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番外編18 オリーヴの不安

 ギャーギャーギャー

 

 ティムの泣き声で私はハッと気が付きます。

 私オリーヴはどうやら眠ってしまっていたようです。

「ティム、どうしたの?」

 泣き声が変です。まるで叫んでいるようです。

 普段なら『エーン エーン』と泣くのですが。

 心配になりますが、抱っこをするとティムは泣き止みます。

 顔色は悪くありません。 

 体の具合が悪いのではなくて、私が傍に居なかった事が不安だったのでしょうか。

 

 !?


 その時、私は妙な空気を感じます。

 理屈ではなくて勘です。

 それにティムがあれだけ大声で泣けばメイドさんがすぐに駆けつけてくれるはず。

 今まではそうでした。

 嫌な予感がします。

「少しの間、我慢してね」

 私はおんぶ紐を使ってティムを背負うと、槍を片手に部屋を出ます。

 もちろん短槍です。

 とても広い家ですが、長槍を振り回すと壁や天井にぶつかってしまいますから。

「まだいたか!」 

 廊下に見慣れない男達がいます。

 その数2人。

「おとなしく降伏すれば助けてやる」

 そう言って男達は剣を抜きます。

 物騒です。

 一見すると一般人の格好をしていますが、身のこなしが違います。

 戦い慣れている感じです。

 普段は傭兵でもしているのでしょうか。

 そんな人達が貴族の家で当たり前のように剣を抜いているのが不思議ですが。

 ティムに何かあっては一大事です。

 私は男達が攻撃をする前に仕掛けます。

「がっ!」

 槍の石突を鳩尾(みぞおち)に受けて、男の一人が崩れ落ちます。

「なっ!?」

 それを見て、残りの一人は驚きながらも、剣で斬りかかります。

「危ないわね」 

 私は槍の穂先で剣を弾くと、そのまま槍を回転させて、男の鳩尾へ石突を突きます。

「ぐわっ!」

 カエルみたいな声を出して崩れ落ちます。

 二人とも気絶しています。

「ティム、大丈夫?」

「あーあー」

 背中のティムも無事の様です。

 何とか倒せましたが、きっとお母様(カミラ)だったら相手に反撃の隙も与えないで倒したでしょう。

 まだまだ修行が足りません。頑張らないといけません。

 私は慎重に廊下を進みます。

 ポールさんは大丈夫かしら、使用人の皆は大丈夫かしら。

 心配です。

 早く誰かと合流したい。

 そう願いますが、なかなか誰とも会えません。

 気が付くと、私は1階の食堂の前にいました。

 さっきポールさんと口論をしてしまった場所です。

 あら?

 食堂の中から物音が聞こえます。

 誰かいるのは間違いなさそうです。

 ただ、唯一の出入口となる扉は閉まっています。

 中を見る事は出来ません。

 何が起きているのか分かりません。

 いい方法がないかしら。

 考えてはみますが、何も思い浮かびません。

 こんな時、エセルさんやシェリーさんがいたら、良いアイデアを出してくれるのでしょうけど。

 扉を開けて一気に踏み込もうかしら。

 そんな事を考えていた時です。


 パチパチパチパチ


 突如拍手をする音が聞こえてきます。

「流石はオリーヴ様でございます」

 どこからか男の声が聞こえます。

「誰!」

 何と私の目の前に男が立っています。

 手を伸ばしてギリギリ届かないくらいの距離です。

 こんな近くに来るまで気が付かないなんて!

 そして、この男、見覚えがあります。

「キイザー!?」

 最近王都で人気の俳優。

 舞踏会でポールさんの隣にいた男です。

「覚えて頂いて至極光栄にございます」

 キイザーは芝居がかった仕草でお辞儀をします。

「ここはウォーカー男爵家の邸宅。勝手に入り込んで良い場所ではありません!」

 この男、見た目は優男ですが、只者ではありません。

 私は何があってもすぐに動けるように警戒します。

 キイザーはそんな私の態度を気にする様子もなく、余裕(よゆう)綽々(しゃくしゃく)です。

「ははははは。誤解されないで下さい。私目はポール様からご招待いただいた客人でございます」

「嘘をつかないで下さい!」

「嘘ではないよ、オリーヴ」

 聞きなれた声が私の耳に届きます。

 なんと、キイザーの後ろからポールさんが現れました。

「キイザーは僕が招待したお客様だ。彼に危害を加える事は許さない」

 その言葉を聞いて、私は愕然(がくぜん)としました。


読んで頂いてありがとうございます。

暑い日が続きますね。

皆様、熱中症には気をつけてください。

さて、次回の更新ですが、明後日24日木曜日を予定しております。

これからも『転生者リックの異世界人生』をお願いします。

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