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第52話 晴天

前回までのあらすじ

 白いローブの人物のソランジュを撃退した。

 リック達と小人達はお互いの再開を願ったのであった。


※書き上がりましたので予定よりも早く投稿します。

 良い天気だ。

 空には雲一つない。

 快晴そののも。

 公園のベンチに座っている俺は視線を空から地上へと下ろす。

 そこには火災から復興中の街並みが見える。

 この世界には、日本の日曜日と同じ意味合いを持つ休日があり、今日はその日に当たる。

 普段は(せわ)しなく働く人達も、今日は家族で散歩をしたり友人たちと会話を楽しんだり、思い思いの時間を過ごしている。

 ちなみにこの公園は町の復興の際に新設された施設だ。

 発案者は俺。

 町の外へ出れば森も野原もあるのに町の中にわざわざ生産性が無い物を作る必要があるのかと問われもした。

 しかし、公園には目に見えない価値がある。

 この前の大火災のような災害時には避難場所になる。

 また、人々の交流の場にもなる。それはお祭りなどのイベントに繋がる時も有れば、新たなる文化が創り出される時もある。

 それはウォーカー男爵領にとって有益になる。

 俺の力説に最初は難色を示したピーター父さん、ポール兄さんをはじめ皆から理解してもらえて、公園を造る事になった。

 まだ造成(ぞうせい)途上(とじょう)なのだが、この様子をみると人々の交流の場として順調に浸透(しんとう)している。

 目論見(もくろみ)通りだ。

 良かった。


 ところで俺が何故(なぜ)、公園のベンチに座っているのか。

 それは人と待ち合わせをしているからだ。

 相手はエセル。

 お互いウォーカー男爵家の屋敷に住んでいるのに、わざわざ離れた町で待ち合わせをするのか。

 それはデートをするためだ。

 この前の地下空間での一件、吸血ゲルを駆除し、白いローブの人物ソランジュを撃退した俺達は、小人達から地上へ出る帰り道を教えてもらい、無事帰還することができた。

 なんと、俺達は三日間も地下空間にいたそうだ。

 満足な水も食料も燃料も持っていなかった上、乳飲(ちの)み子のティム君もいた事で、地上では大騒ぎになっていた。

 それだけに父さんも兄さんも俺達の無事な姿を見て大喜びしていた。

 この数多くの困難は、マーカスやオリーヴ義姉さんやティム君やシェリー、皆が力を合わせて乗り越えたからこそ、帰る事ができた。

 その中でも俺はエセルからとても助けてもらった。

 吸血ゲルの毒にやられて動けなくなり足手まといになった俺を、彼女は嫌な顔ひとつせず背負い続けてくれた。

 一人置いて行かれても仕方がない状況だっただけに彼女の行動は心強く、気弱になっていた俺を(はげ)ましてくれた。

 俺はエセルに何かお礼をしたいと話したところ、彼女の口からは「リック様とデートがしたいです」と返って来たのだ。

 普段でも俺とエセルの二人だけで外出する事はよくある。

 ただ、それは御主人様とメイドの関係だ。エセルはメイドとしては積極的になる時があるが、それでも主従関係という見えない壁は存在している。

 単に二人で出かけるだけではデートにはならない。

 そこで敢えてエセルの休日を選び、屋敷とは違う場所で待ち合わせをする事にした。

 今日は御主人様とメイドではない。リックとエセルという一人の人間同士が付き合う日なのだ。

 それにしてもデートかぁ。

 前世では経験したことがあるが若い頃の話だ。転生してからもデートはしていないので、久しぶりになる。

 緊張する。 

「お待たせしました」

 栗色の髪をなびかせながらエセルがやって来る。

「俺も今来たところだ」

 デートの待ち合わせで定番の台詞を言いながらエセルを見る。

 おお!

 俺は驚く。

 今日のエセルはピンクのワンピースを着ている。

 偶然とはいえ裸も見た事がある俺だが、メイド服姿しか見た事がないので、私服を着ているエセルはとても新鮮だ。

「似合いますか」

 俺がじっと見つめるものだから、恥ずかしそうに尋ねるエセル。

「似合う!すごくかわいい!!」

 あまりの可愛(かわい)さに俺のテンションは高くなる。

「ありがとうございます」

 顔を赤くするエセル。それもまた可愛い。

「リック様に()めて頂いて嬉しいです」

「なぁエセル。デートの間は様付けをやめないか」

 リック様と呼ばれるとやっぱり普段の主従関係を思い出してしまう。

「それではなんとお呼びすれば良いのですか」

「リックで良いんじゃないか」

 今日は仕事ではないし屋敷の人間もいない。

 呼び捨てにされても何の問題もない。

「リックさ……、いえ、リッリッリッ……」

 舌がもつれるエセル。

 人間、日常の習慣を急に変えるのは難しいらしい。

「……リック」

 おお!言えた!

 俺は思わず拍手する。

「エセル、頼むからもう一回呼んでくれないか」

「………リック」

 照れながらも呼んでくれる。

 

 なんか良い!

 

 屋敷にいる使用人達は様付けで呼んでいる。

 父さんや兄さんは俺の事をリックと呼び捨てにしているが、かわいい女の子から「リック」と呼ばれるのは生まれて初めての経験だ。

 とても新鮮な感覚。

 そして呼び捨てにされる、それだけでお互いが親密になった気分になる。

 想像以上に心地良い。

「リック、どうされました?」

 呼び捨てにされて喜んでいる俺を見て、不思議そうなエセル。

「何でもない。それよりも行こうか」

「はい」

 こうして俺とエセルのデートは始まったのであった。



読んで頂いてありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

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