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4.もふもふからの外出先は

「いやぁ今日はミヤビ様のお陰で助かりましたよ」


ニコニコとテオドールさんは、褒めてくれた。私もびっくりですよ。医療器具不用の治療ってすごい。


「とは言っても力の使い過ぎは、体に負荷がかかりますから様子をみながら手伝って頂こうかなと思っています」

「はい。よろしくお願いします」


そうなんだよね。皆さん何らかの力は持っているらしいんだけど、幼少期から力のコントロールを学ぶみたいで。私は、なんちゃってなので自分の限界が分からない。


「あ、先程フェリス副団長の使いが来て此方に迎えにくるそうなので念の為モウをつけますから休憩してくださってよいですよ」

「えっ、でも」

「モウも貴方を気に入っているみたいです。ね?」

「ワン」


テオドールさんの隣にお行儀よく座っていた、大型犬に見える生き物は、名前を呼ばれて元気にお返事し、しっぽを振りながら私の横にぴったりと寄り添ってくれた。


可愛過ぎる。


クリーム色と黒の毛足が長くカールが強い犬にしか見えない子だけど、実際はかなり違っていた。この国では一家にニ匹くらいこういう守護してくれる生物がいるらしく個体は様々な形をし、また特性も色々だそうで。


毛の隙間から黒い瞳がこちらを見上げている。こんなに可愛いいモウと名付けられているこの子は、戦闘能力がとても高いらしい。


私は、周囲から頼りなく見え、また公にされていないけれど異世界人という変わり者の為に、なんと見えない所に護衛さんがいると聞かされている。


それって、とっても嫌だよね。 

だが、しかし!


戦闘能力が高い生き物を側につけている時は、外してくれるとの事で。


「ではお言葉に甘えまして」

「うん、遠くまでは行かないようにねー」


もふもふのがいいもん! 一人と一匹はルンルンで外の空気を吸いに出た。




*〜*〜*


「ミヤビ様、お待たせ致しました」


シロツメクサに似ている花で冠を作り、もふもふと戯れていたら美声が私の名を呼んだ。


「ちょっと屈んで下さい」


仕事が終わって、無意識にハイになっていた私は、大胆な行動に出た。


「えいっ」


ニ個目の冠が丁度完成したのでフェリスさんの頭に乗せてみたのだ。


「ふふっ。モウとお揃いです」

「ワフッ」


彼のどう返答してよいものかと戸惑う様子が、なんか癒やされると思っていたら、彼は私の白い冠に近くに咲いていた桃色の小花をいくつか摘み取ると器用に絡ませ。


「貴方の方がお似合いですよ」


私の頭にそっと乗せ、ふわっと笑った。


「ふあ!」


返り討ちにあいましたよ!即負けました!


「外出の許可をとったので、静かな場所でお茶をしましょう。モウ、ありがとう。主人の元へ帰りなさい」

「ワフ」

「あっ」


フェリスさんの言葉に返事をしたモウは、走り去った。えっと冠つけたままだったんだけど。


「行きましょうか」

「あっ、はい」


既にあるき出しているフェリスさんの背中を慌てて追った。




*〜*〜*



「もう外して大丈夫です」


あれから直ぐにベール付きの帽子を渡されて、馬車に乗せられしばらくして一軒の立派なお屋敷に案内されて、いいと言うまで帽子をとらないでとフェリスさんがいやに真剣に伝えてくるから真面目に従い、やっと許可が出た。


「はい。うわ〜」


そこは、立派な温室だった。


周囲は、はめ込まれた六角形の曇り硝子で外は見えない。でも天井はクリアな硝子みたい。綺麗な青空が見え、鳥が通過した。


「此方です」


緑と花の迷路を抜けると一角に開けた場所が。右側に本棚やソファ、キッチンらしきものまで。木製なのか落ちついた茶色で、どれもが小さな造りでシンプルながらも可愛い。


「お茶の用意を既に頼んでいるので人は来ませんから寛いで下さい。甘いものは召し上がれますか?」

「えっ、大好きです! って私が淹れます」

「よく自分で淹れるので。どうぞ」


丸いテーブルに着くように言われ近づけば、椅子を引かれた。な、なんか紳士?! 椅子を動かすタイミングも正確で流れるような動き。


──生きる場所が違うわ。


「口に合わなかったら遠慮せず言って下さい」


目の前に置かれたのは、紅茶と。


「チョコレートケーキだ!」


私はチョコレートが大好物なのだ。栄養士としてどうなのかとツッコミをされそうだけど、こればっかりは無理。好きなものは好き。これである。


「頂きます!」


遠慮なくカットされた三角の尖った部分からフォークを入れ大きめな欠片を一気に口の中へ。


「ダークチョコレートにホイップクリーム。最高ですよ!」


甘さのバランスがいい。見た目と違い甘さは控えめで、そのぶん生クリームが補っている。あ、淹れてくれた紅茶もと口に含めば、ダージリンティーだ。よい渋さである。


最高ー!


「気に入って頂けてよかった。これもどうぞ」


夢中で食べていたら小さな小皿が出てきて、その上にはクッキーが。


あ、がっつき過ぎたと我に返りちらりと目の前の人に視線を向ければ、ティーカップ片手に微かに笑っている。


は、恥ずかしいっ。


「どうされました? まだ沢山あるので召し上がって下さい。焼き菓子などは、よかったら持ち帰って城で食べて下さい」

「えっ、いいんですか?」


正直、お城で軽食で登場するお菓子が甘すぎて辛かったんですよね。


食事は味付けも私好みでとても美味しいのに何故か菓子類は激甘で。やったねと気分が上昇するも、私は、なんらかの重要な話しがある為に呼ばれたのではないかと思い出す。


「あの、何か話があるんですよね?」

「はい。その前に伺いたい事が。夜は眠れていますか?」


えっと、話がみえないぞ。


眉間にシワを寄せた私に彼は困ったような笑みを返してきた。



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