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──……
──まるで、真っ暗いトンネルを抜けたよう。
けれど、そこにあったのはもちろん雪景色ではなくて。
「な……んだ……ここ……」
果てしなく続く荒野を見据えながら、俺は口にした。
あの柔和な面持ちの老人の瞳を見つめていたらいつの間にか意識がなくなって……
そう、心地よい夜の闇に包まれたような感覚だった。
その感覚を終えると、急に瞳に青空が映り急降下したと思ったら生きたままふわりと地面に降り立つことができ──今に至る。
身の回りをチェックしてみた。
手提げ鞄は健在だ。
脱!大凶のステッカーも鞄の内側にしっかりと貼り付いている。
勝負ペンの赤ペンも健在だし、ミニチュア版時刻表もある。
着ていたファー付きロングコートにも汚れ一つついていないし、僅かながらの財産が入ったちりめん細工の財布もあった。
なのに、周りの世界だけが数秒前と大いに異なっていた。
辺りを見回しても、時折砂ぼこりの舞う荒れた大地があるだけ。
標高が高いのだろうか、空気が薄い、息がしづらい。
「おーーーい!」
俺は叫んだ。
とりあえず脱!大凶モードな俺は前向きだ。
こんな人気のなさそうな荒野でさえも、大吉に変えてみせる!
そうさ!その意気込みだ!!
すると意外にも、人間の声が返ってきた。
声音からして、まだ若いな……
少年だろうか、少女だろうか。