《9》特訓、そして成果
あの怪人との戦いから数日後・・・
やはり、俺に夢落ちというものは訪れず、ガリルさんと仲間達の中に入れるほどに馴染んできた頃、ついに俺が狩りができるようになっていた。
かかりすぎだと思うか?
人間変わろうと思っても、なかなか変われないものだと実感させられた数日だった。人間じゃないのだが。
だがついに、食料を確保することができたのだ。そこまで大きくないといわれるネズミを捕まえた。それでも元の世界でのカピバラぐらいはある。ナイフで止めを指した感触はいいものではなかったが。
この世界はステータス、スキルを持った人間以外の生き物をモンスターと呼ぶらしい。ステータスが高いと体も大きくなり、凶暴性も増すと言う。カピバラサイズのネズミも俺を見るなり、突進してきた。元の世界にはあり得ないことか当たり前で本当にゲームみたいな世界だと思う。
そして俺自身、体も成長していた。見た目の変化はなかった。相変わらず大きめのコップ満タンぐらいの大きさだ。
しかし、ガリルさんやスレイさんに特訓してもらったりもして部分だけ固体化することができるようになる、スキル『状態変化Ⅱ』を手に入れたのだ!
・・・。
これがどれだけすごいことかと言うと、例えば、体のはしっこだけ固体化させてナイフのようにし、液体化で移動しながら流れるように刺す。という動作ができるのだ。ネズミもこの方法で狩った。まるで暗殺者のようだと、スレイさんは誉めてくれたが暗殺者といわれるのは微妙な気分だった。
体の動かしかたも最初よりは動かせるようになっていて、そこそこ高いジャンプができるようになっていた。体が重くて、伸ばした手が持ち上がらなくなる、とかも今ではほとんどない。バッチリの状態だった。まあ、これもガリルさんの協力あってのことだったりするのだが。ガリルさんはやめてくれと言うのだが、今では俺の憧れの師匠のようになっている。
俺の毎日の楽しみはガリルさんが寝る前に話してくれる、このダンジョンの外の世界の話だった。ガリルさんが住んでいた町の話など、面白おかしく話してくれる。五年も会っていない奥さんにまた会いたいと思っているそうだ。さすがにフラグ過ぎる発言だなと思ったのは、もちろん声に出さなかった。
このダンジョンの出口はたまに変わるらしい。あの猫や他のモンスターもいるせいでなかなか捜索ができていないらしいが。あの猫は引っ越し以来会っていない。
そんな中、俺はこの世界に一緒に来た、マンションの他の住人のことを考えていた。俺が住んでいたマンションはマンションといってもアパートよりちょっと大きいぐらいの大きさで、駅から遠かったりするのもあり、すんでいる人はそこまでいなかったはず。
老夫婦と、俺と同じぐらいの高校生。二十才ぐらいのお姉さんとおじさん位だったかな。これが、ああいう小説だったならチートとかもらえるんだよなぁ。俺はもらえなかったけどな。この世界に来てパニックとかになっていないだろうか。
そう考えると早くこのダンジョンの出口を見つけて外に出たい気分になるのだった。
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