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末っ子王女は転生する



 目覚めるとそこは――――


――どこ? 此処。

眩しくて何も見えない。


 いや、本当に何も見えん。

さっきから赤ちゃんの泣き声と大人の忙しない声は聞こえているんだけど。

 私、今どんな状況なの?



「王妃様っ、おめでとうございます!

とっても可愛らしい姫様ですわ!」


「おおっ!良くやった、アデリシア!」


「陛下………抱いてあげて下さいませ」


「もちろんだっ。良いな、ポリーヌ」


「はい。どうぞ、陛下。優しくですよ」



 えっ、急に身体が。

もしかして、この浮遊感、誰かにだっこされてる?

となると、会話の内容的に私が赤ちゃん?

いやいや―――そんなわけないよね。

 たしか、同僚と呑んだ帰りにコンビニに寄って、、、

あれ?私それからどうしたっけ。



「ああっ、可愛い子だっ。やはり女の子は良いな。

上2人は口ばかり達者な(こども)に育ってしまって、可愛げがない」


「まあ、陛下ったら。ジョゼフ様もアラン様も可愛いではありませんか」


「うむ、まあそうだが………いや、女の子は格別だ!」



 赤ちゃんの上には兄が2人、と。

名前は、ジョゼフ君とアラン君ね。

赤ちゃんの名前は何ちゃんかしら。

そしていい加減、私がどうなってるのか説明して。誰か。




 光だけ分かるけど、目が見えない状態で4日経ちました。さすがに気付いたよ、気付きたくなかったけど。

 うん。赤ちゃん、私だわ。名前はレティシア、生後4日。

つまり、泣き声も私が出してた音だったわけで。

目が見えない、意思疎通が出来ない、自由に動けないの3点が非常にストレスです。

 悪い夢を見てしまったみたい。早く起きろ、マジで会社に遅刻するから。



「あらあら、姫様。お腹が空いたのですね」



 何故私は母親ではない女性の母乳を飲まされているの?

 ハッ!まさかネグレクト? 

 その割には、3時間おきくらいに様子見に来るけど。

でも、ずっと一緒なのは、今母乳を飲ませてくれているマリーさんだ。

 マリーさん、ありがとうございます。



「たくさん飲んで、元気に育って下さいねー」



 はい、頑張ります。



 更に1週間。だんだん物の輪郭がぼんやり見えてくる様になった。

 2ヶ月後、「あー」「うー」などの声が発せる様に。

 10ヶ月後、兄2人と変わりばんこに散歩。はたして散歩と呼べるのだろうか。

室内をハイハイして、兄の手を借りて掴まり立ち。 

うーん、体力使ってるから散歩だよね。


 

 そして、3歳。

 目も色までちゃんと認識出来るし、会話も出来るようになった。

 ちなみに、夢だと現実逃避するのは、去年やめました。

 

 どうやら私は、異世界転生したみたいです。

 しかも王女。ハッキリ言おう、産まれた瞬間から勝ち組決定である!やったね!

 一応、今のところ非常に平和に過ごせている。

 不安だったネグレクトは全くなく、王族あるあるの母親が直接育児をしないシステムだった。

だからマリーは私の乳母。まだ25歳らしい。

 母乳が出るから当然子供もいるわけで、

彼女には7歳になる息子君がいる。

 息子君の名前はリュシアン。彼にはお母さんをとってしまって申し訳ない。

でも私には、マリーが必要なの。許して下さい。



「レティ、お散歩に行こう」


「アランにいたまっ!」



 次男のアラン兄様は、6歳。将来絶対タラシ系イケメンになるとみた。



「今日は、何処に行きたい?」



 ぎゅっと私の手を握りながら聞くアラン兄様は、

この散歩を私が0歳の時から日課にしている。

 毎日妹の世話をみるなんて偉い!ちゅきっ



「ふんすいのとこっ!」


「よし、じゃあ中庭だね。ジョゼフ兄さんが来る前に行こっか」


「ほう。俺を出し抜こうとは、ムカつく弟だ。

レティは俺と散歩するから、勉強でもしていろ」



 長男のジョゼフ兄様は、10歳。

さすがに王位継承順位 第1位の兄様は、自由時間が少なく、一緒に散歩出来る事があまりない。

ただ、寝る前に毎日「おやすみ」のハグをしてくれる。



「なんだ、早かったね。兄さん。

せっかくの休憩時間なんだし、休みなよ(邪魔するな)

レティはちゃんと僕が連れて行くから安心して」


「気遣い無用だ。お前こそ、毎日妹の世話は大変だろう。今日は俺に任せると良い(させるか)」



 ふむ。どっちも一理あるな。

よしここは………



「マリー、レティとおさんぽいく。

にいたまたちは、しゅてい!」



 妹を可愛がってくれて、ありがとう。

たまには2人とも休んでちょうだい。

 前世の記憶があるだけに、わりと心配。 


 

「「そんなっ!

