第127話 続 男と女
前回のあらすじ
リックはエセルに、自分の想い、エセルやシェリーへの想いを伝えた。
結局、あの後もう一回戦してしまった。
気持ち良かった。
ドーパミンの分泌が終わったのだろう。思考が冷静になり、体全体に心地良い疲労感が広がる。
男と女のお楽しみ時間が終わった後の過ごし方は、人によって違う。
コーヒーを飲みながら余韻に浸る人もいれば、即解散という人もいるだろう。
俺とエセルの場合、お楽しみの時間が終わった後は掃除の時間になる。
エセル一人に任せるのではなく、俺も一緒に掃除をする。
これは俺とエセル、二人の間で自然に出来上がったルールである。
メイドとして毎日屋敷の掃除をしているエセルと比べれば、俺の掃除の腕前なんて大したことないかもしれないが、二人で一緒に掃除する事に意味がある。
その点から考えてもベッドの中は主人とメイドではない。リックとエセルという対等な男女の関係なのだ。
楽しめば楽しむほど汚してしまうのがお楽しみ時間の難点だが、経験を重ねていくと、汚しても簡単に掃除できる所と汚してしまうと掃除が大変な所が分かるようになる。
そうなると、お楽しみ中にも影響がある。
例えばの話……
ここを汚したら大変だな。
お楽しみの最中、興奮の極みに達していない限り、俺はそう感じてしまうようになった。
みみっちいかもしれないが、感じてしまうのだから仕方がない。
とはいえ、それを言葉に出すのは無粋というもの。
せっかくの雰囲気が台無しになる。
そういう時、俺は愛撫を用いる。
エセルのスラリとした腕や足、細い腰を優しく丁寧に何回も撫でまわしながら動かしていき、汚しても大丈夫な所までさり気なく誘導するのだ。
一方のエセルも言葉にはしないが、俺の意図に気が付いている。
艶めかしく「はぁん♥」と声をあげつつも美しい肢体をよじらせながら移動させる。
こうして後顧の憂いがなくなったら、互いの想いを存分に発散させて楽しむ。
……ベッドの世界の予定調和というものだろうか。
そんな努力もあって、最初の頃と比較して見違えるほど掃除の手際が良くなった。
「ところでリック」
ベッドの周りを箒で掃きながらエセルが話し掛ける。
「どうしたエセル」
ベッドに敷くためのシーツを勢いよく広げながら俺は返事をする。
「シェリーさんが屋敷に帰ってきたら、すぐに告白をするのですか」
えっ!
それを聞いて俺は固まる。
掴んでいた手が離れてしまい、シーツはヒラヒラと宙を舞いながら落ちていく。
「すぐに言う必要があるのか」
シェリーが王都から帰って来るのは明日か明後日ごろの予定。もう間近だ。
俺だって心の準備をする時間が欲しい。早過ぎないか。
しかし、エセルは違う意見のようだ。
俺の言葉を聞いて呆れた表情をする。
「当然です。好きなのに告白しないなら何時告白するのですか」
それはそうかもしれないが。
「シェリーさんは意外と気が短い人です。リックがいつまでも躊躇って待たせ続けていたら、愛想尽かしてどこかへ行ってしまいますよ」
うっ!それは嫌だな。
思い返せば、シェリーは俺からの告白を期待するような発言を過去何度もしている。
その度に俺は色々な理由をつけて先延ばしにしてきた。
そう思うと煮え切らない男なのだな、俺って。
結果、シェリーを長い時間待たせてしまっている。
俺が想像している以上に危ない状態かもしれない。
「分かった。シェリーが帰ってきたら、すぐに告白する」
「はい。それが良いと思います」
決心する俺にエセルは頷く。
ついに告白をするのか。
どうしよう。
俺の胸はドキドキと高鳴るのであった。
読んで頂いてありがとうございます。
この度、総合評価が1,000ptを越えました。
応援して頂いている読者の皆様に感謝申し上げます。
本当にありがとうございます。
これからも頑張ります。
次回もよろしくお願いします。




