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勝手にうんうん頷いていたせいだろうか、エイシアと名乗った少女は少々ご立腹のようで、彼女の胸当てからチラリと見えていた物騒なものの正体が明らかになる。


「いい加減認めようね“現実”を……!」


無数の暗器──ナイフのようなものが投げられたと感じた刹那。

一瞬にして綺麗に俺の身体……の外側の衣服は、地面へと打ち付けられていた。


少女は俺を真上から覗きこむと、にやりと笑ってさらりと言い放つ。


「お兄さん、ここはお兄さんが元いた世界とは異なる世界、狭間の世界。そろそろこの現実を受け入れないと、こわーい刺客に狩られちゃうぞ☆」


「……だ、わ、わかったわかった、信じられないけど信じてみるから動けるようにしてくれ……ください! ちなみにまだ名乗ってなかった後れ馳せながらすみません俺の名前は寛明、寛って呼んでやってー」


ふぅん、“ヒロ”ね。それじゃあ僕のことは“シア”でいい、と少女は極めて軽く、歌うように言うと、手品師のように全てのナイフを一瞬にして胸当てへと収めた。

と同時に俺の身体は解放され、ビリビリと感じられた殺意もなくなっていた。


「よろしくね、ヒロ。マヨイビトが現れたら導くように言われているの。僕が案内するから、行きたいとこがあったら何でも言って?」


「あ、ああ……よろしく……」


いきなり地面に打ち付けられてよろしくでもないのだが、これ以上このなんとも言えない世界を認めないと俺的にだめらしいのでとりあえず頷く。


頷きながら、俺は肝心要なことを忘れていたことに気がついた。


そうだ…!

この世界にはあるのか…!?


死活問題だぞ…!!


「なあ、シア? こ、この狭間の世界? には……お、おみくじってあるのか……?」


「ないよ?」


あっさりと、至極あっさりとシアは言って、俺は当然へこんだ。


──ない?


あの人生をも揺るがすおみくじがこの世界にはないだって!?


そんなバナナ!古い!!


「……ない、ないのか……それなら……」


俺は神妙な面持ちで小さく、確かに呟いた。


「創ってやる。……ないなら、俺はこの世界におみくじ村をつくって、おみくじがフィーバーするようにこの世界を行脚してみせる……!そう──これからは大凶引いちゃった☆なんて時代じゃない、革新の時だ……!見知らぬ世界に、俺はおみくじを行き渡らせてみせる……!!そうだ、きっとそれが俺の使命だったんだ──!ありがとうシア!ありがとう謎のおじいさん!ありがとう異世界!ビバ人生!!」


俺は決めた。


帰れないなら(いや帰れるってシアは言ってるけれどそこはスルーで)この世界におみくじを!


おみくじ、おみくじに一票お願いいたします!!


嗚呼、なんてことだ……

大凶から解放された俺は、こんなにも清々しい。


俺は歓喜のあまりシアの両手を握り、ぶんぶんと振ると、容赦なくシアの一撃をみぞおちにくらった。


でも俺、めげない☆

だって、男の子だもん!











──こうして、大凶の男はバーニングおみくじ大使として異世界におみくじを広めることになりましたとさ、めでたしめでたし。


その後、ヒロが人間的にどう壊れていったか、謎の老人は何者だったのか、狭間の世界とは何だったのか……そしてヒロが地球から忘れ去られてしまったなんてことは、誰も知らない──。








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