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フェイカー  作者: 那上畑 潤
Because, you don’t understand yourself
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未だ転入していないのに高校中退の危機?

「秦さんの常識では、このようなコードは人のうなじに接合可能なものでしょうか?」


 そんな訳あるか。絶対安静でなければ、全力で首を横に振っているだろう。

 左手をうなじに回し、何の抵抗もなくあっさりとコードを抜くその様子からは、痛みは感じていないようだ。


「これも、ACTの一種になります」


 どうぞ、と一言添えて手渡されたそのコードの先端は、透明なスライム上の、被覆めいたものに覆われていた。


 その中には、電源コードとは違うが、何かの機械の端子めいた差し込み部が見える。


 触った感触は、先端部はやや硬めのスライム。端子部分の硬さが手に伝わってこないくらいには、弾力が強い。


「????」


 生体コードを蛍光灯にかざしてみるが、それで何が変わるという訳でもない。

 こんなのが、どうやれば繋がると言うのか?


「秦さんの常識の中では、このコードはうなじに接続されるようには出来ていない訳ですよね」


 そりゃそうだ、人と接続と言うか合体と言うか融合と言うか、とにかく、あんなふうに人のうなじというものは、コードとつながるようには出来ていない。


「私の常識と照らし合わせても、ACT以外で生体コードを人と接続させる術は、外科手術を行い、大掛かりな手間をかけることを除けば、存在しません」


 まぁ、ハクロさんの見解に相違はないので、頷いておく。


「では、繋がらないはずのこのコードを、どう繋いでいると秦さんはお考えですか」

「……エーシーティーを使ったって訳か」

「より正確に言えば、つながらない物を、『つながるように』、情報を加工しています」


 情報を、加工?


「アカシックレコードに、この」大きめのスマホもどきを左手に乗せ、「OB―アウトブレインと言う補助演算装置を用いて干渉することで、このコードが『人のうなじに接続可能な物質』だと、アカシックレコードの情報を書き換えているんです」


 ……なるほど、パソコンの言語を出力する、機械のようなものか。


「そのコードはACTを用いる事で、うなじに接触すれば溶け込むと言うか、融合する、って言う感じで設定されている?」

「そうです。入力手段は、昔は0と1の2進法、20年ほど前に10進法になり、ここ数年はアルファベットも交えた、アラビア・アルファベット方式が主流です。中には音や視線も交えた方法も存在しますが、私は習得していません」


「数字と、アルファベットを交えて、何々をこう変える、という感じでその機械に打ち込んだ結果、エーシーティーが発動する?」

「その理解で、概ね正しいと思います」


「原理としてはわかったけど、それ、最初に生体コードを作るのにはどうやったの? コードを接続しないと、エーシーティーは使えないんだろう?」

「コードをOBにつながないと副作用がありますが、ACTが使用出来ない訳ではありません。ACTが発見されたのは1930年代になりますが、その頃は各国で人体実験も行われていた時期です。今では非合法である実験も数多く行われていたと聞いています」


 どこの国も、『平成』につながる歴史同様に、様々な人体実験をしたんだろう。


 そこでエーシーティーを見つけて研究し、結果、使うと大きな副作用があるとわかった。だけど便利なモノだったから、副作用をなくす、あるいは軽減するにはどうすれば良いか研究した結果が―今、白鷺さんが左手につけている補助演算装置というモノと、生体コードなんだろう。


「じゃあ、俺もその補助演算装置を使えば副作用もなく、エーシーティーを扱える?」

「副作用はほぼ無い、と言うのが正確な表現です。OBが開発されて40年程ですが、強力なACTを連続して使用することで、OB開発後に脳に障害を負った方も、ごく僅かですが存在します……ただ、それは確率に換算すれば、交通事故にあうより低い可能性です」


「ごく僅かって、何人?」

「公表されている範囲では、この10年で、全世界で3人とされています。しかし、現在の秦さんの状況を考えると、ACTよりも知ってもらいたい事柄があります」


 ? なんだ、それは?


「お母様に聞いた所によれば、秦さんは一般入試で入られた、と聞いております」


 入試。つまり、テスト、だよな?


「一般入試となると、普通にテストで入ったのか? それとも、実技も見られていたのか?」

「両方です。ペーパーテストに、ACTの実技になります」

「その高校って、赤点とかって」

「あります」

「成績が悪ければ」

「ACTに関する知識が無いとなると、留年は必至。退学も可能性としては有り得るかと。ACTの実技成績が悪ければ、普通高校への転校を勧められるかもしれません」

「……俺の通う高校、学力のレベル的にはどんなもん?」

「偏差値で言うと、60前後でしょうか。ACTは基本的に、実技に重きを置いているので」


 実技に重きを置いていて偏差値60?! 冗談だろ?! こっちの世界の俺、そんなに勉強頑張ったの?!


 勘弁してくれ……俺、大学出たけど、偏差値は60もいってねえし、中身は今年で35歳だ、高校時代の知識なんてほとんど覚えていねえよ!


「学科は、実戦ACT科、実生活ACT科、諜報ACT科、工作ACT科の4つありますが、一年時は適性を見極めるため、全員が基礎ACT科に配属されます」


 …………


「秦さん?」

「あ、いや、考え事していた」


 普通にやっていたら、留年どころか、退学を勧められかねない。

 どうする? 全然記憶には無いが、2学期から転入ということは、こちらの世界の俺は、あの両親を名乗る2人に、この高校行きたいってお願いしたのだろう。

 

 その状態で、留年、最悪退学なんてことになったら、お先真っ暗どころの話じゃない。

 経済的に行き詰る可能性が高い。


 ああクソ、どうして35になってようやく独立に目途ついて脱サラしようと考えていた所にもう一回高校やり直せなんて話になるんだよ有り得ねえだろああクソっ!

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