おまけ1 不安と信頼 その後
「あれっ?もう夜明けか」
ふと窓を見たら、空が明るくなり始めている事に気が付く。
暁とか黎明とか呼ばれるような色合いだ。
地球基準で例えるなら、間もなく午前4時を迎えますという感じの時間だろうか。
「本当ですね」
俺の隣で寝そべっているエセルも同調する。
「俺達眠らなかったな」
俺の言葉にエセルは顔を赤らめる。
若者というのは力をみなぎらせている生き物であることを実感する。
加えて俺には前世でそれなりに培った経験があった。
愛×若さ×経験=爆発的な力
こうして、俺とエセルは甘美で激しい夜を過ごした。
「リック、楽しかったです」
そう言ってエセルはベッドから上半身を起こす。
「もう起きるのか」
「はい。そろそろメイドの仕事に戻らなくてはいけません。それにベッドも綺麗にしないと」
俺はエセルと一緒に過ごしたベッドを見る。
乱れに乱れている。
「俺も手伝うよ」
「申し訳ございません。そうして頂けると助かります」
謝られているが、俺の責任でもある。
まずは、窓を開けて部屋の換気をする。
そして俺はシーツをはいだり、布で叩いて汚れを拭き取ったりして、掃除を進めていく。
「リックは手際が良いですね」
驚きの目で俺を見るエセル。
貴族の息子には縁がないはずだ。どこでそんな技術をどこで得たのか、不思議なのだろう。
これも前世で培った経験だ。
一通り掃除を行いベッドが元の姿に戻る頃、朝を告げる鐘が鳴り響く。
夜が終わったのだ。
「リック、ありがとう。夢のような時間でした」
エセルが少し寂しそうな笑みを浮かべる。
「俺の方こそありがとう。楽しかった」
名残惜しい。
その気持ちが俺を突き動かし、エセルを強く抱きしめる。
「リックったら……」
そしてキスを交わす。
互いの唇が離れた時、それは主人とメイドの間柄に戻る合図である
夢は終わり、俺達の日常が再び始まった。
「ふあぁぁぁ~」
俺は欠伸をする。
いくら体力があっても徹夜は辛い。
「主さん、この書類、0が一つ多く書いてあるよ」
「本当か?」
シェリーに言われて書類を見ると、指摘の通り間違っている。
ちなみに俺の字だ。
「朝から間違ってばかりだよ」
シェリーが呆れている。
「すまない」
俺は謝る。
「少し休んだらどうかな」
シェリーの言う通り、寝ないと頭が回らない。仕事にならない。
「ちょっと眠ってくる。いない間、頼む」
「分かったよ」
俺は執務室を出て自分の部屋へ向かう。
「エセルじゃないか」
廊下を歩いているとエセルと会う。
「どうしたんだ。元気が無さそうだが」
「はい。メイド長に怒られました」
エセルも寝不足で頭がぼーっとしていて、さっき壁に激突したそうだ。
顔を見ると鼻が赤くなっている。
「それで少し休んでくるように言われました」
エセルも同じなのか。
「今度は程々にした方が良さそうだな」
「そうですね。寝る時間も確保した方が良いと思います」
そう言いながら、俺とエセルは同時に大きな欠伸をしたのであった。
読んで頂いてありがとうございます。
今回はタイトルの通り第64話のその後の話ですが、話が短いので「おまけ」という扱いにしました。
次回は本編に戻ります。
これからもよろしくお願いします。




