分の訳有りな子供達を預けているからとの事。


 なのでボク達四人はエミリー先生を筆頭として錬金術士街を歩いていた。

 場所は先程のように闇市が展開しているような裏通りではなく表通り。

 此処は裏通りからでは見えなかった建物の全体像が見えるようになっていた。

 石畳を割って生えるミカガミ草は裏通りと変わらない。しかし、周りの光景にボクはつい呟く。


「なんというか……凄いね」

「そうなのじゃ?」「そうっすか?」


 シャルと店番が反応した。

 シャルは箱入りが故に、店番は此処で育ってきたが故にだろう。

 客観的にボクの気持ちを察したエミリー先生はケラケラ笑い出した。


「クフフ。

まあ、錬金術士は私を筆頭に個性派ばっかだからね。面白いだろう?」


 子供が考えたような変な建物だらけだった。


 右を見れば、巨大な樽のような建物に煙突が沢山付いていて、それぞれが色鮮やかな煙を出していた。


 左を見れば、小屋のような小さい建物の上にキノコ笠のような巨大な屋根が乗っていて、その上に紫水晶を削り出して作ったかのような小さい塔が建っている。透明度は鈍く中の様子は見えないが、これも立派な住居なのだろう。


 個性派ってもんじゃねーぞ。


「否定はしませんかね。これからエミリー先生のお店を見るのが楽しみですよ」

「えー、私のは普通だって」

「はいはい。自覚のない人はみんなそう言うんです」

「うえーん。シャルちゃーん、アダマス君が虐めるよー」


 彼女は泣き真似をしながら、シャルに抱き付く。

 物凄いしゃがんで薄い胸に埋もれる。


 状況に慣れていないシャルはオロオロとボクに視線で助けを求め、ボクは撫でる仕草で返した。

 恐る恐るエミリーの顔がシャルによって撫でられる。


「よしよし、良い子良い子~。お兄様、こうであっているのかの?」

「そうそう。エミリー先生を相手にする時はそんな感じで。でも力加減はもうちょっと優しめの方が良いかなあ」

「はーい、なのじゃ」

「……いや、何か間違っている気がするんすけど、気のせいすかね」


 店番の子が言った。

 此処で普通に答えるのも良いが、それだと面白くないので唇の下に人差し指を当てて考えるフリ。

 その後に気付いたフリをして、そのまま彼女を指差した。


「あ、そういえば君の名前聞いてなかったね」

「いやいやいや。そういう事じゃなくて」

「そう言う事じゃない。

ふむ、つまりアダ名という事かな。じゃあ君のアダ名は『ソバカス子』で……」

「もっとないない。それはやめて欲しいっす!」


 物凄い素早く両手で雑巾をかけるような動作をとる彼女。

 本気で嫌そうにしたので取りやめる。

 ボクは相変わらずシャルに撫でて貰っているエミリー先生に視線を送った。


「ああ、その子の名前?

預かってる子達からは『ねーちゃん』とばっか呼ばれてる印象しかなくてなあ」

「ええ、まじすかっ!?」


 頷いたエミリーは、彼女の肩を叩いた。


「と、言うわけで君の呼び名は『ソバカスっ子ねーちゃん』で……」

「ぎゃああああ!パワーアップしてるー!

もっとないっすよ、私の名前は『パーラ』っすよ、パーラ。ちゃんと覚えて下さいっす!」


 店番ことパーラは、更に頭をシェイクしながら必死に叫ぶ。

 興奮状態のパーラへ、恐る恐るとシャルが近付いているのが見えた。取り敢えずやりたい事は察したので、脇腹から持ち上げてやる。

 視線が高くなったシャルは、パーラの顔をエミリー先生と同じように胸に抱き、撫でてみせた。


「パーラお姉ちゃん、泣かないでなのじゃ」

「あ〜、うん。ちょっとテンション上げすぎたっすね」

「きっと若気の至りってやつなのじゃ」

「もうそれでいいっすよ」


 タフだなあ。

 ボクは内心でパーラに対し拍手を贈った。


「あ、そうだ。ちょっと良いかな」


 脳内拍手の手がエミリー先生の声で止まる。

 皆の視線がエミリー先生に集まると、エミリー先生の視線と指先がある建物に向かった。


「そうこうしている間に、私のお店に付いたよ。

あれが私のお店だよ。普通だろう?」


 それは貴族の建物と呼ぶには、随分とこじんまりした大きさの建物だった。

 一見すれば、普通の三角屋根を乗せている三階建ての家に見える。

 しかし、近付けば近付くほどメカメカしさ増していった。

 やたら隙間に謎の大小様々な歯車が取り付けられて常に回っている。

 配管を切って作ったような謎の巨大煙突は付いている。

 外壁は錬気術で用いられる魔術伝導合金であろう真鍮に似た金属が多く使われている。

 形は楕円球で、上半分がガラスで覆われた謎の部屋が二階から飛び出してもいた。


 なんというか、随分ハードコアなスチームパンクの家だなって感じる。

 だからボクは正直な感想を言った。


「いや、全然普通じゃないです」


読んで頂きありがとう御座います

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― 新着の感想 ―
[一言] 随分ハードコアなスチームパンクw なんて力強い言葉なのでしょうか、容易に想像できるだけに恐ろしい語録です。もはや錬金ではなく魔女枠ですね、エミリー先生はw いや、寧ろ見た目は毒リンゴの女…
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