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おまけ3 旅立ちと決意 続き

今回は短い話になります


前回のあらすじ

 自らの意思でヘストン子爵家を出る事を決めたディアナ。

 彼女はリックに連れられ馬車で遠く離れたウォーカー男爵領を目指す事になった。


「そろそろ休憩するか」

「かしこまりましたぞ」

 マーカスが手綱をひいて馬を止める。

「ディアナさん大丈夫?」

「だーだー」

 オリーヴ義姉さんとティム君が馬車の中で横たわるディアナの背中を(さす)る。

「……だっ………だいじょうぶ……」

 弱々しい声で答えるディアナ。

 全然大丈夫ではなさそうだ。

 原因は馬車酔い。

 王都に住んでいた彼女は、これまで馬車で遠出する事が無かったそうだ。

 そのような場合は、無理をさせず、ゆっくり進むべきなのだが、今回は王都からディアナを連れ戻す追手が来るかもしれない危機感から、馬車を急がせている。

 その為、具合が悪くなってしまったのだ。

 このままだと、病気になってしまいそうである。

「馬車に乗っている時は前方遠くを見ていると良いわよ」

 ノーマが助言する。

「あと、ゆっくり鼻から息を吸い、口から吐くの」

 ディアナは神妙な表情で頷くと、言われた通りに呼吸する。

「そうそう、その調子。そして、この薬を飲むの。これはあたし特製の酔い止め薬。とっても効き目が有るのよ」

 自信満々なノーマは、紙に包まれた粉末をディアナに差し出す。

「ノーマさん、ありがとう」

 お礼を言って、ディアナは薬を飲む。


 休憩を終え、馬車は再び出発する。

 

「ディアナさん、さっきよりも調子良さそうね」

「そーそー」

 オリーヴ義姉さんとティム君が言う通り。

 顔色はまだ青ざめているが、グロッキーな状態だった先程と比べれば格段の進歩だ。

「ノーマさん特製の薬が効いたみたい」

 ディアナの表情は幾分か柔らかくなっていた。



「いったいどんな薬を飲ませたんだ?」

 次の休憩の時、俺はノーマに聞いてみる。

 前世日本人だった頃、俺は酔い止め薬のお世話になった事がある。

 パッケージを見ても塩酸メクリジンとか素人には分からない成分が書かれていた。

 どうやって作ったのか、大いに興味があるのだ。

「門外不出なんだけど、特別よ」

 不承(ふしょう)不承(ぶしょう)ながらノーマは俺に耳打ちする。

「あれは単なる小麦粉よ」

「こむっ……むぐっ!」 

 ノーマが俺の口を手で(ふさ)ぐ。

「思い込みよ。大抵の人は酔わないと安心すると酔わないの。他の対策をしっかり取っていれば大丈夫なの」

 なるほど。

 暗示の一種なのだろう。

 そういえば、前世でプラセボ効果という治療法を聞いた事があるが、ノーマはそれをやったのだろう。


 知識は使ってこそ価値があるよな。

 

 俺はノーマの機転に感心すると共に、知識を持っていても活用する事すら思い付かなかった自身に呆れたのであった。


読んで頂いてありがとうございます。

次回の更新は11月24日水曜日を予定しております。

以降は水曜日更新に戻ります。

これからもよろしくお願いします。

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