  何故だっ!」」



 あれ、悲壮感が漂ってる。思ってたんと違う。



「………やっぱり、みんなでいく」


「「そうしよう!」」



 もしかしたら、結構シスコンかもしれない。


 そんなこんなで、家族の愛情をたっぷり注がれて育った、私ことレティシアはファンタジーな常識に興奮しながらも、元気にスクスク育った。


――――――――――――

――――――

―――


レティシア10歳


「「「お誕生日おめでとう!レティ!」」」

「「「おめでとうございます!王女様」」」


「みんな、ありがとうっ!」



 今日は私の10歳の誕生日。

 お父様、お母様、お兄様達、マリー、お義母様、

お城のみんなが祝ってくれる。


「いいかい、レティ。

明日のお披露目会は、あまりはしゃいではいけない。

だから今日は目一杯楽しむんだぞ」


「はい、お父様」


 

 賢王として、臣下からも国民からも慕われるお父様は、ものすごく私に甘い。

 5歳の時に、遊んで欲しくておねだりしに行ったら、

本当に遊んでくれた。その代わり、予定していた会議が1時間遅れたそう。

会議に参加された皆さん、申し訳ありませんでした。


 明日のお披露目会というのは、10歳になった私を

臣下達(貴族)にアピールする事が目的らしい。


 考えただけでも緊張しちゃう。

 明日の為に、ダンスもみっちり習った。

毎日毎日練習で、背中と首がつりそう。



「レティ、初めてのダンスは僕と踊ろう!」


「レティ、もちろんジョゼフ兄様が1番だよな? 」



 アラン兄様13歳、ジョゼフ兄様17歳。

 まだ妹が可愛い様です。

 

 

「ハッハッハ、お前達、レティシアを困らせるんじゃない。1番は父である私に決まっているだろう」



 ・・・・・・・・・。 



「「じゃあエスコートは!」」


「それも当然私だ」


「「そんなっ‼︎ 」」


 

 誰でも良いので、ケーキ食べても良いですか?

もしくは、プレゼント開けても良いですか。

そもそも国王であるお父様にエスコートは無理だと思うの。




「うふふ、レティは人気者ね」


「そうね。男性陣には困ったものだわ………

陛下、ジョゼフ、アラン。そのくらいにしておきなさい。

レティシア様がケーキも食べれず、可哀想よ」



 さすがお義母様!

 この国の第1王妃で、兄2人の母。周りを見る事に長けていて、気配りのエキスパートだ。



「レティシア様、あの方々は放っておいて、

私とアデリシア様と一緒にケーキを食べましょう」



 2人の系統は違えど、王妃に選ばれる美貌だから、両手に花状態ですな。わーい!



「食べる!」


「良かったわね、レティ。

そうね、私はどれを頂こうかしら。あれとこれと……」



 結構食べるね、ママン。私もそれ食べたいよ。



「アデリシア様、貴方少食なんだから、そんなに取ったら食べ切れないでしょう?

それに、まずはレティシア様が先よ」


「あらやだ、私ったら。エステル様ごめんなさい」



 お母様がしゅんとしている。

 というか、お母様が何で王妃になれたのか謎。

第1王妃にお世話される第2王妃って聞いた事ない。

 

 あ、そういえば。



「エステルお義母様。お義母様はレティシアの事、レティって呼んでくれないの? 」


「えっ?

―――そうね。何も私が呼んだって構わないわよね。

では、今日から私もレティと呼びましょう。

ケーキ、美味しいですか? レティ」


「うん!美味しい!エステルお義母様も、あ〜んっ」



 日本で食べたケーキよりも、だいぶ大味でただ甘いだけのケーキだけど、この世界では貴重なもの。

下流貴族や平民は、滅多に食べられないんだって。

それが、私の身長くらいある特大サイズなんだもの。

粗末にしないように、いっぱい食べなきゃ。

ひと口サイズのケーキ達は、お母様に任せよう。



「あーん、フフ。レティありがとう、美味しいわ」


「ああっ、ズルいわ!お母様にも、あーんして?」


「お母様、あ〜ん」 


「あーん♪ 」



 チロリとお父様達を見やると、口を開けて待機していた。

早くお食べ、今なら娘(妹)の「あ〜ん」付きだぞ。



「「「次は私がっ!

   次は俺がっ!

   次は僕がっ!」」」


「マリー、あ〜ん」


「「「え゛っ、」」」




 ん〜、とりあえず城内のメイドに配れば食べ切れるかしら。

持って帰ってもらっても腐っちゃうよね。

何人くらい居るのかしら。

お城と言っても、大きいわけじゃないから意外といないし。



「「「レティシアァ゛〜〜〜」」」




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