さよなら、バーニング
──ふわり、降り立った視界には、見慣れた住宅街が広がっていた。
目の前の緑地から俺の家までは、あと百メートルほどしかない。
中途半端な位置に着地したのを不思議に思いながらも自宅を目指すと、家の玄関のあたりが騒々しくなっていた。
「寛!」
帰るなり、筋骨隆々なマッチョボディに抱きしめられて、悲鳴を上げる。
みしみしと骨が軋む音がした。
「に、兄さん……凪……」
「良かった……! 旅に出ると書き置きがあったから心配したんだぞ! 凪君も、いつも暴走気味な寛がさらに暴走してるみたいだから理性がまだあるうちに止めてくれって……なあ?」
「はい。本当に──まあまあ理性があるみたいでよかったよ、寛。心配かけるなよー」
「……ごめん、俺はバーニングしすぎていたみたいだ」
俺は年の離れた兄さんと二人暮らしで、最近の料理当番は兄さんだった。
お腹が減ってるだろうと差し出された熱々の芋料理に、俺は瞬時に床にひれ伏し、感謝の祈りを捧げた。
以前より、芋が輝いて見える。
芋料理を持つ兄さんの表情も白い歯も純白のエプロンもまぶしすぎて、両目から涙が溢れた。
「ありがとう……」
呟いた俺に向かって、兄さんは豪快に笑う。
「そうか、寛はそんなに芋が好きなんだな! よし、これからは芋料理を増やしてやろう。だからもう家出なんて考えるなよ!!」
兄さんの愛情は、矢のように俺の心に降り注いで──