第213話 久しぶりの村
前回までのあらすじ
ロイレア王国のジェラード王子を助けた褒美として子爵の爵位と領地を賜ったリック。
しかし、その領地は王国から遠く離れた未開の地ホギー島だった。
無人島と思われたホギー島だが、そこには龍人族/猫人族/犬人族/兎人族/狐人族/熊人族/象人族/羊人族と8種族が住む島であった。
リックは島の住民との争いを避け共存を望み、猫人族のブッチー村長の力を借りて島の族長達が集まる族長会議で島の住民として開拓できる権利を得る。
そしてリック達はキャットラン村へ帰る為に旅立った。
一方、村で留守番していたオリーヴ達は熱を出して寝込んだティムの薬を得る為に森の中に入るが、そこで大量のゾンビと遭遇。
逃げる中、不思議な温泉に落ちるが、一緒に落ちたゾンビ達が長い尖った耳の美男美女に変身したのであった。
「キャットラン村が見えるのであります!」
そう言いながら三毛柄の猫人ミッケは尻尾をピンと立て喜びを表現する。
「10日振りの村なのさ。懐かしいのさ」
白い毛と黒い毛のブチ柄の猫人ブッチー村長の声は弾んでいる。
「色々あったなぁ」
俺リックは呟く。
「族長会議で開拓を認めて貰えて良かったですね」
メイドのエセルの言葉に俺は「そうだな」と頷く。
目的通りに達成できた。今回の旅の最大の成果と言えるだろう。
これから何かと忙しくなるだろう。
「シェリーが子供の頃にホギー島へ来た事が有るのも驚いたな」
俺は隣で歩いている銀色の髪の少女シェリーを見る。
「それも驚いたけど、うちは神人の方が驚いたかな」
豊かな胸を揺らしながらシェリーは言う。
彼女の父ケアンズ氏は神人と呼ばれる種族を調べる為に幼いシェリーを連れて来島した。
島では伝承でしか知られていない神人であるが、ケアンズ氏が残した資料によると神人は長く尖った耳…俺の前世での知識で例えるならエルフに似た姿をしていたらしい。
「パパがソランジュと会っていたのも驚いたかな」
シェリーは溜息交じりに言う。
ソランジュは神人と似た容姿の女性。絶世の美女と形容しても過言ではない程の美貌の持ち主である。
ただ、良からぬ事を企んでいるらしく、王国各地で暗躍しており、俺達と衝突した事もある。
また、盗賊に呪いを掛けたり姿を消したりする等、特別な力も使う。
強い上に腹黒い。厄介な事この上ない存在だ。
「まぁ、ソランジュは王国にいるから、ここまで来る事は無いんじゃないか」
そうは言ってみるが、言葉とは裏腹に嫌な予感は止まらない。
ソランジュよ、お願いだから俺に人生にちょっかいを出すなよ。
俺は強く願いながらキャットラン村に入った。
「神人がたくさんいるのであります!」
ミッケが目を丸くする。
俺達の目の前には長く尖った耳の男女合わせて20人の神人がいる。
「………」
「主さん、顔が引き攣っているけど大丈夫かな?」
「驚いただけだ。大丈夫だ」
俺は深呼吸して気持ちを落ち着かせる。
「これはいったい何があったのさ」
「昨日の事だけど…………」
ブッチー村長の質問にオリーヴ義姉さんか経緯を話す。
「ゾンビが温泉に浸かったら神人になったのか」
突拍子もない話だが、オリーヴ義姉さんが嘘を言うわけないし、現実に神人がいるのだ。
信じるしかない。
「さて、最大の問題は彼らをどうするかだよな」
俺はブッチー村長を見る。
キャットラン村の人口を考えると20人は大人数だ。
昨夜は村の集会所に寝泊まりし、備蓄している食べ物を分けたそうだが、何時までもそれを続ける事は無理である。
早急に彼らの住居と継続的に確保できる食料が必要だ。
「ゴズに手紙を出して協力を求めるのさ」
龍人族のゴズ町長は神人の伝承に強い関心を持っている。
頼めば神人全員をナインコメットの町で住まわせて貰えるだろう。
それが一番無難な選択肢である事に間違いはない。
しかし、俺の頭の中にある思惑が浮かぶ。
「ブッチー村長、頼みがあるんだが」
「リック、どうしたのさ?」
「神人全員を俺の所で引き取らせて欲しい」
それを聞いたブッチー村長は目をパチクリさせる。
「開拓するのに人手は欲しいからな」
「そういう事かなのさ」
ブッチー村長は納得したようだ。
ただ、人手以外の目的もある。
俺も神人に興味を持ったのだ。
特別な力を有しているのか?
ソランジュと関係はあるのか?
何故ゾンビになっていたのか?
近くにいた方がより多くを知る事が出来るだろう。
「分かったのさ。神人と聞けばゴズは支援してくれる筈だし、キャットラン村でも可能な限り支援するのさ」
ブッチー村長は本当に良い人だ。
俺は頭を下げて感謝の意を示したのであった。
読んで頂いてありがとうございます。
何とか今年最初の更新が出来ました。
遅れましてすみません。
今年も頑張りますのでお付き合いして頂ければ幸いです。
次回もよろしくお願いします。




